1980年──、いまから40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。
そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。MORE世代=20代の女性の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします!

居場所が欲しかった。ヒモ彼氏と3か月でスピード結婚

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ーDATAー
笠原さん(仮名)26歳 /未婚(離婚歴あり) /職業:飲食関係
初体験:16歳 /経験人数:50人超えてから覚えてない /セックスとは:人格判断とコミュニケーション、愛情表現
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父との確執。実家を出たくて結婚した

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ー出会って3カ月で結婚を?

はい。22歳の時、トモキ(仮名・23歳)と出会ってから3か月で結婚しました。
でも、みんなが想像するような結婚じゃなくて……。親に紹介して、プロポーズされて、みたいな段階は踏んでないんです。お互い一時の感情で盛り上がって、友達に証人欄を書いてもらって、酔っぱらった勢いで入籍しました(笑)。(以下、笠原さん)
ースピード婚したのはなぜ?

はやく結婚して、実家を出たかったんです。
両親は離婚していたので、私と父と弟の3人暮らしだったんですが、父は大手企業に勤めるエリートで、私に対して厳しく指導してくる昭和の男って感じでした。1人暮らしも許してくれなくて。

だからあまり実家にいたくなくて、フリーランスで編集の仕事をしながら、夜はバーで働いて、朝まで飲み歩いて……。夜昼逆転の生活を送っていました。実家に帰りたくなくて、自分の居場所を探して、男の人の家を転々としていました。

そんなとき、出会ったのがトモキ。
彼は父と正反対で自由な生き方をしていました。育った環境が複雑で、私と境遇が似ている気がしました。“理想の家庭像”を話して急速に惹かれあったんです。

でも当時、トモキは、夢追い人で収入がほぼなくて……。

ニートの彼とシェアハウスでセックスを

ートモキさんは働いていなかった?

トモキはシェアハウスに住んでいて、同じ会社が運営する飲食店で家賃分だけアルバイトをしていました。役者になる夢を持っていて、たまに小さな劇場でやる劇団の舞台にちょい役で出たりしていたんですが、役者としての収入はほぼ0。

付き合ってすぐ、トモキの住むシェアハウスに転がり込む形で同棲をはじめました。

ー他の住人はいなかった?

もちろん、他の住人もいたので、カップルらしいことをするときは大変でしたね(笑)。
3人部屋だったので、トモキのベッドにもぐりこんで、他の住人にバレないように、声をひそめてセックスをしていました。今思うと絶対バレてたって思うけど(笑)。

「2人の時間をつくろうよ!」って喧嘩になることも多くて、たまにラブホテルに行くこともありました。2人で住みたいって話もしたんですが、彼は家賃分だけアルバイトをしていたので、引っ越す余裕もなく……。私も貯金がなかったので、結婚した後もしばらくはシェアハウスに住んでいました。

でも、いつかトモキは変わってくれるだろうって思っていました。

「彼しかいない」共依存関係に

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ーどう変わることを期待したんですか?

「結婚したことだし、責任感が生まれて、ちゃんと働くだろう」って。でも、その期待は見事に裏切られました。「俺のことを養ってほしい。役者に専念したい」って言われて。さらに、シェアハウスが移転することになって、彼は本当にニートになってしまったんです。

生活のために、私の働くバーの店長に頼み込んで働かせてもらいました。でもトモキは、私目当てに来る男性のお客さんに対して嫉妬して発狂したりして。しまいには「辞めろ!」って言われて……。私はバーを辞めることになったんです。

ーその後は?

金銭的に余裕がなかったので、トモキの友人とシェアハウスをすることに。私たちは夜昼逆転生活を送っていて、社会から隔絶されているような感覚がありました。トモキは、元から精神的に不安定なところがあったのですが、ますますその傾向が強くなって。私も朝まで飲んで次の日は昼まで寝て、夕方起きてまた朝まで飲んで……という生活を送っていて。2人とも酒におぼれ、飲まないと眠れないようになっていったんです。

依存から抜け出すきっかけをくれたのは……

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ー依存関係になっていったんですね。

はい。私の状況を見かねた父がある日、強制的に私を実家に連れて帰ったことがありました。たぶん「娘を助けなければ」と考えたんだと思います。トモキは急な展開にびっくりしていまいしたが、私が連行された後、すぐに「早く帰ってきて」と言い始めました。結局私は実家から逃げ出して、またトモキの元に戻ったんです。

共依存関係だったんですよね……。
私を理解してくれるのは彼しかいないって思ってたから。でも、トモキの元に戻っても、お酒を飲んで、大喧嘩して、言い争いいになって、仲直りのセックスをして……みたいな日々が続きました。トモキが「別れる」と言い始めることもしばしば。そのたびに私は「別れたくない。私にはトモキしかいない」と大号泣していました。

ーその後は?

ますます夜昼逆転生活で社会から隔絶されていきました。
でも、ある日、転機となる出来事がありました。SNSで初恋の相手からのDMが来たんです。『元気?』って。

ただそれだけのことだったんですけど、ワクワクしちゃって。
久しぶりのその感覚が嬉しくて。その時、気付いたんです。私、トモキと一緒にいるようになってから、他の男性はおろか、人とほぼ関わりを持っていなかったって。

ーそれで、外に出てみようと思ったんですね。

はい。本当にずっと人と会っていなかったけれど、久しぶりに外に出てみようと思いました。

デートの日、そこまでめかしこんでなくて、ありのままの私って感じだったんですけど、口説かれて、ワンナイトしちゃったんです。そのとき、罪悪感より先に「私女性として、まだまだいけるじゃん」って思って。なんかその瞬間みるみる元気になってきて。

今までどちらかというと、トモキが「別れる!」とキレることが多かったんですが、はじめて私から離婚を切り出したんです。

トモキはめちゃくちゃ驚いていましたね。散々自分から「別れる」っていってきたくせに、いざ、私が離婚を切り出すと「俺を一人にしないでほしい」と言いだして。

何度か話合いを重ね、去年、離婚することになりました。

離婚を経て今思うこと

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ー離婚後はどうでしたか?

離婚した後、1人暮らしを始めました。最初は寂しかったけど、はじめて自分で好きに生きられるようになって楽しいです。

トモキと離婚するまでの自分って、生きる軸が男性だったんだと思います。

父親に褒められたことがなかったから、自己肯定感が低かった。
周りからどうみられているかばかりを気にして、ファッションも男性からどう見えるかという基準で選んでいました。男性に口説かれて、セックスをして、承認欲求を満たしていたんです。

トモキと共依存関係になったのも、厳格な父に対しての承認欲求を代わりに満たそうとしていたのだと思います。

今は、自分が好きな服を選ぶようになったし、離婚したことで、男性に対する幻想がなくなった(笑)。なんなら、ワンナイトしてすっきり~みたいなこともあって。

いつかはまた結婚したいと思うけど、今は経済的にも自立できているし、男性に対して執着心も幻想もない。男ウケとはほど遠い金髪にしちゃったし(笑)。

「結婚は依存心がないとできない」ってこの前友達に言われて、もしそうなら私はもう結婚できないかもって不安になることも。でも今は、男性に依存しない生き方の先に、幸せを見つけたいなと思っています。
取材・文/毒島サチコ