一生使える、脳科学的「運上げアクション&運上げワード」

もしも「あなたは運がいいですか?」と質問されたらなんと答えますか? 実は、運がいい人の答えはほぼ「Yes」。なぜなら脳の使い方が違うからなんです。運のいい人がやっていることを、脳科学の知見を交えて毛内拡先生が徹底解説。ラッキーをつかみ取ることにつながる思考や行動、言葉を知って、ぜひ自分で運を切り開くヒントに!

教えてくれたのは

脳神経科学者
毛内 拡(もうない ひろむ)先生

お茶の水女子大学 基幹研究院自然科学系助教。「脳が生きているとはどういうことか」をスローガンに研究を行う。近著に『脳科学が解き明かした運のいい人がやっていること』(秀和システム)

運は自分で高められる!

“自分の脳をよく知ることで、
運をコントロールすることができます”

── 毛内先生

運のいい人は、運がよくなる脳の使い方をしている!

「ラッキー」や「運」という言葉を聞くと「棚からぼたもち」といった、何もしていなくても訪れてくれるものというイメージを持つ人がいるかもしれません。でも僕は、運のいい人がやっていることを脳科学の観点から深掘りした結果、運はコントロールできると考えています。

どういうことかというと、まずは、「自分について知る」ことが第一歩。運のいい人は共通して、自分というものを正確に理解しようと努めています。そのうえで自分の思考や行動を他人任せにせず、能動的にアクションをとっているんですね。その鍵は私たちの意思決定、感情、行動のすべてを制御している脳にあります。総じて、運がいい人は脳のクセをよく理解して、脳と上手につきあっていると言えるでしょう。

あなたは、脳は見聞きした情報をそのまま取り込んでいないのを知っていますか? 私たちの脳は、外界を認識する時、一度情報を自分の経験と照らしあわせて、自分の言葉による解釈を通じて意味づけているんです。それぞれの脳で行われる情報処理のしかたが、その人の思考や行動パターンや現実を形成しています。だから、たとえば同じ失敗をしても、「自分の能力がないからだ」、「もうだめだ」、「ツイてない」とネガティブにとらえる人もいれば、「次は確認すれば大丈夫」、「今日は早めに寝よう」、「成長できてラッキー」とポジティブな人もいます。その差は脳の使い方にあります。

運のいい人は、豊富な経験や記憶をもとに、自分にとってよい方向に情報を処理し、成功へと導く判断や行動ができるよう日常的に脳を使っているのです。また、脳がベストなパフォーマンスを発揮するために積極的な休養や回復を心がけています。良質な睡眠だけでは不十分で、脳の疲れを回復させる方法はほかにも多くあります。

だんだん運を自分で切り開ける気がしてきましたか? では、運のいい人の習慣をより具体的に解き明かしていきましょう。

脳神経キャライラスト

いつでもハッピーな人になる秘訣は? “運がいい人”の3カ条

ラッキーは、運をつかむ準備をしている人にやってくるという毛内先生。運がいい人は、脳のクセを理解しうまく利用した習慣を日々積み重ねているそう。一見するとシンプルだけれど、脳科学的に重要な意味を持つ3カ条をご紹介!

①運がいいと思い込む

運がいい人は「自分は運がいい」と思っています。もちろん自分ではどうしようもない出来事が起こることもありますが、起こったことに対して「あれは運がよかった」とポジティブにとらえ直せるかが大事。前述のとおり、脳は外界を認識する時に受け取った情報をすべて読み解くわけではなく自分ならではのワンクッションをはさむクセがあるため、「自分は運がいい」と思うことで、どんな経験も前向きにとらえてそこから学び、自らの手で運を切り開くことができます。

ポジティブにとらえる頭の中をイメージしたイラスト

②できるだけ新しい体験をする

脳が情報を処理する時に使っている、経験や記憶をもとに世界をどう理解し、どう行動するかという知恵の集まりを僕は“知恵ブクロ記憶”と呼んでいます。運がいい人ほど豊かな知恵ブクロ記憶を持っており、その形成には多様で新しい経験をたくさん積むことが重要だと言われています。特に新しい体験とワクワク・ドキドキが重なることに積極的に挑戦することで、脳が活性化します。新しい体験を重ねることで多角的な視点を持てるので、情報に対する解像度も上がります。

サーフィンに挑戦する人のイラスト

③どうでもいいことは忘れる

脳は大量のエネルギーを消費するゆえ、基本は省エネモード。脳の重量は体重の2%に過ぎませんが、基礎代謝の20%は脳が使っているほどなんです。ところが私たちを取り巻く環境は、常に変化する情報の海。受動的に情報を受け取りすぎてしまうと、脳が処理能力を上回る情報にさらされ、脳疲労が積み重なり、脳の機能不全を引き起こすことにつながりかねません。脳を最適に機能させるためには、能動的に必要な情報を効率的に選択し、それ以外は捨て去ることが大切です。

Illustration : Haruhi Takei Text : Tomoko Sakuma ※MORE2024年冬号掲載