距離を置いていた村上春樹さんの作品に、向きあう時が来ました。

【門脇 麦さんインタビュー】舞台『ねじまの画像_1
普段は1冊を2時間で読んでしまうほど読書家の門脇さんが、珍しく読みきるまでに2日かかったというのが、村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』。村上作品に触れるのは、これが2作目となる。

「中学生の頃に『TVピープル』を読んで、難しいなと一度距離を置いたんです。読書が好きで村上さんを通ってない人ってたぶん少ないと思うんですけど、今回の舞台化のお話をいただいて『ここで向きあう時が来たのか!』と思いました。角度を変えることによって怖い話にも人間を肯定してくれる優しい話にもなる、“おもしろ難しい”作品でしたね」

2月から上演される舞台版は、日本でもファンの多いイスラエルのダンス演出家インバル・ピントが中心となって演出を務める。門脇さんは女子高生の笠原メイを演じる。

「インバルの作品を初めて観たのは満島ひかりさんと森山未來さんが出演したミュージカル『100万回生きたねこ』。われわれが持っている感覚とは違う“何か”で舞台をつくり上げている気がしたし、子供心あふれる方なんだろうなと感じました。お会いしてみると、1秒ごとに新しいアイデアが浮かんでくるし、それぞれの個をおもしろがってキュートに見せる方法を見つけるのがお上手な印象。一緒にお仕事をすることは私のひとつの目標でもあったので、出演が決まった時はすごくうれしかったです」

読書だけでなく料理や旅行など、多彩な趣味を持つ門脇さん。1年前にはスロベニアに旅行をし、小さな街にある友達の友達の家に宿泊。ガイドブックを一切開かない生活をするような旅をしたそう。ただし最近は、「海外より近隣で遊ぶことが増えている」とのことで。

「日帰りでもビシビシ遊ぼうと思って、毎週のように山でサルナシや桑の実を採取したり、駿河湾まで釣りにいったりしています。新幹線の始発に乗れば、6時半には静岡に着けるので一日しっかり遊べますしね。釣り好きのおじさまたちとか、お友達が一気に増えました(笑)」

植物図鑑を読んで名前を覚え始めると、都会の道端にも食べられる野草があることに気づいたという。

「タンポポでしょ、オオバコとかよもぎもそう。春の七草なんて、だいたいそこらへんにはえてますしね。野草はくせがあるので、ゆでてアクをしっかり抜いてあげるとおひたしでおいしく食べられます……って、大丈夫ですか、この話(笑)。でも、雑草とひとくくりにしている植物の名前を知るだけで生活がちょっと豊かになるし、歩くのも楽しくなると思います」


かどわき・むぎ●1992年8月10日生まれ、東京都出身。2011年にドラマで女優デビューし、映画『愛の渦』、『二重生活』、『さよならくちびる』などで好演しながら舞台にも積極的に出演している。現在、放送中の大河ドラマ『麒麟がくる』ではヒロインの駒を演じる

『ねじまき鳥クロニクル』

【門脇 麦さんインタビュー】舞台『ねじまの画像_2
岡田トオル(成河/渡辺大知)は猫を探しにいったあき地で、トオルを“ねじまき鳥さん”と呼ぶ不思議な少女・笠原メイ(門脇)と出会う。◆2/11〜3/1 東京芸術劇場プレイハウス(地方公演あり)●ホリプロチケットセンター ☎03・3490・4949
取材・原文/松山 梢 撮影/安島晋作 ヘア&メイク/藤垣結圭 スタイリスト/岡本純子 シャツ¥33000/エンフォルド