12星座全体の運勢

「地を這う蟻のように」

9月7日に二十四節気が「白露」に変わると、いよいよ体感的にも秋をよりはっきりと感じるようになり、夜長の季節に入って物思いにふける時間も長くなっていくはず。そして、同じ9月7日におとめ座の14度(数えで15度)で新月を迎えます。 

そして今回の新月のテーマは、「プライドの置きどころ」。プライドというと、どうしてもこじらせたプライドを守るために社会や他人との関わりを切り捨てたり、過剰防衛の裏返しとしての攻撃性を他者や社会に向けたりといったネガティブなイメージを抱いてしまいますが、とはいえプライドがまったくないというのは誇りに感じているものが何もないということであり、それはみずからの未熟さを改めたり、向上に努めたり、洗練を心がけるつもりがないということに他ならないでしょう。 

個人であれ集団であれ、それなりの歴史を重ねていたり、独自の文化のあるところには必ずプライドは生まれるのであって、それは決してなくしたり、馬鹿にしていいものではないはずです。はじめから守りに入って役立たずになるのはつまらないけれど、いくら実力があったとしても、何のプライドも持たず、誰とも何とも繋がらず、どこからも切り離されて生きることほどつまらないこともありません。 

新月の時期というのは、種まきにもよく喩えられるのですが、それは新たにこの世界に自分を割り込ませていくということであり、多かれ少なかれ何かにトライしたみたくなるもの。 

川端茅舎という俳人に、ちょうど白露の時期に詠んだ「露の玉蟻(あり)たぢたぢになりにけり」という句がありますが、できれば今期の私たちもまた、誰か何かにくじけてひるむことがあったとしても、プライドそのものを捨てることなく、地を這う蟻のように足を前に出していきたいところです。 
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山羊座(やぎ座)

今期のやぎ座のキーワードは、「働かないことの幸せ」。

山羊座のイラスト
現代の日本社会には、どこかで「暇そうにしてたら格好悪い」という考えが根づよくはびこっているように思います。「働かざるもの食うべからず」な勤勉さというのも、もちろん悪いものではないですが、それでもコロナ禍になってからこっち側、忙しくしようにも仕事がないという人も多いのではないでしょうか。 
 
それで、あんまり暇にしているのもどうかということで、仕事をしているフリなんかして、バツの悪い思いをしているくらいなら、いっそのこと水木しげるのように、反対方向に思いきり舵を切ってみるのも手ではないかと。 
 
彼の自伝やSFなんかも味わい深いのですが、インタビューで好き勝手なことを言っている時の水木さんというのは、またそれとは異質の輝きがあるようにおります。 
 
南方の人間は、朝起きると朝からゲームをやったりして、遊んでるんですよ。そして午前中だけ働けばいいんです。畑にちょっと歩いて行って、イモを植えときゃいいんです。(中略)彼らの考えの中には働かないことの幸せっていうのがあるんですね。ぼんやりしている。ゆったりした暮らしっていうのを彼らは幸せの基準にしている。」 
 
あんまり金儲けずに幸せであるという形は、いわゆる日本ではいけない言葉ということになってるけど、「土人」ということね。土の人っていうね、あれはいい言葉なんですよ。人間は土から生まれて土に帰るわけですからね。土人でいいんですよ。土人というのはいいもんだなあと思って観察しておるんですよ。」 
 
もちろん、それなりの金を獲得しつつ、自由な時間を確保するというのが最高ではあるでしょう。けれども、今期のやぎ座は、まずは土人になったつもりで、「働かないことの幸せ」ということから始めてみるといいのかも知れません。 
 
 
参考:後藤繁雄編『独特老人』(ちくま文庫) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ