『カレンの台所』出版記念インタビュー(2) 滝沢カレンさんに聞く“お料理上手”になるための秘訣 PhotoGallery
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サバの味噌煮やハンバーグなど定番メニューから、カニクリームコロッケやグリーンカレーといった人気の逸品まで幅広いお料理のカレン流の作り方を掲載。お料理本なのにひとつの物語を読んでいるような気分になったり、くすっと笑えるエッセイに触れているような気分にもなる。そして細かい分量がないのになぜだかとってもわかりやすい、まったく新しい料理本! (サンクチュアリ出版 ¥1540)
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たくさん失敗したから、今がある ――滝沢さんが初めてつくったお料理はなんですか? ちゃんとした料理はたぶんハンバーグが最初だったと思います。やっぱり、最初は料理がすごく苦手だったんですね。「なんでハンバーグがベチョベチョしちゃうんだろう?」って。でも、今こんな自信満々にハンバーグを作れるのは、失敗してなかったら会えてなかった自分なんです。だから、たくさん失敗しておいてよかったって思っています。もしかしたら自分しか好きじゃない味かもしれないけど、それでも作りたかったものには歩いて行っているつもりなので、それにはすごく自信があります。 ――今や料理をする方々のお手本になっている滝沢さんですが、ご自身の“料理の先生”的な存在はいましたか? 申し訳ないんですけど、そういう方はいなくて、でもネットで探したことはありました。たとえば、「春巻きには何のエキスが入ってるんだろう?」って調べてオイスターソースが入っていることを知ったり。自分の舌だけでオイスターソースを当てることは、すごい難しいじゃないですか。まず、オイスターソースという存在を知らなかったですし、オイスターソースとウスターソースのちがいにビックリした時代もありました。あとは料理番組がすごく好きだったので、そういうのをチェックして今度作ってみようって思ったりもしていました。『噂の東京マガジン』っていう日曜のお昼の番組に“やってTRY!”っていうコーナーがあるじゃないですか。 ――街中の方々が色々なお料理にチャレンジするコーナーですよね? あれがすごく好きで、派手に間違っちゃっている人とかもいらっしゃるんですけど、その作り方を見て「私もきっとこうやっちゃうけど、違うんだ」っていう発見をしたり、そういうところからも学ばせてもらったかもしれません。最後に先生のお手本も見られるし、あの番組はすごく勉強になりますね。
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まずは“4つの調味料”と家族になることから始めよう ――料理初心者でも作れるおすすめのメニューはありますか? 私、算数とか数学は嫌いなんですけど、 そんな私の好きな法則が料理にはあると思っていて、その法則だけは私をいつも優しく答えに導いてくれるんです。それが、醤油、酒、みりん、砂糖。料理側は法則だと思ってないでしょうけど、私にとっては途中で終わりがないくらい絶対最後まで使える4人家族みたいな存在。だから、何を作るかというよりは、まずはこの4つの調味料でできるものを探すのが楽しいと思います。肉じゃがみたいな煮物系はほとんどこの4つでいけますし、「じゃあそれで豚肉や野菜を炒めたらどんな味になるんだろう」とか「醤油がちょっと濃すぎたから次は減らしてみよう」とか、そうやって冒険していったら、私は自分の感覚をもっと大事にできるようになりました。その4つがあれば和食はだいたいできますし、洋や中の架け橋にもなるので、どんどんほかの国にも広げていけると思います。 ――次は初心者さんに「これは持っておくべき!」というキッチングッズがあれば教えてください。 料理がまだあんまり上手じゃなかった20歳の頃に救われたのが、電気圧力鍋。圧力鍋で大好きな角煮を煮ているうちに副菜が作れたり、幅が一気に広がりました。でも、やっぱり圧力鍋だって人間と一緒で完璧なわけじゃないから、こっちが調味料をちょっと間違えたら、それは味に正直に出てくるんですね。なので、もちろんすぐに成功っていうわけにはいかなかったんですけど、今も持っていて本当によかったなと思います。お仕事が忙しい時は、10分とか15分でカレーもできあがりますし、なのでとってもおすすめです。 ちょっと先の未来を想像して台所に立つ ――料理が上手になるために大切なことは何だと思いますか? 私は、お料理できる自分に会えたら、すごいって思われるんじゃないか、モテるんじゃないかって思ったんです。そんなのが私の料理をどんどん進めさせてくれた理由で、でもそれでいいんだって思います。みなさんも「料理がうまくなりたい」っていう気持ちには、絶対その先に理由があるはず。たとえば「旦那さんにおいしいものを作ってあげたい」だったり「友だちにホメられたい」だったり、そんな理由のほうが私は毎日台所に立てると思うんですよね。 ――やっぱりお料理上になるためには毎日台所に立ったほうがいいですか? 台所には毎日立ったほうがいいかどうかと聞かれたら、それはもちろん毎日立つのはいいことです。毎日台所に立って、毎日台所を知るっていうのは、料理上手への近道。いくら冷蔵庫や鍋は話さないっていったって、どこに何が入っているかを把握していると、台所にいる時間がとっても短くなってくるんです。「もっと台所にいたいよ~」って思うくらい。でも、そのぶん半身浴が30分長くできたり、映画が一本見られたり、生活にいろんないいことも出てくるはずです。 ――今日はどうしても料理する気が出ない……。そんな時は、どうしていますか? 私は「今日はどうしても作りたくない」と思ったら、堂々と作りません。そこを無理矢理台所に立って自分の指でも切っちゃったら、大変じゃないですか。でも、これって私は一人だから思えているだけで、たとえば旦那様やお子様がいて「そうはいかないんだよ」っていう人だって、そりゃいますもんね。じゃあ、毎日料理をする気力って人はどこから出るんだろうって、私もいつもいつも考えているんですけど。そこで私があまりやる気が出ない日に考えるのは、じゃあ1週間後の自分がどんな体でいたいか、1カ月後の自分がどんな健康体でいたいかということです。 ――今日の自分だけじゃなく、ちょっと先の自分のためにお料理をするんですね もっといえば、自分が結婚して出産して50歳になっても子どもと公園で走っていたかったら、偏った食生活はダメだよね、とか。それは食だけではないのかもしれないですけど、毎日外のごはんだけを食べて50歳でピンピン走れる人って、本当に体力のある人しかいないと思うので。「明日風邪を引きたくないから」とか、「毎日元気でいたいから」とか、そんな理由でいいんです。みなさんも、少しだけ先の未来を想像してみてはいかがでしょうか?