花粉を気にしている人のイラスト
花粉症に悩む人が増えるにつれ、その治療法も進化。 では今、花粉症治療はどこまで進んでいるの? 気になる治療法や対策などについて、アレルギー科医の先生にお話をうかがいました。

教えてくれたのは……佐藤留美先生

【重度の花粉症は病院治療のほうが早い?】の画像_2
内科医、呼吸器科医、感染症科医、アレルギー科医。久留米大学医学部を卒業後、大学病院、市中病院で臨床医として勤務。また、大学院で感染症の 研鑽を積み、医学博士を取得。内科、呼吸器、感染症、アレルギーなどの専門医と指導医資格を多岐にわたり取得。現在は朝倉医師会病院呼吸器内科部長として勤務する。

保険適用の【舌下免疫療法】とは?

花粉症の治療には、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどといった症状を内服や点眼薬、点鼻薬などで抑える薬物療法(対症療法)と、アレルギー症状を引き起こす物質(アレルゲン)を少量から体内に投与して体に慣らしていくアレルゲン免疫療法(減感作療法)がある。後者にあたるのが、最近話題の「舌下免疫療法」。

「免疫療法(減感作療法)のひとつに、自宅にいながら1日1回舌の下に治療薬を投与する舌下免疫療法があります。この治療法は、非常に薄いスギ花粉エキス(アレルゲンを含む治療薬)を舌の下に投与していき、その濃度をだんだん高めていくことで、最終的に通常なら発症するレベルの花粉で反応しなくなるよう体を慣らしていくものです。長期的に症状を抑えることができ、多くの人に治療効果が見られています。アレルギーの体質改善など、根本的な治療を希望する人におすすめです。またスギ花粉症またはダニアレルギー性鼻炎と診断された患者さんに限っては、保険適応で治療を受けることが可能です」(佐藤先生)

注射で投与する【ゾレア®皮下注射】って?

内服、点眼薬、点鼻薬など従来の薬物療法では十分な効果が得られずに、日常生活や仕事に支障をきたすような重症の人は注射で抗体を投与するという手も。

「重症のスギ花粉症の方を対象とする、新たな治療法として注目されているのが『ゾレア®皮下注射』です。『ゾレア®』はアレルギーの原因となるIgEという物質に対する抗体を人工的に作って薬にしたもの。アレルギー反応=炎症を、その元から抑えることでアレルギー反応をブロックします。また、これまでも気管支ぜんそくや慢性じんましんの治療として保険適用されてきた薬です。2019年には、重症の花粉症も治療対象として保険適用になりました。けれども、まだまだ高額な薬剤であるのが現状です」(佐藤先生)

私の辛い花粉症……病院治療か、市販薬かどっちがいい?

「花粉症は、前述の舌下免疫療法や注射以外にも内服や点鼻薬、点眼薬などで対処することができます。点鼻薬もケミカルメディエーター遊離抑制点鼻薬、抗ヒスタミン薬点鼻薬、ステロイド点鼻薬、血管収縮剤点鼻薬と種類はさまざまですが、いずれも花粉症の症状を抑える効果はあります。基本的には注射以外であれば市販されているものが多いので、症状や生活スタイルに合わせて飲み薬、点鼻薬、点眼薬を上手に使い分けたり、併用するとよいでしょう。それでも症状が続いたり、なかなか改善しない場合は、医療機関を受診して医師の診察を受けられることをおすすめします。医療機関であれば、よりその人自身に合った治療の選択肢が広がりますよ」(佐藤先生)

本格的な花粉シーズン、即できる日常生活での予防ポイントは?

「花粉の飛散状況をチェックすると花粉対策の心構えができます。晴れて気温が高く、空気が乾燥して風が強い日は特に注意が必要です。飛散量が多い時は、できるだけ屋内で過ごすようにしましょう。また外出から帰宅したら、玄関先でコートや帽子など身につけているものをはずし花粉を払って、できるだけ家の中に花粉を持ち込まないように。花粉は目、鼻、口から取り込まないようにすることが大切です。外出する際はマスクやメガネもしくはゴーグルなどの着用を。さらに不規則な生活やストレスで花粉症の症状が悪化しやすくなります。規則正しい生活を心がけ、食事の栄養バランスを考慮し、適宜ストレス発散を心がけてください」(佐藤先生)

早めの対策や予防で、少しでも快適に

花粉症の人は誰しもが憂うつになるこれからの季節。早めの対策と予防でストレスを少しでも減らせるよう、自分の症状に合わせた治療法や対策を考えてみては?