12星座全体の運勢

「裸のまんま」 

2021年の最初の満月は「大寒」と「立春」のはざまにあたる1月29日、寒さのもっとも厳しくなる時期です。とはいえ、雪の間から蕗の薹が顔を出し、鶏が卵を産み始める頃ともされており、どこか新たな希望も兆していきます。 

 そんな今回のしし座満月のテーマは「ゾーエー」。これはギリシャ語で「剝き出しの生」の意味で、「社会的な生」である「ビオス」との対比で用いられる言葉です。両者はふだん区別がつかないように縫い合わされており、特につねに何かしていなければ落ち着かない現代人にとっては、前者はほとんどの場合、「私は〇〇をしています」とか「●●という会社に勤めています」といった後者の在り方に覆い尽くされているように思います。 

 しかし、立春が一年の節目であった旧暦では、立春前はいわば一年の穢れを祓う年越しの時期でもあった訳で、そのタイミングで迎える満月はいつの間にか見失いがちな「ゾーエー」、すなわち、できる限り身にまとっていた虚飾を脱いで、余計なこともせず、何もしないでただ在ること(being)のありがたみやその効用について思い出していくには、絶好の機会と言えます。 

 じつは節分の豆まきも、もともとは年越しの行事でした。今では節分は立春の前日一日だけの行事になってしまいましたが(2021年の節分は2月2日)、邪気を祓って幸せを祈る気持ちは変わらないはず。今期の満月前後の数日間は、ひとつそんな気持ちでただ存れるよう、試みてみるといいでしょう。 

射手座(いて座)

今期のいて座のキーワードは、「死角の発掘」。

射手座のイラスト
視覚障害者の空間認識、感覚の使い方について迫った『目の見えない人は世界をどう見ているか』という本の中で、美学と現代アートを専門とする著者の伊藤亜紗は、「見えない人が見える人よりも空間を大きく俯瞰的にとらえている場合がある」という一般的なイメージとは真逆の現実に触れています。 
 
これは見える人は遠くまで「見通す」ことができるので、そこで見える坂道だったり、まわりの風景、空が青いとか、遠くにスカイツリーが見えるとか、そういうことに気を取られてしまう。だから、「かえって見えない人の方が、目が見通すことのできる範囲を越えて、大きく空間をとらえることができる。視野を持たないゆえに視野が狭くならない」のだと言います。 
 
さらに著者は富士山や月のようなあまりに大きなものや遠くのものを見るとどうしても立体感が欠けてしまうなどの事例から、視覚の大きな特徴として「三次元を二次元化すること」を挙げ、「そもそも空間を空間として理解しているのは、見えない人だけなのではないか」と提起するのです。 
 
つまり、私たちが身体を持っており、一度に複数の視点を持つことはできない以上、あくまで私の視点から見た空間しか捉えられず、空間をそれが実際にそうである通りに三次元的には捉え得ないという訳です。 
 
そうして、著者はどうしても「欠落」としてとらえてしまいがちな「見えないこと」を、脳の内部に新しい扉が開かれ、世界の別の顔を感知するクリエイティビティの発露するチャンネルとして捉え直していくのですが、そのプロセス自体が驚くべき逆転の発想と言わざるを得ないでしょう。 
 
その意味で、今期のいて座もまた、日常生活のなかでいつの間にかアウト・オブ・マインドになっていた死角領域を改めて発掘していくことがテーマとなっていきそうです。 


参考:伊藤亜紗『目の見えない人は世界をどう見ているか』(光文社新書) 
12星座占い<1/10~1/23>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ