脳が喜ぶ運を上げる言い換え帳

運がいい人は、言葉やコミュニケーションにおいても運が上がる行動習慣を実践しているそう。脳神経科学者の毛内拡先生がおすすめする、シーン別の言い換え方を紹介。今日からぜひトライしてみて!

教えてくれたのは

脳神経科学者
毛内 拡(もうない ひろむ)先生

お茶の水女子大学 基幹研究院自然科学系助教。「脳が生きているとはどういうことか」をスローガンに研究を行う。近著に『脳科学が解き明かした運のいい人がやっていること』(秀和システム)

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言葉は大切!

「脳は、外界をこれまでの経験や記憶をもとに認識しています。ポジティブな言葉の使用や望む未来の言語化によって脳の予測モデルを書き換え、未来にいい影響を与えることができます」(毛内先生、以下同)

CONTENTS
  1. 脳が喜ぶ運を上げる言い換え帳
  2. ひとり言はポジティブに
  3. 仕事編
  4. 人間関係編

ひとり言はポジティブに

『うまくいったかな……』『ああしておけばよかったかな……』

➡︎「終わった!」「できた!」
自己効力感を高めるひとり言は脳のモチベーションを高める効果大。
「私たちの脳の働きの大部分は、特定の行動を開始し停止するという行動のループによってできています。言語化し、口に出して、耳でも聞くひとり言の形で目的の行動の完了を脳に教えてあげると脳は喜びます。逆に、後悔の言葉は脳疲労の原因になります」

『自分にできるのかな』

➡︎「まあなんとかなるだろう」
望む未来を口に出すことは、いい意味で脳をだますことに。
「なりたい自分になるとあらかじめ宣言してしまうことでうまくいってしまう現象は『自己成就予言』とも呼ばれています。脳にポジティブな情報を与えることで、脳の予測モデルを書き換え、プレッシャーのかかる状況において過度な緊張や不安を和らげることができます」

『エモい』『かわいい』

➡︎「○○が素敵」「▲▲に心が動かされた」
ふんわりした印象の言葉よりも明確な表現を使うことで、脳の認識の解像度がアップする。
「あいまいな表現を使うことにより対立を避けるという日本語の便利な点もありますが、使いすぎてしまうと自分の気持ちや外界の情報の認識もぼんやりしたままになってしまい、正確な把握ができなくなるおそれが。明確で具体的な言葉を使うよう心がけを」

『失敗した……』

➡︎「学びがあった!」
フォーカスすべきは失敗ではなく、糧にしたその後の成長。
「失敗ってネガティブなとらえ方をしがちですが、試行錯誤することは脳の活性化にとってすごく大事。自分が情報を認識する“知恵ブクロ記憶”の1ページに失敗が加わることで、その後のよりよい思考や行動にもつながるので、前向きにとらえて脳を喜ばせてあげましょう」

運気が上がっているイメージ イラスト

仕事編

『 私にはできません 』

➡︎「すべては無理ですが、ここまでならできます!」
依頼を受けられなくても完全にシャットアウトせず、可能な範囲の譲歩案を添えるとお互いに脳疲労が減る。
「ひとりで抱え込まず、周囲の協力を仰ぐ返答をすることで双方の利益に」

『(業務報告に対して)了解! 』

➡︎「よくやってくれたね! ありがとう」
相手の自己効力感が高まる声かけでチームの仕事運をアップ。
「脳は自分の意図どおりに達成できたことに喜びを感じます。『ありがとう』の感謝だけでなく、相手の達成も伝えられます」

『 なんでできないの? 』

➡︎「手伝えることはある?」
相手の任務達成に向けてサポートする言葉が◎。
「相手の脳疲労を増やす言葉ではなく癒す声かけを。『ここまでできたね』、『次はこうやってみよう』といった言葉もいいですね」

『 今は忙しいからあとにしてもらってもいい? 』

➡︎「あと〇分だけ待って!」
中途半端な返事は避けて具体的な提案を。
「話を聞き流したり、『今は無理』と相手とのコミュニケーションを断ち切ってしまうのは、心理的安全性を損なうことにも。ペンディングでも区切りがつき、効力感が高まる回答で双方の生産性を上げて」

会社で仕事をしている3人のイラスト

人間関係編

『 ツイてないね 』

➡︎「成長につながったね」
「『自分の力ではどうしようもなかったね』という慰めになることもありますが、ネガティブを引き寄せてしまうことも。糧になりラッキーだったととらえ直す声かけのほうがベター」

『 ○○なタイプとは気が合わない 』

➡︎「違うタイプだけど、▲▲なところがいいね!」
初対面の人と話すことも脳の活性化に。
「先入観によって人間関係の可能性にふたをするのはもったいないので、会話のきっかけ程度にして、違いを楽しむようにしてみてください」

『 前は好きじゃなかったよね 』

➡︎「新しいことにチャレンジしているんだね」
外界の変化に対応するために、人は変わり続けて生きていくものと心に留めて。
「一貫性とは社会的な概念で、一貫した自己はそもそもありません。『変わったね』の言葉が自他を縛る鎖になりかねないので、相手にも求めなくてOK」

『(日程を聞かれて)まだわからないかも! 』or 既読無視

➡︎「まだわからないから、日程が近づいたらリマインドしてもらっていい?」
「モヤモヤした状態が続くと、『認知的負荷』と言いますが、双方が脳のリソースを割くことになります。なので、まずは現状を伝えることが大事。それだけで脳疲労が減少します」

人と交流しているイメージ イラスト

Illustration : Haruhi Takei Text : Tomoko Sakuma ※MORE2024年冬号掲載