12星座全体の運勢

「闇への畏敬を取り戻す」 

今年も残すところあと約一か月。占星術的には太陽がいて座に移ると、冬も深まり冷え込み厳しくなる仲冬に入ったのだと感じますが、そんな中、12月4日にいて座12度(数えで13度)で新月を迎えていきます。 

今回の新月のテーマは「新しいサイクルの到来と過去のカルマの噴出」。これはヒット作に恵まれて一躍売れっ子になったスターが、若い頃の苦労話や子供の頃のエピソードを掘り起こされて、波乱万丈ストーリーが作りあげられていくのに似ています。そうして、後者が前者に取り込まれるようなかたちで、壮大な叙事詩を織りなしていこうとするのです。 

例えば、詩人の高橋睦郎はかつて21世紀の第二年を迎える年頭に際して書いたエッセイの中で、「前世紀への反省をこめての今世紀の第一の課題は、光への過信に対する闇への畏敬ではないだろうか」と書いていました。 

ここで「光」と言っているのは、人類の進歩への無邪気な信頼であると同時に、尽きることのない人類の傲慢な欲望のこと。そして、「闇」とは人間がどうしたって暴くことのできないこの世界の不可解さであり、そういう不可解さや、簡単には説明のできないことも、この世にはあるのだと受け入れ、判断を保留にしておくだけの余白を残しておくことこそ、先に述べたような叙事詩的な感性の要となるのではないでしょうか。 

今季のあなたもまた、華やかに賑わい始める街の光景のかたわらで、冬ならではの鮮やかさで心に浮かび上がってくる数々の思い出とともに、闇の感覚を研ぎ澄ませてみるといいでしょう。 
>>星座別の運勢を見る

山羊座(やぎ座)

今期のやぎ座のキーワードは、「共感覚と霊的体験」。

山羊座のイラスト
インターネットの浸透によって、ある意味で霊界が具現化してしまった現代社会では、昔よりもずっと、誰もが容易に霊的な体験、いわゆるオカルト体験をするようになってきましたが、そうしたインフラ側の発達に対して、まだまだそれを使う側の意識が追いついていないのではないでしょうか。というより、使わされているどころか、不用意に巻き込まれてネガティブな方向で誘導されてしまうケースが後を絶たないように思います。では、なぜそうしたことが起きてしまうのか。 
 
その内在的なプロセスについて、神秘学者でシュタイナー思想の日本への紹介者でもある高橋巌は『神秘学講義』の中で、次のように述べています。 
 
このようにして感覚が互いに融合しあうことによってこそ、オカルティズムで言うところの霊的体験が可能になるのだ、とも考えられるわけです。しかしもしもこの融合が(中略)「自我」によって統御されることなく、霊的体験にいたったとしますと、それはなんらかの意味で病的な体験になりかねません。それはいわば先祖返り的なヴィジョンだと、その単なるヴィジョンが外界の事物に投影されて、実際に外なる現実にあるかのようにそれを体験してしまい、幻覚と知覚の区別がつかなくなってくるのです。ドラッグ体験でもおそらくは同じことで、もしもドラッグによって体験された或るヴィジョンが、知覚と幻覚の区別をあいまいにするようなヴィジョンだとすれば、それもやっぱり病的であると言えます。」 
 
ここで「感覚」と言われているのは、単に通常の五感についてのみ言っているのではなく、R・シュタイナーの考えにしたがって、熱感覚、均衡感覚、運動感覚、生命感覚、言語感覚、概念感覚、個体感覚などの微妙で説明しにくいものも含めた、ちょうど占星術の12星座と同じ12の感覚のことで、高橋はそれらが共感覚を通じて生動化し、融合していくことで、私たちはさまざまなバリエーションの霊的/病的体験を経験しているのだと考えた訳です。 
 
やぎ座から数えて「夢見」を意味する12番目のいて座で新月を迎える今期のあなたもまた、自分がどんな感覚と感覚の結びつきを体験しやすいのか、改めて自己観察を深めてみるといいでしょう。 
 
 
参考:高橋巌『神秘学講義』(角川選書)
12星座占い<11/28~12/11>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ