青春映画、なのにミステリー! 映画『共犯』
“高校生が主人公の青春映画”から連想するのは、初恋や友情、部活、夢……などでしょうか。もちろんそういう題材で描かれることも多いですが、キラキラと光輝く面があれば、孤独や心の痛み、絶望といった光の裏に存在する影もあるわけで──。今回ピックアップした『共犯』は影に焦点を当て、その中に見え隠れする一筋の光を映し出していく台湾の青春映画です。
物語は高校3年生のシャー(ヤオ・アイニン)という少女の謎の死から始まります。通学途中でシャーが変死しているのを発見した3人の男子生徒たち。同じ高校に通いながらもそれまで口をきいたこともなかった3人は、奇妙な出会いをきっかけに「シャーはどんな子だったのか? なぜあんな形で死を遂げたのか?」と、彼女と死の真相について調べることに。
いじめられっ子だったホアン(ウー・チエンホー)、問題児として一目置かれていたイエ(チェン・カイユアン)、優等生だけど気弱なリン(トン・ユィカ)の間にはいつしか友情が芽生えたかのように見えますが、その矢先、第二の事件が起き、3人の関係は崩れてしまいます。そして、すべての真相が明らかに……。
「嘘もみんなが信じれば本当になる」というのはホアンのセリフ。この映画の面白さは、まさにこのセリフにあります。学校内での噂やネットの書き込みが真実とは限らない、真実がねじ曲げられていることだってある、大多数の人が信じてしまっていることが事実になってしまう恐さ。シャーをとりまく生徒たちの身に起きていることの、何が本当なのか何が嘘なのかを解こうとする姿に引き込まれ、自分だったらどうするだろうと考えるからまた引き込まれる。気分爽快な後味では決してないですが、確実に琴線に触れ、記憶に刻まれる。忘れられない映画になるはずです。
(文/新谷里映)
●7/25〜新宿武蔵野館ほか
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