女性も風俗に行くのが当たり前になる? 女性用風俗のリアルな裏側を描いた『真・女性に風俗って必要ですか?』著者が思うこと【モア・リポート79】
1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。
「モア・リポート」では女性用風俗(以下、女風)を利用した女性のエピソードをいくつかご紹介しました。読んだ方からは「女風に興味があるけれど……実際どんなところ?」「どんな人が利用するの?」「セラピストの男性たちってどんな感じ⁉」と多くの反響が寄せられました。
そこで今回は、女風のリアルな裏側を描いたことで話題のマンガ『真・女性に風俗って必要ですか?』(新潮社)の作者・ヤチナツさんと担当編集のくらげバンチ編集部の伊東さんに女風のリアルについて伺いました。
教えてくれたのは……
- 取材を重ねてつくられた女性用風俗のリアル
- レスだけじゃない。女性用風俗を利用するのはカジュアルな動機であることも
- 突然女性用風俗の内勤に!? 主人公は30歳のアラサー女性
- 女性に風俗って必要ですか?
- 作品紹介
取材を重ねてつくられた女性用風俗のリアル
――マンガ『真・女性に風俗って必要ですか?』は実際の取材・体験を元にした限りなくノンフィクションに近い物語なんですよね。
ヤチナツさん:たくさんの人に取材をしました。女風で働いているセラピストさんはもちろん、実際に裏方として働いている内勤の女性、女風を利用している女性……いろいろな人に取材を重ねながらリアルなキャラクターやストーリーをつくっていきました。
伊東さん:取材のはじめには、ヤチナツさんと一緒に女風で働いているセラピストが接客してくれる“女風バー”にも行きましたね。中小規模の女性用風俗店が実施している勉強会に参加しました。
――勉強会とはどのようなものですか?
ヤチナツさん:いくつかの女風店が集まって情報共有をしたり、売れているセラピストの話が聞けたりする会です。セラピストを同伴して参加している女風ユーザーの方も参加されていました。
――取材を重ねる中で感じたことはありますか?
ヤチナツさん:いろいろな気づきがありましたね。
取材前までは、女風に対して本当に無知で。当初は「自分の住む世界とは違うのでは?」と思ったこともありました。でも、取材を重ねていくと、楽しく健康的に女風を使っている人がいることに気づいたんです。
レスだけじゃない。女性用風俗を利用するのはカジュアルな動機であることも
――楽しく健康的に女風を使っている人とはどのような人でしょうか?
ヤチナツさん:取材当初、主な客層はセックスレスに悩んでいる女性など「事情がある人」だと思っていたんですよね。
――本連載「モア・リポート」でも、パートナーとのセックスレスに悩んだ末、女風を利用した方がいらっしゃいました。
ヤチナツさん:もちろんレスなど深刻な悩みが原因で利用された方もいました。でも、私たちの取材でであった方は、もっとカジュアルな理由で女風を利用している人が多かった印象ですね。
――カジュアルに利用しているのはどのような方たちですか?
ヤチナツさん:ご褒美やリフレッシュ目的で利用される会社員や主婦の方や、「自分のプレイに自信がないから女風で練習しよう」とか「感じにくいからプロ(※セラピスト)にお願いしてみよう」という方です。
――悩んでいるというより“ご褒美”として利用する方もいるのですね。
ヤチナツさん:そうですね。取材を通して「楽しく健康的に女風を使っている人」がいることに気づいたんです。
――働いているセラピストさんはどうでしょうか?
ヤチナツさん:取材では、セラピストは楽しんで働いている方も少なくないと聞きました。女風は一本でやっていけるほど稼ぎがある人は少ない業界なので、収入的なメリットだけで考えるとホスト業界の方があると思います。女風で働く人は、収入面のメリットはもちろんあるものの、女性に対してきちんと向き合うことに対してやりがいを持っている人が多いイメージです。
――たしかに、女風はあらかじめ決められた時間・金額でサービスを受けることができますもんね。
ヤチナツさん:ただマンガは「女風はめっちゃいいよ! いくべきだよ!」というテンションにはしたくなくて。女風が広がったのはここ数年だし、正直整備されていない部分はあると思います。そういうところもフラットに描きたいと思っています。
伊東さん:マンガのタイトルは『真・女性に風俗って必要ですか?』ですが、ヤチナツさんは無理やりコンセプトを言わない良さ、みたいなところを描くのがとてもお上手なんです。実際の取材を通して、女風のいいところも悪いところもリアルに描くことを心がけています。
突然女性用風俗の内勤に!? 主人公は30歳のアラサー女性
――物語は藤崎あかり(30歳)が女性用風俗の内勤の面接を受けるところからはじまりますよね。主人公がカラッとしていて明るいキャラクターなのがとても印象的でした。
ヤチナツさん:主人公は自分が動かしやすいキャラクターにしたかったので、身近な友人や実際に女風の内勤で働いている方をモデルにしています。性格的な部分では自分自身もモデルにしていますね。
――読者の反応はいかがでしたか。
伊東さん:前作の『女性に風俗って必要ですか?』(新潮社)の連載をはじめた3年前は、まだまだ女風の認知度も低かったので「こんな世界ほんとにあるの?」といったコメントが目立っていました。
でも、現在は、主人公のあかりと同じように、“女風が当たり前にあるもの”という前提でのコメントが多いですね。たとえば自身の女風の体験談を書き込む人もいて、自分事として読んでもらっている印象です。
――読者層はどうでしょうか。
伊東さん:読者層も著しく変わりました。当初は女性が圧倒的に多かったのですが、現在では男女半々です。男性がこれまであまり表に出てこなかった女性の性の本音を知りたい、という気持ちのあらわれかもしれません。年齢層は男女ともに30~40代が一番多いですね。
女性に風俗って必要ですか?
――現在連載を進めている中で、マンガのタイトル「女性に風俗って必要ですか?」の答えは見つかりましたか?
ヤチナツさん:う~ん……。難しい質問ですね(笑)。タイトルは、出版社の意向で分かりやすいものにしたというのもあるのですが……。
これまで風俗は男性だけのもので「なんで女性にはないの?」と感じることはありました。このマンガでは女風の是非を問うのではなく、女風を「女性の選択肢として“当たり前”にあるもの」として描きたいと思っています。
作品紹介
真・女性に風俗って必要ですか?~女性用風俗店の裏方やったら人生いろいろ変わった件~(ヤチナツ)
【巷で話題「女性用風俗」のリアルな裏側】 気軽に始めてしまった「女性用風俗(女風)」の裏方のアルバイト。初仕事はなんと「経費で女風を体験する」だった――! 女風店の裏方として、多岐にわたるお客様の要望に翻弄されつつも、男性セラピストたちと協力して寄り添います! そして自身もお客さんとして利用した女風で、ずぶずぶと沼にハマってしまい……!? 沢山の取材を元に女風のリアルな裏側を描いた大人気エッセイ、第二弾!
取材・文/毒島サチコ