12星座全体の運勢

「雪が花に変わるとき」

11月22日の「小雪」を過ぎれば、もう雪の季節。「一片飛び来れば一片の寒」と言うように舞いくる寒さに本格的に備え始めるこの頃には、こたつを導入したり暖房を入れ始める人も増えてくるはず。 

そして11月30日には、静かに深まってゆく冬の夜に双子座の満月を迎えていきます。今回のテーマは「緊張の中にあるゆるみ」。精神を鋭敏に研ぎ澄ましていくなかで訪れる一瞬の静けさ、そして平穏。それは瞑想の境地が深まったときの感覚にも似ています。初めは雑念ばかりが浮かんで、かえって心が騒がしく感じたり、眠くなってしまったりしていたのが、自然と頭が消えて胴体だけになったように感じてきて、意識は活動しているのに、何かを「志向する」ことなしにいられる「非思考」状態に入っていく。 

禅ではこれを「自分自身の『私』を忘れる」とか「非思量」などと言うそうですが、それはどこか「風花」というこの時期の季語を思わせます。風花とは風に運ばれてちらちらと舞う雪のかけらのことですが、あっけないほどのはかなさで消えていく雪片に、ひとつの花を見出していくのです。それはすべてのものに命があると考えていた日本人が、厳しい冬の訪れにも愛おしむような気持ちを向けていたことの何よりの証しでしょう。 

今回の満月でも、集中力を高めて厳しい現実や人生の課題(雪片)と向かい合っていくことで、そのなかに隠された恵みや喜び(花)を見出していくことができるかどうかが問われていくはず。 

山羊座(やぎ座)

今期のやぎ座のキーワードは、「いのちに触れる」。

山羊座のイラスト
いのちにふれるというのは、乱れている相手を自分の内部に取り込むことだ」 
 
そう語るのは、伝説的な生け花作家・中川幸夫。 
 
彼がその名を轟かせた作品に『花坊主』(1973)があります。真っ赤なカーネーション900本の花をむしり、それをまるでうつ伏せになった女体の下半身のような形をした大きなガラス壺に一週間詰めておくと、花は窒息するのだそうです。 
 
そして腐乱したその赤い花肉を詰め込んだ壺を、真っ白なぶ厚い和紙の上にどんと逆さに置く。鮮血のような花の液が、じわりじわりと滲み出してゆく。そんな狂おしい光景。 
 
哲学者の鷲田清一が「ホスピタブル」なケアの現場をフィールドワークして綴った『<弱さ>の力』には、さらに次のような中川とのやり取りが記されています。 
 
「お花を恨んだことってないですか?」 
「ふふふ。恨むというよりは……言うことを聞いてくれませんしね」 
「女のひとくらい、やっぱりむずかしいんでしょうか」 
「そりゃ、もう、なんですなあ、なんとも言えないけれど」 
 
中川を扱った章の表紙には、「血に染まる」「花と刺し違える八十二歳」とありますが、「癒す/癒される」という関係性も、彼にとっては「食う/食い破られる」といったものに近く、少なくともどちらかが一方的に関わって無傷でいられるようなものではないのでしょう。 
 
その意味で今期のやぎ座もまた、もはや黙って素通りすることは許されない、徹底的に関わらざるを得ない何か誰かについて、改めて覚悟を深めていくことがテーマとなっていきそうです。 
 

参考:鷲田清一『<弱さ>の力』(講談社学術文庫) 
12星座占い<11/15~11/28>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ