気がつけば、映画のはなし。今月は『彼は秘密の女ともだち』
『彼は秘密の女ともだち』
ごく普通に生きてきたクレール(アナイス・ドゥムースティエ)はある日、亡き親友の夫ダヴィッド(ロマン・デュリス)の秘密を知る。男性の心を持ち女性の服を着るダヴィッドに刺激され彼女自身の人生も一変し……。● 8 月〜シネスイッチ銀座ほか
ポップで可愛さのある オゾン作品って新鮮!(杏)
まさに“女”の映画! 女ともだちと語りたい(游)
杏)今月はフランソワ・オゾン監督の『彼は秘密の女ともだち』です。私、『ふたりの5つの分かれ路』とか『17歳』とか彼の作品が好きで、この最新作も気になってたんだよね。 游)私は『スイミング・プール』を観たことがあって“難しい”って印象だったけど、この作品はそんなことなかったなぁ。 杏)監督らしい人間の複雑な心理描写は健在だけど、起こる事件やストーリーはわかりやすいし映像はポップだし、“オゾン入門”としてはおすすめかも! 游)物語の始まりは、主人公のクレールが亡くなった親友の夫ダヴィッドから「女性の服を着たい」と打ち明けられること。女装した彼にヴィルジニアという名前をつけて、“女ともだち”として仲よくなっていくふたり、すっごく楽しそう! 杏)ショッピングのシーンね。ヴィルジニアに触発されてルージュをつけたりワンピースを買ったり、地味だったクレールも一緒にキラキラしていくのが素敵だったな。でも親密になるにつれ、彼への気持ちが友情なのか愛情なのかわからなくなってきて……。その心の動きがミステリアスに描かれるから、“え? 何? どういうこと?”って引き込まれちゃう。 游)私はね、クレールがダヴィッド(=ヴィルジニア)に惹かれた理由は“共感”なのかなと思った。感覚が近くて、なんでも一緒にできるのが心地いい。 杏)たしかに! 彼といるより女子会が楽しいっていう今の私たち世代にも似てるかもね(笑)。 游)男とか女とかいろいろこだわる世の中だけど、本当はそんなのどっちでもいいのかもね。私は最後まで観て、これでいいんだって素直に思えたから。 杏)ね、幸せであればね。私もあのラストを観てそう思った!
--------------------- MORE2015年9月号・さらに詳しい情報は雑誌MOREをチェック! 取材・文/新谷里映 撮影/森脇裕介 イラスト/STOMACHACHE. ---------------------