1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。

そして多様性社会を生きる今、「モア・リポート」と並行して性別を問わずジェンダーレスに20・30代の体験談を取材し、彼らの恋愛やセックスの本音に迫る「モア・ボイス」の連載をお届けします!

元人気セラピストが語る女性用風俗のリアル

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ーDATAー

竹内さん(仮名)30代 /未婚/男性

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女性用風俗(以下、女風)のセラピストとして5年間働いていた竹内さん(仮名)。女風には、20代から60代まで幅広い年齢の女性がさまざまな悩みや目的を持って訪れるという。竹内さんがセラピストになった経緯や、女性がどのような目的で女風を利用するのかについて伺った。

自己肯定感が低かった20代を経てセラピストに

元セラピストに聞く女性用風俗のリアル。利の画像_1

――竹内さんは、女性用風俗(以下、女風)でセラピストをされていたんですよね?

現在は辞めていますが、丸5年セラピストとして働いていました。(以下同、竹内さん)




――どのような経緯でセラピストになられたのですか?

セラピストになる前、僕は性依存ぎみなところがあって。性やセックスを通して女性に奉仕することで、存在意義や喜びを感じている部分がありました。




――“奉仕する”とはどのようなことでしょうか?

自身の快楽よりも、相手に尽くして喜んでもらうことです。

20代の僕は自己肯定感がすごく低く、相手に奉仕して喜んでもらうことで自己肯定感が上がり、自分の存在価値を認めてもらえていたような感覚に近かったのだと思います。



――自己肯定感が低かったのはなぜですか?

家族との関係も良好ですし、特に思い当たる理由は見つかりません。営業の仕事をしていましたが、営業成績もよく、社会的には満たされている状態だったと思います。だけど、性やセックスでしか満たされない“何か”が自分のなかにずっとありました。


当時恋人はいなかったので、不特定多数の女性と体の関係をもち、ホテル代やデート代はすべて自分で払って、相手に奉仕し続ける自傷行為のようなセックスをしていました。




――その状態から、なぜセラピストになったのですか?

知人から「女風というものがある」と教えてもらったのがきっかけです。その時に「天職だ!」と思ったのを覚えていますね。その当時、現在ほど女風は有名ではなかったのですが、すぐにセラピストになろうと決めました。

利用する人は既婚者が多い。「女風は不倫じゃない」自分の中での納得感

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――実際にセラピストとして働いてみてどうでしたか?

セラピストになるまではホテルの宿泊費をやデート代を僕自身が払って、たくさんの女性に奉仕してきました。だから、ある程度女性性の多様性や複雑さは理解しているつもりでした。


女風は女性のお客様がお金を払って“何か”を満たすために利用するわけですが、セラピストになってみて女性性の根深い問題を感じることが多かったです。



――どのような問題を感じましたか?

僕のお客さんの約8割は既婚者で、普段パートナーと仲は良くても性の不一致やセックスレスが理由で女風を利用される方も多かったです。料金を払ってサービスを受ける女風であれば「不倫にならない」と葛藤しながらも自分に言い聞かせて利用される方であったり。



――それぞれ悩みを持って女風に来られる方が多いのですね。年齢層はどのくらいですか?

もちろん中にはカジュアルな理由で利用される方もいます。利用目的は100人いれば100通りありました。利用者の年齢層も幅広くて、20代~60代くらいです。





――年齢によって利用目的は異なりますか?

20代の方だと「パートナーと体の相性が悪い」「オーガズムを経験したことがないから、一度プロにお願いしたい」という理由が多かったように思います。50~60代の方であれば「性交痛に悩んでいる」という悩みから「疑似恋愛で人生を謳歌したい」といった理由で来られる方もいらっしゃいましたが、本当に理由はさまざまでした。

女風は究極のカウンセリング。だけど危険な面も

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――竹内さんはセラピストとしてどのようにお客さんに接してきたのでしょうか?

基本的に、どんなお客さんでも絶対に相手を否定することはしません。相手が話したいこと・やりたいことを大切にしています。お客さんの中には、ホテルに入って、話をしたり、ハグをするだけで感情があふれて泣いてしまう方もいらっしゃって……。



――なぜ泣いてしまうのですか?

普段、気持ちを抑圧している場面が多いからだと思います。性の話はなかなか友人には話しづらいし、セラピストだからこそ話せることって多いと思うんです。女風は、ただの性欲を処理する場所ではなく、心を解放する場所で、セラピストは究極のカウンセリング・接客業だと感じました。



――女風は性欲の解放よりも、心を解放するような側面が強いと感じたのですね?

僕がセラピストをして感じたのは、通常の心理カウンセリングのように60分・90分話すよりも、肌と肌が触れる一回のハグで満たされることがあるってことです。セラピストはベッドに入ってからではなく、ベッドに行くまでにどれだけお客様に安心してもらい、心を委ねてもらえるかが勝負のお仕事だと思いましたね。




――女風を利用した女性は利用目的を達成したり悩みを解消できるのでしょうか?

利用して当初の目的を達成できたり悩みを解消できたり、「女性性の解放」ができて満足を得られたという声も多々ありました。でも、当初の利用目的から大きく外れ、セラピストに恋をして、女風に大金を使って借金をしてしまったり、昼間の仕事を辞めて高収入の夜の仕事をはじめられたりする方がいるのも事実です。 

【後編を読む】元セラピストに聞く。女性用風俗を利用するときに注意すべきこと
女性も風俗に行くのが当たり前になる? 女性用風俗のリアルな裏側を描いた『真・女性に風俗って必要ですか?』著者が思うこと【モア・リポート79】

取材・文/毒島サチコ

ライター・インタビュアー
毒島サチコ

MORE世代の体験談を取材した「モア・リポート」担当のライター・インタビュアー。

現代を生きる女性のリアルな恋愛観やその背景にひそむ社会的な問題など、多角的な視点から“恋愛”を考察する。