12星座全体の運勢

「風の便りを受け取って」 

2月19日には節気も「雨水」に変わり、雪や氷が溶けていよいよ春に向けて草木も芽吹き始めますが、そんな折の2月27日にはおとめ座で満月を迎えていきます。 

今回の満月は、2月18日に体制と制約の土星と激しくぶつかり合った変革と解放の天王星と歩調を合わせつつ、後者の影響力を一気に押し広げていくような配置となっていますが、そのテーマを端的に表すとすれば「癖や偏りの昇華」となるでしょう。 

つまり、無理にエネルギーを集中させて単発的に興奮していくというのではなく、みずからの身体の要求を素直に聞いて、瞬間瞬間の生命の流れにうまく乗っていくなかで、ふつふつと静かな快感が湧いてきて、ごく自然に発散が起きてくるというイメージです。 

ちょうどヒヤシンスの花が開いていく時期でもありますが、幕末に伝わったこの花には「風信子」という漢字が当てられています。「風信」は風の便りという意味も持っており、風に漂うほのかな香りがそっと春の便りを届けてくれますが、今期はそうした微細な変化の流れにきちんと身をもって反応・順応していけるかどうかが、各自においていつも以上に問われていくのではないでしょうか。 

天秤座(てんびん座)

今期のてんびん座のキーワードは、「「わたしたち」のきっかけ」

天秤座のイラスト
昨年から続くコロナ禍の影響によって、何かと言うと物理的な距離を取ることがもはや当たり前の常識のようになっている世の中ですが、そこでは接触する人としない人との線引きの問題や、接触がない場での親密さや信頼の形成というコミュニケーションにおける新たな課題もまた生じてきています。 
 
そんな中で、改めて注目しておきたいのが脳神経科学者アントニオ・ダマシオの「ソマティック・マーカー仮説」です。「ソマティック」とは「身体の、肉体の」という意味で、従来の合理的判断において身体の反応や感情は無関係ないし邪魔になるという“常識”に反して、むしろ瞳孔や手汗などの身体の調節系の反応が多数の選択肢から適切なものを選択する意思決定の際の標識(マーカー)として機能し、相補的に働いているというもの。 
 
つまり、身体がもたらす一種の直感のことであり、ダマシオは「費用便益分析(…)を行う前に、そして問題解決に向けて推論をはじめる前に、あるきわめて重要なことが起こる。たとえば、特定の反応オプションとの関連で悪い結果が頭に浮かぶと、いかにかすかであれ、ある不快な「直感」を経験する」という言い方でそれを表しています。 
 
ここで大事な点は、ソマティック・マーカーは目の前に他者がいたり、実際に接触が生じる可能性が高い状況においては、より強く働くということ。そして、それはとかく競争原理や損得勘定と繋がりやすい「わたし」と「あなた」(他者)を分けて考える発想を乗り越えた、「わたしたち」という自己観が形成されるための最も強力なきっかけとなっていくのです。 
 
他者との具体的な触れ合いが制限された状況下で、例えばVR空間でのコミュニケーションを可能にするテクノロジーの試みは今後もますます盛んになっていくことが予想されますが、その前にまずひとりひとりが自身の身体状況や他者の反応に“触れる”ことの大切さを痛感していく必要があるように思います。 
 
今期のてんびん座もまた、意識にとってもっとも身近でありながら、つねに遠い存在でもある自身の“身体”と触れ合い、その反応に敏感になることで、改めて「わたしたち」という総体としての自己の輪郭を確かめてみるといいでしょう。 


参考:アントニオ・ダマシオ、田中三彦訳『生存する脳』(講談社)
12星座占い<2/21~3/6>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ