12星座全体の運勢

「先見の営み」 

暦の上では春となり、旧暦では一年の始まりとされた「立春」直前の2月1日には、新たなスタートを先がけるようにみずがめ座12度(数えで13度)で新月を迎えていきます。 

秩序と権威を司る土星と重なり、変革と逸脱を司る天王星と鋭い角度でぶつかりあう今回の新月のテーマは、「先見」。すなわち、近い将来へのプランニングです。 

動物は秋口になると、冬の厳しさに応じて毛皮が厚くなるものですが、そうした近い将来へ向けた準備と計画が可能なのは、未来の可能性がすでに現在において作動しているからに他なりません。それと同様、今回の新月においてもいかに時代の流れがどこへ向かって変化しつつあるのか、そして、今の自分は新しい流れと古い流れのどちらに属しているのかといったことをきちんと見極め、ごまかさずに認識していけるかどうかが問われていくはず。 

例えば、この時期の季語に「明告鳥(あけつげどり)」というものがあり、これは早朝に夜明けを知らせるように大きな声で鳴くニワトリの異名ですが、これは毎日必ず東から朝日が昇るという周期的プロセスを認識すること、誰よりも早く夜明けの兆しに気付くこと、それから気付いたことを周囲に分かるように伝える手段を持っていることという、三つの条件がそろって初めて成立している先見の営みの好例と言えます。 

今期の私たちもまた、夜明けの到来だけでなく、どんなにかすかでも未来へ通じる兆しをいち早く感じ取り、その見通しを知らせるニワトリとなって、希望を広げる一助となっていきたいところ。 
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蠍座(さそり座)

今期のさそり座のキーワードは、「記憶たよりに夢を見る」。

蠍座のイラスト
2年間にわたるコロナ禍を通して、街の様相はしずかに、しかし確実に変わってしまったように思います。大手チェーンや空き店舗が増えた代わりに、資金力に乏しい小さな個人店や歴史ある店舗はいつの間にか消えており、週末の夜になっても繁華街の人通りもどこか寂しいものになりました。 
 
それが良いか悪いかはともかくとして、街というリアルな場そのものに人が集まらず、パワーがなくなってきつつある現状について、私たちはそれをいかに受け止めていけばいいのでしょうか。ここで思い出されるのが、宗教学者の中沢新一が世田谷区の代田橋について書いた「けなげな町」という短い文章で、それは次のように始まります。 
 
代田橋はけなげな町である。町の龍脈だった神社への参道を、線路によってまっぷたつに切られようと、幹線道路からのひっきりなしの騒音に四六時中さらされていようと、代田橋はめげない。この町は、自分の身体が健康だった頃の記憶をなくしていないで、その記憶を頼りに夢を見ながら、現実を乗り越えようとしているようにさえ見える。」 
 
ここでいう「健康だった頃の記憶たよりに夢を見る」とは、具体的には町に住む人びとが、近代の開発を経てもなお、古来からの精神的中心として機能してきた神社や鎮守の森の記憶を失わず、「神社の祭礼の間中、踏切はないものと幻視することに決め」るなどして、大事に受け継いできたことにほかなりません。 
 
中沢がいうように、どんなに鉄道や自動車道が古代の参道や聖地を分断し、その記憶を乱暴に書き消そうとも、実際にそこに住む人間が街への優しさを失わず、かつての夢を見続ける者が絶えなければ、代田橋のようにその後「沖縄タウン」ができて変身を遂げたように、何度でもよみがえっていくのかも知れません。 
 
そんな風に「けなげな町」はそこに住む「夢を見る」人間の存在によって生命線を保ち続けることができるのだという考え方は、今期のさそり座にとってもひとつの指針になっていくはず。あなたもまた、「夢を見る」人間のひとりとして自分が住んでいる町の記憶に積極的にアクセスしてみるといいでしょう。 
 
 
参考:中沢新一『熊を夢見る』(角川書店)
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ