12星座全体の運勢

「大きなリズムや流れと協調しよう」 

立夏をすぎ、すっかり太陽がまぶしい季節に入って、街では日傘をさしている人もちらほら見かけるようになってきた5月16日には、さそり座25度(数えで26度)で満月を迎えていきます。 

さそり座26度のサビアンシンボルは「新しい土地でキャンプするネイティブアメリカン」で、キーワードは「臨機応変」。ここでの「ネイティブアメリカン」とは、「自然と調和して生きている人」の象徴であり、彼らは人生に対してなにか過剰な要求をすることがない代わりに、自身の内側から新しい欲求が湧き出てくるごとに、それにふさわしい場所へと直感的にたどり着くことができます。 

26度というのは、外部への志向性が生まれる度数なのですが、今回は固定宮の終わり際で起きる満月で、かつ「硬直化したシステムや慣習」を意味する土星を巻き込んだ形で起こるため、柔軟宮に特有の“流動性”がひときわ強調されやすい配置と言えます。 

今回の満月では、これまでしがみついてきた“正しい”やり方や“揺るぎない常識”とされてきたものの息苦しさや不自然さに改めて気が付き、そこから自然と離れていくアクションや気持ちの動きが出てきやすいでしょう。 

土星は特定の社会の枠内だけで通用する常識や考え方を表しますが、「ネイティブアメリカン」が依拠している「自然」は、そうした狭い常識や考え方を相対化するより大きな生態系のリズムとともに絶えず動いており、そうした大きなリズムや時代潮流と協調して機能していくことに自分らしさを感じていけるかが、今期は問われていくはずです。 
>>星座別の運勢を見る

双子座(ふたご座)

今期のふたご座のキーワードは、「愛の証明」。

ふたご座のイラスト
ここ数年、グローバル資本主義における“クソどうでもいい仕事(ブルシット・ジョブ)”の増大がようやく日本でも問題視されるようになってきました。しかし考えてみれば、社会的需要によって発生する労働という営みは、他者とのコミュニケーションを少なからず含むものであり、だからこそそこではいかにしてお互いに相手の人格の価値を享受して歓びを感じ合えるかという問題/課題は必ず生じてくる訳で、このあたりのことは、すでに19世紀中ごろには青年期のカール・マルクスが『経済学・哲学草稿』の中で指摘していました。 
 
湯治勃興しつつあった資本主義を批判しつつ、労働の意味を肯定的に捉えなおそうとしたこの論考には、例えば次のような一節が出てきます。 
 
もし君が相手の愛を呼びおこすことなく愛するなら、すなわち、もし君の愛が愛として相手の愛を生み出さなければ、もし君が愛しつつある人間としての君の生命発現を通じて、自分を愛されている人間としないならば、そのとき君は無力であり、一つの不幸である」 
 
後半部分は少し分かりにくいかも知れませんが、ここで論じられているのは、「どうしたら自分が誰かに与える愛情に正当性が確認できるか」という話であり、それは誰かへの愛が正当であると感じられるのは、その誰かが自分からただ愛を受け取るだけでなく、みずからもまた誰かに愛を与えるようになった時に他ならないのだ、とマルクスは言っている訳です。 
 
そして当然、このマルクスの考えをさらに敷衍するなら、おそらく一度たりとも少しの愛情も受けとったことがない人はおそらくいないでしょうから、人間は誰しもが人生を通じて、他の誰かによって自身の愛情の正当性が証明されるのを待っていると同時に、自分に愛情を与えてくれた人たちの愛の正当性を能動的に証明していくためにも存在しており、後者については、しばしば労働を通じて実現していくのだ、という風にも言うことができるのではないでしょうか。 
 
その意味で、16日にふたご座から数えて「労働」を意味する6番目のさそり座で満月を迎えていく今期のあなたもまた、自分もまた誰かから愛を受け取ってきたのだと思い出していくことを通して、逆に自分が決して無力な存在ではないのだということを再確認していくことがテーマになっていくでしょう。 
 
 
参考:マルクス、長谷川宏訳『経済学・哲学草稿』(光文社古典新訳文庫) 
12星座占い<5/15~5/28>まとめはこちら
<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ