1980年──、いまから40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。

そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。MORE世代の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします!

結婚がきっかけで宗教団体を脱会

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ーDATAー
林岡さん(仮名)33歳 /既婚 /専業主婦
初体験:17歳 /経験人数:5人
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「親とのつながりは信仰だった」宗教二世として生きた32年間

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ーー宗教二世だった?

はい。両親がとある新興宗教の地域の幹部でした。私も生まれた時から宗教二世として32年間生きてきましたが、昨年脱会しました。(以下、林岡さん)

ーーなぜ脱会を?

2年前に結婚し、名字や住む場所が変わって「家族を新しく作れるんじゃないか」と思ったのがきっかけです。

結婚するまでは、宗教が“家族”でした。

幼いころから両親に、いいことがあれば「信仰のおかげだね」と言われ、悪いことがあれば「信仰が足りないから」と注意されてきました。

私たち家族の中心に「信仰」があって、それが家族の繋がりだったんです。

ーー両親との繋がりのために信仰していたのですか?

はい。毎月の会合や、宗教の勉強会に参加し、たくさんお祈りすれば「偉いね」と両親が褒めてくれました。

それに、宗教二世として生まれたからには、ずっと両親=宗教とともに生きていくものだと思っていました。でも、歳を重ねるにつれ、生きづらさを感じるようになっていって。

信仰によって結婚が破談になるケースもある

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ーーどんな生きづらさですか?

学生時代は自由に恋愛を楽しんでいたのですが、少しずつ結婚を意識するようになった20代中盤のころ、ネットで新興宗教によって結婚が破談になったケースが数多くあると知り、悩むようになりました。

もし、自分が信者以外の人を好きになり、結婚を考えるようになったら……。相手に私が宗教二世だとカミングアウトしたらどうなるんだろうって。

ーー今の旦那さんにはどのように打ち明けたんですか?

結婚の話が出た時に、思い切って打ち明けました。

そしたら夫は「そうなんだぁ」と一言。

夫も、夫の家族も無宗教だったのですが、宗教がなくても幸せそうに見えました。誰も私の事を否定せず、ありのままの私を愛し、受け入れてくれたんです。

一方、私の両親は、夫が実家に来るなり「幸せになれるから」と宗教の教えを書いた本や新聞などを夫にプレゼントしたり、会合に招待したりしました。夫はそれを「自分には必要ないです」ときっぱり断って

ーー林岡さんのご両親は、旦那さんとの結婚を反対しなかったんですか?

反対はしませんでしたが、夫を「信者にしたい」という気持ちは強かったと思います。
結婚後も、何度も夫を勧誘してきましたが、夫が信者になることはありませんでした。

信者と結婚する人の中には、義理の両親に嫌われないために、しぶしぶ信者になる人がいるのですが、夫は私の両親に嫌われることを恐れず、自分の意志を曲げなかった。

そんな夫の姿を見て、私は信仰心があったわけではなく、両親に嫌われたくなくて宗教活動を続けてきたんだなと気付いたんです。

ちょうどその時期、アドラーの『嫌われる勇気』を読んだことも大きかったかもしれません。

脱会することを決意

ーーその後、脱会を?

はい。まずは脱会することを旦那に相談しました。

そのときも「〇〇(林岡さん)が決めたらいいよ」と私の意志を尊重してくれて、最終的に私は自分の意志で脱会することを決意し、母親に打ち明けたんです。

母親には「脱会はしなくてもいいんじゃない?」と言われました。

脱会することで「子供が不幸になってしまう」という不安と恐怖があって、辞めさせたくなかったんじゃないかな、と思います。

それでも辞めると伝えると「ダメ!それはあなたが決めることがじゃない!」と。

何度も自分の意思を伝えたけど納得してくれなかったので、私は「私が幸せになるために宗教はいらない!私の人生は私が決めるから!」と、電話を切り、脱会届を提出しました。

それが1年前です。そして最近、ぴぃなるという名前で二世の生きづらさを発信するSNSをはじめました。

「新しい家族」と第二の人生を

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宗教から離れてみると、宗教がないと幸せになれないと思っていた自分の両親がちっちゃく思えました。私が脱会したことで両親は「自分たちの人生を否定された」と感じていると思います。

ーー林岡さんにとって、宗教とはなんでしょうか?

信仰心のない宗教二世の私にとって、宗教は「家族に愛されるためのもの」でした。

今は両親と距離を置いて、夫と穏やかに暮らしています。"新しい家族"と第二の幸せな人生を歩んでいきたいです。
取材・文/毒島サチコ