12星座全体の運勢

「大きな物語に取り込まれていく」

6月21日の夏至の日の夕方16~18時にかけて、蟹座1度で部分日食(新月)が起こり、晴れていれば日本全国で欠けていく太陽が観測できます。これは日食と新月、そして一年のうち最も日が長くなる夏至が重なる特別なタイミングであり、時代の移り変わりの上でもひとつの節目となっていきそうです。そのキーワードは、「大きな物語」。これは例えば「むかしむかし、あるところに……」といった語りで始まる昔話のように、歴史ないし共同体のもつ空間的・時間的射程の中に自らを位置づけ直していくことで、個人として好き勝手に振る舞う自由を失う代わりに、手で触れられる夢のような生々しい物語の中へと取りこまれていく。今季はそんな"クラい”感覚の極致をぜひ味わっていきたいところです。

蟹座(かに座)

今週のかに座のキーワードは、「谷底」。

蟹座のイラスト
世界の思想史・文化史の例にもれず、日本の場合も歴史的に一部の神格化された例外をのぞいて女性の名前がほとんど出てこないのですが、幕末になると神がかりした女性教祖たちが各地に登場して、革新的な人間観などの教えを説くようになります。

これは封建制度のもとで抑圧されていた女性が、次第にその自由度や素養が高まるにつれ、既成の道徳や宗教の枠から外れたところで、一気にエネルギーが噴出したものと思われますが、その典型が天理教の開祖である中山みきでしょう。

もともと彼女は奈良の地主の主婦でしたが、長男の病気を治すために山伏の祈祷を受けた際、みずから神がかったのだと言います。もちろん、それは自身でも思いもよらないことで、幾度も自殺を図り、家も没落するなど、一度はどん底に落とされますが、病気治しと安産祈願に力を発揮して次第に信者を増やし、男たちをも屈服させていきました。

明治維新直前に出された『みかぐらうた』には、「かみがでて なにかいさい(委細)を とくならバ せかい一れつ いさ(勇)むなり」と、神のもとでの平等が説かれ、「一れつに はやくたすけを いそぐから せかいのこころも いさめかけ」と、急いで力を合わせて世直しに尽くさなければならないというビジョンを投げかけます。

その思想は、権力者である「高山」の横暴をいましめ、「谷底」たる民衆の力による救済を説くものであったため、激しい弾圧を受けるだけでなく、彼女自身も何度も投獄されますが、それでも教えを曲げることなく亡くなっていきました。

今回自身のサインであるかに座で日食が起き、その影響を"自身の在り方そのもの”に受けていきやすいかに座の人たちにとって、こうした中山の人生は、思いがけない運命の転変と、なにより強固な信念とその革新性という点において、大いにロールモデルになっていくのではないでしょうか。


出典:中山みき『みかぐらうた おふでさき』(東洋文庫)
12星座占い<6/14〜6/27>まとめはこちら
<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ