交際経験なし。性的欲求がない20代男性「恋愛ドラマにありがちなシチュエーションに違和感」【モア・ボイス19】
1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。
そして多様性社会を生きる今、「モア・リポート」と並行して性別を問わずジェンダーレスに20・30代の体験談を取材し、彼らの恋愛やセックスの本音に迫る「モア・ボイス」の連載をお届けします!
交際経験なし。ノンセクシュアルの20代男性に取材
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ーDATAー
白川さん(仮名)28歳 /会社員/未婚/男性
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「好き」の先に性的欲求はない?
――白川さんはこれまでに交際経験がない?
はい。僕は交際経験なしのノンセクシュアル(他者に対して恋愛感情は抱くが、性的欲求は抱かないセクシュアリティ)です。(以下同、白川さん)
――好きな人に対しても性的欲求は抱かないということでしょうか?
そうですね。昔から「〇〇ちゃんが好き!」みたいな恋愛感情はあったんですけど、その先の「交際する」「キス・セックスをする」に発展したいと思うことはなく。好きな人がいても、その人との性的な行為に全く興味がありません。逆に嫌悪感を抱くくらいです。
――性的な行為に対してどのような嫌悪感を抱くのですか?
自身が“する”ことに対しての嫌悪感です。たとえばアダルトビデオを観ることに嫌悪感はありませんし、友人たちと下ネタも話します。でも、自分が当事者となると別なんです。自分がすることは考えられない。
ある時ネット上で“ノンセクシュアル”という言葉を知り、自分に当てはまるなと思いました。
――性的関係のない恋人をつくろうとは思いませんでしたか?
恋人をつくるために、自発的にマッチングアプリを使ったり、婚活をしたりはしませんね。自分からアクションを起こしてまで恋愛をする必要はないというのが本音です。
性的欲求がなければ、恋人に固執しなくても友達関係で満足できることは多いです。
男女の友情は成立する。恋愛ドラマの“決めつけ”シチュエーションへの違和感
――“男女間の友情”について、どう思われているのでしょうか?
僕は男女の友情は成立すると思っています。専門学校時代、女友達数人と僕ひとりでカラオケや飲み会に行くこともありました。でも、その中の誰かと交際に発展するようなことはなかったです。
――女友達の中に好きな人がいても、交際はしたいという気持ちにはならない?
女友達に対して「この子いいな」と思うことはあったけれど、仲良くなると「友達のままで充分だ」と思うんですよね。恋愛感情でもLOVEというより、LIKEの最上級といった気持ちでしょうか。それ以上の関係は求めたことはありません。
――性別関係なく、友人関係で満足するということですね。
はい。ドラマ『いちばんすきな花』を観た時、とても共感したんです。
このドラマは「男女の友情は成立するのか」がテーマなんですが、第一話で、仲のいい男友達と頻繁にカラオケに行っていた主人公の女性が、突然男友達から「もう会えない」と告げられるんです。それは、男友達の結婚相手が女友達の存在を快く思わなかったからなんですけど……。
なぜ異性というだけで普通の友達でいられないのかと悩む主人公たちに感情移入しました。
――従来の恋愛ドラマではどちらかというと、「男女の友情は成立しない」というセオリーを受け入れるシーンがたくさん出てきますよね。
そうですよね。男女ふたりでお酒を飲み、いい感じになってそのままホテルに行くシーンとか恋愛ドラマでありがちですけど、僕は「なんでそうなる!?」とまったく共感できずにいました。
――白川さん自身は、男女ふたりで飲む機会はありますか?
あります。終電を逃した女友達が僕の家に泊まりに来たとしても、そういう関係になることは一切ありません。女友達もそれをわかっています。だからこそ、従来の恋愛ドラマの男女はこうなるよね的な“決めつけ”に感情移入できずにいましたね。
誰もが合コンに参加したいわけじゃない
――男女の関係性=恋愛対象、という”決めつけ”は世の中にあふれていますよね。
実は僕、24歳の時に一度だけ合コンに参加したことがあるんです。
――なぜ参加したのですか?
会社の先輩に「飲みに行こう」とだけ言われて連れていかれた先に、5人の女性がいて知らず知らずのうちに合コンに参加することになっちゃって。僕は「なんとかしてこの場から帰りたい!」と思ったのですが、会社の先輩や女性に対して変な態度はとれないし……お酒を飲みまくって、どうにか切り抜けましたね。
――会社の先輩はきっと「喜ぶだろう」と思って白川さんを合コンに連れて行ったのですね。
そうかもしれません。でもその場はまったく楽しくなかったです(苦笑)。
交際経験がないからこそ、いい相談相手になれる?
――今現在、白川さんに恋人は必要なく、友人に囲まれて楽しく生活を送っている?
そうですね。僕は友人たちから「お母さんみたいな存在」と言われるんです(笑)。自分は交際経験がないのに、恋愛相談を受けることも多くて。経験からのアドバイスはできないんですけど、ひたすら彼らの話を聞いています。
――恋愛に悩んでいる時、具体的なアドバイスよりも話を聞いてくれる人のほうが心の支えになるケースもありますよね。
そうかもしれません。僕はカウンセラーみたいだとも言われます。友人に頼まれてカップルの仲裁に入ることも多いんです。交際経験がないからこそ、中立な立場で双方の話が聞けるのかもしれません。
取材・文/毒島サチコ