It girlの「私の履歴書」

選んだ生き方にこそ、センスが表れる

主体的にキャリアを選択し、自分らしく働いている女性たちを取材するこの連載。今回は、学生時代から「普通」とは異なる道を選び、ヘルスケア×AIのかけあわせでストレスを可視化するシステムを開発する起業家・島藤さんにお話をうかがいました。

島藤安奈(しまふじ あんな)さん

アスリートのメンタルトレーニングにも使われる視線計測型VRストレスチェックシステムを開発する起業家

『株式会社ニューラルポート』CEO 島藤安奈さん

Job :
『株式会社ニューラルポート』CEO

Profile :
1992年生まれ、兵庫県出身。2020年に会社を設立し代表取締役に。ストレスの度合いを視線の動き方で計測する視線計測型VRストレスチェックシステム『ZEN EYE PRO』の開発に取り組む

History

2014
編入試験の結果、大学3年次に同志社大学から大阪大学人間科学部に編入。2016年に同大学院人間科学研究科へ進む

2018
発達特性のある小・中学生を対象にビジネス教育をする活動「レモネードキッズ」をスタート

2020
『株式会社ニューラルポート』を設立。当初は、ビジネス教育の事業化を目指す

2022
資金調達を実現し、AIでストレス度合いを計測するシステムの開発など、事業を本格化

島藤安奈さんの選択

“やりたいことがあるならとにかく動くと経験がつながる時がくる”

島藤安奈さん

島藤安奈さん「幼少期にガールスカウトを経験し、さまざまな人と交流する中で発達特性のある子どもたちとも活動をともにしました。その頃から漠然と発達分野を学びたいと考えていましたが、大学進学時はそういった学部のある大学には進めず……。諦めきれず大学2年の時に人間科学部のある大阪大学に目標を定め、3年次編入を決意しました。試験に向けて勉強漬けだった時期に、発達と視線の関係性が記された書籍『読む目・読まれる目 視線理解の進化と発達の心理学』に出合い、事業にするならコレだとピンときたことが、今のビジネスにつながるきっかけになりました」

大学院進学後は、発達分野を学びながら、アウトリーチ活動として小学生へのビジネス教育プロジェクト「レモネードキッズ」を立ち上げ。その後休学し、大阪大学の別の研究室でロボティクスを学んだり、国立研究所で研究職を経験したりも。

島藤安奈さん「書籍で興味を持った、メンタルと視線の関係をさらに深掘りしたいと思い、いろいろな研究室を渡り歩きながら学びました。思いついたことをとにかく行動に移し、さまざまな分野を横断的に学んだことが事業アイデアに間違いなく生かされています」

会社のスタッフにはこの時に出会った研究者も多く在籍しているという。

島藤安奈さん「ビジネスに対する考え方が未熟なまま、『やりたい』という気持ちだけで会社を立ち上げた私を、一緒に働くスタッフや事業内容に共感してくださった投資家の方々が助けてくれ、昨年ついに事業を本格化させることができました。私たちが開発したシステムでは、視線の動きを計測できるVR機器を使い、これまで数値化が難しかったストレス指数を可視化。収集データを解析することでアスリートのメンタルチェックやイップス治療に取り組んでいます。現在はアスリートの皆さんに導入・協力していただきながら、さらなる研究開発を進めていますが、いずれはシステムの利用者をもっと広げるのが理想。私たちみんながネガティブな思考をポジティブに転換できたら、社会の幸福レベルを底上げできるはずだと信じているんです。多くの人がストレスやメンタル不調を解消できるようなシステムをつくるのが目標です」

“どん底の時こそ、すぐできることを地道にやるしかない”

島藤安奈さん、仕事中の様子

「自分が研究していた『発達分野』と『視線計測』をかけあわせた事業をしたいと試行錯誤する中で、VR機器を使って視線の動きを計測し、収集データを解析してメンタルチェックに生かせないかと思いつきました。今では野球選手をはじめアスリートの方々にシステムを導入していただき、ストレス管理やパフォーマンスの最大化に役立てていただいています。一日中、ひたすらデータ解析に取り組む日もありますが、会社の代表として新たな事業アイデアを練ったり、研究実績を伝える学会で発表をしたり、投資家さんのもとを訪れたりするのも業務」(島藤さん、以下同)

島藤安奈さん

「システムの開発にはやはり資金が必要で、協力していただける企業や投資家を探すため、プレゼンにうかがうのも仕事です。会社設立当初は調達に苦戦し、資金が底を尽きそうになりましたが、そんな時こそ一件でも多くの営業先に足を運び丁寧に事業内容を説明することを心がけました。焦りや不安に支配される時は、頭を切り替えてできることをひとつずつクリアしていくと意外と前進していることがあります。私にも気持ちの切替えで行動が変わった経験があるので、自分の事業が世の中を変えると自信を持てるようになりました」

島藤安奈さん、仕事中の様子

Anna's OSHIGOTO STYLE

FASHION

島藤安奈さんのファッション

「普段はベーシックだけど味のあるヴィンテージを着ることが多いです。野球のユニフォーム風トップスは、会社のスタッフウエア。野球選手の方々に、私たちのシステムを利用していただいているのもあり、イベントなどで着用していると会話の糸口になります」

MAKE-UP

島藤安奈さんのメイク

「アイブロウアートとまつエクのおかげで、ポイントメイクはリップぐらい。オンライン会議ではそれだけで“ちゃんとしてる感”が出せるので助かっています。服がシンプルな分、ヘアは個性が出せるカラーに」

BAG

島藤安奈さんのバッグの中身

「PCとストレス検知に使うVR機器を持ち歩くため、大きめのトートバッグを愛用。営業で一日中外回りをする日もあるので、ほかの荷物は極力少なめに。オンライン打ち合わせ用のイヤホンはマストです」

Private

島藤安奈さんのプライベート

「『ブロンディ』など80年代のロックが大好きで、当時の音楽に合わせてドラムやギターを演奏するのがリラックスタイム」

●これまで配信した「It Girlの『私の履歴書』」はこちらから

撮影/花村克彦 ヘア&メイク/島田文子 取材・原文/宮田彩加 撮影協力/AWS Startup Loft Tokyo ※MORE2023年9・10月合併号掲載