12星座全体の運勢

「主観の結晶化」 

昼と夜の長さが等しくなる「秋分」を2日後にひかえた9月21日には、うお座28度(数えで29度)で満月が形成されていきます。

そんな今回の満月のテーマは、「画竜点睛」。すなわち、物事を完成させるための最後の仕上げの意。前回の記事の中では、9月7日のおとめ座新月から21日のうお座満月までの期間は「かつて否定した自分自身(の実感や衝動)との和解」ということがテーマになると書きましたが、それは以前なら単なる主観でしかないとして切り捨てていた個人的な思いや直感が改めて検証され、そこには顧みるべき何らかの意味や価値があるのではないかといった“読み解き”が促されていきやすいという意味でした。

つまり、先の「仕上げ」とは、権威や影響力があるとは言えど誰か他の人の意見や考えや根拠をうのみにするのではなく、あくまでみずからの主観的な確信を熟慮のうえで結晶化していくことに他ならないのだということです。

例えば、藤原定家の「見渡せば花ももみじもなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ」という有名な歌があります。浜辺であたりを見まわしてみても何もないという意味で、表向きには何にもない景観です。そもそも、花は春、紅葉は秋ですから、同時に観れる訳がない。ただ、「ない」とあえて否定することで、うっすらとその痕跡が重層的にイメージされ、その上に実際の「秋の夕暮れ」が見えてくると、もはやそれはただのさびしい風景ではなく、心的空間における仮想現実体験のような積極的なニュアンスをもつまでに至るのです。無駄を省いて、一つだけ残ったものとしての秋の夕暮れ。何でもないような一日をあらんかぎりの高度な手法をもって大切に締めくくるという意味で、実に今回のテーマに即した作品と言えるのではないでしょうか。

同様に、今期は他の人が何と言おうとも、自分にとってこれだけは大切な体験・体感なのだということを、手を尽くして結晶化してみるといいでしょう。
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山羊座(やぎ座)

今期のやぎ座のキーワードは、「恋愛病の深い渇き」。

山羊座のイラスト
コロナ禍以降、誰かと直接会って話したり、一緒になって盛り上がることが、すっかり「ぜいたく品」になってしまいましたが、価値がつけばそれを求める度合いも強まっていくのが自然の道理。実際「コロナ離婚」という言葉が飛び交うほどに、コロナ禍をきっかけに離婚相談件数は格段に増えているようです。 
 
ここで思い出されるのが、二谷友里恵の『愛される理由』が話題となり、角川書店が『贅沢な恋愛』という短編集を出し、ユーミンが「純愛」というコンセプトを商品にして、いずれも売れに売れた90年代初頭の雰囲気。たとえば、同時期の1990年に発表された社会学者・上野千鶴子の「恋愛病の時代」には次のような記述があります。 
 
ひと昔前は「恋愛」は「その人のために死ねるか」(曽野綾子)という能動性だったが、世紀末の恋愛は「愛される理由」(二谷友里恵)という受動性に変わってしまった。ほんとうは「愛したい」のではなく「愛されたい」だけなのだと、ベストセラーの一〇〇万部という部数は教えてくれる。「わたしを愛してくれるあなたが好き」と。異性愛とは、「自分と異なる性に属する他者を愛せ」という命題だが、<対幻想>から異性愛のコードをとり去ってみると、「愛されたい願望」はますますはっきりする。(中略)性別は「おまえは不完全な存在である」と告げるが、それを超えて完全な「個人」に近づくだけ、恋愛病は深くなる。」 
 
そして上野はそこに「恋愛病は近代人の病いだ」と続けるのです。一昔前には当たり前とされた「経済的に自立できない女」と「生活的に自立できない男」の相補的な「結婚」の無理や不自然がコロナ禍で加速化し、崩れつつある今、私たちは再びただの「個人」として「恋愛したい(愛されたい)」と深く渇いているのでしょうか。 
 
かつて上野は「恋愛病の時代」の結びで、「ここから「愛されても、愛されなくても、私は私」への距離は、どのくらい遠いだろうか。そして自立した「個人」を求めたフェミニズムは、女を「恋愛」へと解き放つのだろうか、それとも「恋愛」から解き放つのだろうか?」と書いてみせましたが、こうした一連の問いかけは、それから30年の月日が経過した今だからこそ、深く染み入るように感じる人も多いのではないでしょうか。 
 
今期のやぎ座もまた、どのような位相において自分は渇いているのか、改めて振り返ってみるといいかも知れません。 


参考:上野千鶴子『発情装置』(岩波現代文庫)
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ