12星座全体の運勢

「雪が花に変わるとき」

11月22日の「小雪」を過ぎれば、もう雪の季節。「一片飛び来れば一片の寒」と言うように舞いくる寒さに本格的に備え始めるこの頃には、こたつを導入したり暖房を入れ始める人も増えてくるはず。 

そして11月30日には、静かに深まってゆく冬の夜に双子座の満月を迎えていきます。今回のテーマは「緊張の中にあるゆるみ」。精神を鋭敏に研ぎ澄ましていくなかで訪れる一瞬の静けさ、そして平穏。それは瞑想の境地が深まったときの感覚にも似ています。初めは雑念ばかりが浮かんで、かえって心が騒がしく感じたり、眠くなってしまったりしていたのが、自然と頭が消えて胴体だけになったように感じてきて、意識は活動しているのに、何かを「志向する」ことなしにいられる「非思考」状態に入っていく。 

禅ではこれを「自分自身の『私』を忘れる」とか「非思量」などと言うそうですが、それはどこか「風花」というこの時期の季語を思わせます。風花とは風に運ばれてちらちらと舞う雪のかけらのことですが、あっけないほどのはかなさで消えていく雪片に、ひとつの花を見出していくのです。それはすべてのものに命があると考えていた日本人が、厳しい冬の訪れにも愛おしむような気持ちを向けていたことの何よりの証しでしょう。 

今回の満月でも、集中力を高めて厳しい現実や人生の課題(雪片)と向かい合っていくことで、そのなかに隠された恵みや喜び(花)を見出していくことができるかどうかが問われていくはず。 

牡牛座(おうし座)

今期のおうし座のキーワードは、「癖を愛でる」。

牡牛座のイラスト
16~17世紀イギリスの哲学者フランシス・ベーコンは、大法官として当時イギリスの政治事情にも深く関わっていた人物でもあり、そうした経験をふんだんに交えて書かれた『エッセー』の著者としても知られています。 
 
その中でも「運命」をめぐる一連の記述は、今期のおうし座にとっても重要な指針となっていくはず。 
 
ベーコンは、人間の運命は外的な諸条件にも左右されるが「目を凝らして注意深く観察すれば、運命を見分けることができよう。運命は盲目だが、見分けられぬものではないから」とまずことわった上で、次のように述べるのです。 
 
運命の歩みは、空の銀河に似ている。銀河は多くの小さな星の集まり、あるいは塊りである。小さな星は散在していてよく見えないが、一緒になって光っている。同様に、多くの小さな、見えにくい徳性が集まって人々を仕合わせにするのである」 
 
面白いのは、それに付け加えて「イタリア人はそれらのうち、人のほとんど気付かない二、三の点に注目し、見どころのある人間について、ちょっと愚直なところがあることを他の条件とともに挙げている」とベーコンが言っている部分。 
 
「愚か」と評したくなるほどに実直で一本気であることは、確かに「小さな、見えにくい徳性」の例としては適切ですし、案外、ほどよく表裏がなくて誰からも好感をもたれる性格よりも、よほど人の運命を左右する要因になるのかも知れません。 
 
そうした、場合によってはアクに感じられるような、普段ほとんど意識していないような小さな癖を見つめるように心がければ、確かにベーコンの言う通り、あまりひどく運命に翻弄されることからは免れられるはず。 
 
自分にはどんな些細な癖や、「小さな、見えにくい徳性」があるのか―。今回の満月はそんなことを意識してみるといいでしょう。 
 

参考:渡辺義雄訳『ベーコン随想集』(岩波文庫) 
12星座占い<11/15~11/28>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ