12星座全体の運勢

「風通しのよい真実味」

11月7日の「立冬」を過ぎると、木枯らしが吹き始め、日に日に冬めいてくるようになります。 

まだまだ晩秋の装いが色濃く残っている時期でもありますが、「雪中花(せっちゅうか)」の異名をもち、雪の中でも香り高い水仙が咲き始めるのもこの頃。そんな中、11月15日に迎えていく今回のさそり座新月のテーマは「真実を告げること」。 

それは世間一般や他者のリアリティーへ順応することや黙認することを拒んで、自分本来の波長にとどまり、自分のことを正確に認識してもらうよう、相手や周囲に要求していくこと。 

平安時代末期に中国より渡来した水仙は、室町時代になって一休禅師が『狂雲集』で「美人ノ陰ニ水仙花ノ香有リ」とエロティックなもののたとえに詠んだことで知られるようになりましたが、和歌にはほとんど詠まれていません。それは都からはるかに遠い辺鄙な海辺や岬などにひっそりと咲いていたから。 

しかしこれからの時代、このように水仙に例えて真実を語る人たちの存在は、ますます隠しきれないものとなり、互いにゆるやかに連帯しては離れ、つながっては適切な距離をとり、といったことを繰り返していくでしょう。そして今回の新月は、多くの人にとって、そうした風通しのよい関係性へと近づいていくための大切な一歩となっていくはずです。

乙女座(おとめ座)

今期のおとめ座のキーワードは、「意識的な催眠」。

乙女座のイラスト
アミエルといっても今でもほとんど知られていないと思いますが、19世紀を生きたスイス人の哲学者で死後に30年数年にわたって書き続けられた『内面の日記』によって世界的に有名になった人物です。 
 
彼は少年の頃に孤児になり、生涯にわたり独身でしたが、ひたすら孤独な自己の慰めに、自身の苦悩、苦しみ、悲しみ、寂しさを、毎日毎日ノートに書き続けました。興味深いのは、その膨大な日記のある個所で、アミエルが日記への批判を行っている点です。 
 
日記は怠惰の枕である。すべての問題を論じないで済むし、同じことを繰り返してもよく、内的生活のあらゆる気まぐれや迂路を歩むことも、何一つ目的を立てずにいることもできる」 
一時の痛み止め、散らし薬、切り抜け策でしかない」 
 
しかし彼はそれでも日記を書き続けるなかで、こうした自己批判をも乗り越え、日記を通じてみずからの心と行を鎮まる境地をも経験していきます。 
 
生きるとは日に日に治り新たになることであり、また、再び自己を見出し取り返すことである。日記は、孤独な人の打ち明け相手、慰安者、医者である」 

この毎日の独白は、祈りの一形式、精神とその原理の談話、神との対話である。これによってわれわれは、面目をすべて取り戻し、混沌から明晰へ、動揺から平静へ、散漫から自己統一へ、偶有性から恒久性へ、特殊性から調和へと立ち返るのである」 
 
こうしたアミエルの記述を読んでいると、日記とは意識的な睡眠のようなもので、そうしたプロセスを経てはじめて私たちは宇宙的な秩序へと回帰していけるのだという気がしてきます。 
 
今期のおとめ座もまた、そうした何でもない地味な作業を毎日毎日続けていくことの大切さに改めて思い至っていくことになるかもしれません。 
 

参考:アミエル、河野與一訳『アミエルの日記』(岩波文庫) 
12星座占い<11/1~11/14>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ