12星座全体の運勢

「闇への畏敬を取り戻す」 

今年も残すところあと約一か月。占星術的には太陽がいて座に移ると、冬も深まり冷え込み厳しくなる仲冬に入ったのだと感じますが、そんな中、12月4日にいて座12度(数えで13度)で新月を迎えていきます。 

今回の新月のテーマは「新しいサイクルの到来と過去のカルマの噴出」。これはヒット作に恵まれて一躍売れっ子になったスターが、若い頃の苦労話や子供の頃のエピソードを掘り起こされて、波乱万丈ストーリーが作りあげられていくのに似ています。そうして、後者が前者に取り込まれるようなかたちで、壮大な叙事詩を織りなしていこうとするのです。 

例えば、詩人の高橋睦郎はかつて21世紀の第二年を迎える年頭に際して書いたエッセイの中で、「前世紀への反省をこめての今世紀の第一の課題は、光への過信に対する闇への畏敬ではないだろうか」と書いていました。 

ここで「光」と言っているのは、人類の進歩への無邪気な信頼であると同時に、尽きることのない人類の傲慢な欲望のこと。そして、「闇」とは人間がどうしたって暴くことのできないこの世界の不可解さであり、そういう不可解さや、簡単には説明のできないことも、この世にはあるのだと受け入れ、判断を保留にしておくだけの余白を残しておくことこそ、先に述べたような叙事詩的な感性の要となるのではないでしょうか。 

今季のあなたもまた、華やかに賑わい始める街の光景のかたわらで、冬ならではの鮮やかさで心に浮かび上がってくる数々の思い出とともに、闇の感覚を研ぎ澄ませてみるといいでしょう。 
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水瓶座(みずがめ座)

今期のみずがめ座のキーワードは、「ヒトと動物の境界」。

水瓶座のイラスト
舞踏評論家の石井達郎が、北京から南に280キロの場所に位置している中国河北省の石家荘市で開催された国際雑技大会で審査員をつとめた経験をもとに「アクロバットの人類学」という紀行エッセイを書いたのは90年代半ばのことでした。 
 
世界中から集まった芸人たちによって披露されるアクロバット、道化芸、動物芸などについて触れていくなかで、石井がひときわ魅力的に感じたと綴っていたのがカザフ共和国の曲馬、そしてたくさんの犬を使った芸でした。 
 
「調教師はできるだけひっこんでいて、あるいは脇役になり、犬たちが自分で楽しんで競技をしているというような構成で演出されていた。犬たちが自由に走りまわり、ユーモアもたっぷりであり、従来のサーカスの動物芸という枠から外れたオリジナルな発想が際立った。」 
 
考えてみれば、数々の動植物を絶滅に追いやり、それに飽き足らず同種間でも殺戮を繰り返しているのはヒトという種だけであり、しかもヒトは地球上で自分たちこそが最も高等な生き物で、ほかの種にはない複雑で繊細な「心」を持っていると固く信じて疑っていないのですから、タチが悪いと言わざるを得ません。 
 
サーカスの動物芸も未来に向けて発想の転換が望まれる。たとえば、ヒトが強圧的に動物を調教するのではない、たんにふつうの動物ができそうもないことをやらせて観客を驚かすのではない、ヒトと動物が和やかに共存しているのをみせてくれる芸。強者/弱者、命令/服従、知性/獰猛……という図式ではなく、「一緒にやってます」という共生の原理である。将来のサーカスの動物芸――なにか新鮮な展開の可能性がありそうな気がする。」 
 
ヒトの絶滅や自滅のシナリオがもはやフィクションとは言えなくなってきている今、私たちは同種の人間を変えようとするよりも、まず従来のヒトと動物、ヒトと植物の線引きや壁を崩したり、解消していくことが急務となっているように思えます。 
 
みずがめ座から数えて「ネットワーク」を意味する11番目のいて座で新月を迎える今期のあなたもまた、かつて石井が感じ取った「新鮮な展開の可能性」が今どれだけ具現化しているか、改めて周囲を見回してみるといいかも知れません。 
 
 
参考:石井達朗『アジア、旅と身体のコスモス』(青弓社)
12星座占い<11/28~12/11>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ