1980年──、いまから40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。
そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。MORE世代=20代の女性の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします!

コロナ感染。怖かったのは、ウィルスよりも人だった

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ーDATAー
西田さん(仮名)28歳 / 未婚 / 職業:PR会社勤務
初体験:18歳 / 経験人数:3人 / セックスとは:愛を確かめる行為
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西田さん

気をつけていたのに……カップルでコロナ感染

聞き手:カップルでコロナに感染? 性にまつわるお話しだけでなく、そのご体験も気になるところです。

西田さん:はい。彼氏の感染が先に分かり、私も次の日に。まさか自分がコロナにかかるなんて夢にも思いませんでした。「陽性です」と言われたときは、目の前が真っ暗になりましたね。

聞き手:パートナーはいつ感染を?

西田さん:「男友達と食事をしたとき」と言っていました。その男友達も、私たちと同じ時期に陽性反応が出て。TVでは「夜の街での感染が多い」と言っているじゃないですか。だから、最初は“彼氏がキャバクラやガールズバーに行ったんじゃないか……”って疑っちゃいました。

私が感染したのは、彼氏がうちに泊りに来たときだと思います。一週間ほど一緒に過ごし、その間に何度もセックスもしたし……。お互いひとり暮らしだったので、自宅療養になりました。LINEでこまめに連絡を取り合っていましたけど、療養中は孤独との戦いでした。

体調だけじゃない、何よりも辛かったのは……

気持ち的にも追い詰められた西田さん
聞き手:コロナの症状はどのようなものでしたか?

西田さん:最初の2日間は38度近い高熱が出て、食事もできませんでした。その後、熱が下がっても倦怠感が続いて、やっと食欲が湧いてきた頃に、味覚がなくなって。

さらに最悪なことに、私がまだ感染に気づかず「外に飲みに行けないし、宅飲みしない?」と誘った友人にコロナをうつしてしまったんです。

家族と同居していた友人は、すぐにホテル療養になりました。感染が分かった時、家族が心配だし、大切な仕事に出られなくなったと泣いていました。私は「ごめんなさい」しか言える言葉もなく……。
友人は「家族や仕事仲間にうつしていたらどうしよう」「信頼を取り戻さなければ」「こんなに気をつけていたのに」とずっと嘆いていたので、思わず私は「ごめん、でもそれを私に言われても、どうしたらいいか分からないよ……」と言ってしまったたんです。そうしたら友人は「え、あんたのせいでかかったんだけど!」「あんたは1人だからいいけど、私には家族がいるの!」とキレて。

これをきっかけに、友人からの連絡が途絶えました。

「体調はどう?」とLINEをしても返事がないまま今に至ります。友人はSNSは更新していて、職場に復帰している様子もうかがえるので、元気だとは思うのですが、今もコロナをうつした私のことを恨んでいるのだと思います。

セックスは仲直りのきっかけ。でも、会うことすら出来ない今、どうすれば?

彼にあたってしまった西田さん
聞き手:それは、大変でしたね

西田さん:この一件で私も精神的に追い詰められて……。私だってうつされたんだ、と、彼氏にあたってしまったんです。私ひとりでヒートアップして、「あなたは夜のお店で感染したんじゃないの?」って言ってしまったり。「もう会いたくない!」とまで口走ってしまい……。最低ですよね。

聞き手:いつも感情的になるタイプ?

西田さん:はい。今までの恋愛では、私が感情的になり、言い合いになることが多かったんです。話し合いじゃ解決しないから、最後は流れでセックスをして仲直り、みたいな。それでいうと私にとってのセックスは、究極の仲直りの方法みたいなところがありました。それでもダメな時は、喧嘩別れしてしまったり。

でもコロナじゃ、セックスはおろか会うことすら出来ない……。

聞き手:今回はその後どうなったんですか?

西田さん:彼氏はとても冷静でした。電話がかかってきて、落ち着いた声で私に「このタイミングで大切なことは決めないで。治ったら会って話そう」と言いいました。

本人もしんどいはずなのに「体調どう?」と毎日連絡をくれて。ネガティブになりがちな私を「もう少し頑張ろうね」と何度も励ましてくれました。今までつき合ってきた男性は、売られた喧嘩は必ず買うタイプの人だったので、最初は今の彼の冷静さに戸惑いました。

ちなみに最近分かったんですが、彼氏は、夜の街で遊んでいた男友達からうつされたみたいです。本人が遊んでいたわけじゃなくて、ちょっとホッとしました。

withコロナ時代の恋愛や人間関係であらためて知った大事なこと

病気から快復した西田さん
聞き手:その後は?

西田さん:彼も私も幸い無事に療養期間を終えました。まだ味覚が戻ってこず、倦怠感もあります。が、熱も完全に下がり、日常生活を普通に送ることができるようになってよかった。

聞き手:今、何を思いますか?

西田さん:コロナにかかるまでは、ウィルスに侵されるのは“身体だけ”だと思っていたんです。でも、違いました。
コロナは、人の心も侵すんです。そしてそれは、病が治った後、一番の後遺症になりうると感じました。

なによりつらかったのは、いつもは温厚な友人が放った「あんたのせいで」のひと言。そして、私自身、同じことを彼氏に言ってしまった……。今はとても反省しています。

コロナを経験して、心に余裕がない時こそ“冷静さ”を保つことが大事だと身に沁みました。

今は普通の生活ができる幸せを噛みしめています。
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取材・文/毒島サチコ