12星座全体の運勢

「風通しのよい真実味」

11月7日の「立冬」を過ぎると、木枯らしが吹き始め、日に日に冬めいてくるようになります。 

まだまだ晩秋の装いが色濃く残っている時期でもありますが、「雪中花(せっちゅうか)」の異名をもち、雪の中でも香り高い水仙が咲き始めるのもこの頃。そんな中、11月15日に迎えていく今回のさそり座新月のテーマは「真実を告げること」。 

それは世間一般や他者のリアリティーへ順応することや黙認することを拒んで、自分本来の波長にとどまり、自分のことを正確に認識してもらうよう、相手や周囲に要求していくこと。 

平安時代末期に中国より渡来した水仙は、室町時代になって一休禅師が『狂雲集』で「美人ノ陰ニ水仙花ノ香有リ」とエロティックなもののたとえに詠んだことで知られるようになりましたが、和歌にはほとんど詠まれていません。それは都からはるかに遠い辺鄙な海辺や岬などにひっそりと咲いていたから。 

しかしこれからの時代、このように水仙に例えて真実を語る人たちの存在は、ますます隠しきれないものとなり、互いにゆるやかに連帯しては離れ、つながっては適切な距離をとり、といったことを繰り返していくでしょう。そして今回の新月は、多くの人にとって、そうした風通しのよい関係性へと近づいていくための大切な一歩となっていくはずです。

山羊座(やぎ座)

今期のやぎ座のキーワードは、「アクロバット的転換」。

山羊座のイラスト
歴史の大転換期には、後から振り返れば当然に見えても、当時の時代状況に即して考えてみると、さながらアクロバット的としか言いようのない思想潮流の切り替えがあるものです。 
 
例えば、資本主義の精神の源流とは何であったのかを振り返っていくとき、切り替えの要点は、それまで神から与えられた使命、天職だけを意味してきたドイツ語の「ベルーフ(Beruf)」という言葉が、現世の職業労働にも当てはめられるようになったことに求められます。 
 
首謀者はマルティン・ルター。彼が、旧約聖書をドイツ語に翻訳する際に、そういう意味を与えたのが始まりであり、それ以降、営利の追求への罪悪感は決定的に薄れていったのだと言います。 
 
しかし、ルターはなぜそのようなことを成し得たのか。E・H・エリクソンによる『青年ルター』を読むと、その激情的でドラマチックな生涯が間近に迫って展開されてくるようですが、特にここで注目したいのは、次のような場面。 
 
21歳の折、修道院に入ったマルティンは聖歌隊において突然発作を起こして倒れ、「それは私ではない」と叫んだという出来事が起こりました。著者はこれについて、「おまえは悪霊にとり憑かれているのだ」と言って彼の修道院入りを罵倒した父親に無意識に答えたものであり、彼の願望は「神に直接、何の困惑もなしに語る」ことだったのだ、と。 
 
つまり、マルティンは実の父親と天の父という二人の“父親”をめぐってアイデンティティの危機に直面していたのであり、その葛藤を創造的に乗り越えた成果が、結果的に時代や国をこえて近代的な労働観念として受け継がれていったという訳です。 
 
今期のやぎ座もまた、仕事や職業観をめぐる歴史的な転換を促す潮流と個人的な問題とが同期しつつあるように思います。その意味で、どこまで自分事として“歴史の現在”を捉えていくことができるかが、少なからず問われていくでしょう。 


参考:E・H・エリクソン、西平直訳『青年ルター 1・2』(みすず書房) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ