あなたは心から誓えますか? 窪 美澄さんの『やめるときも、すこやかなるときも』 【今月のイチオシ★BOOK】
【今月のイチオシ★BOOK】あなたは心から誓えますか? 窪 美澄さんの『やめるときも、すこやかなるときも』
結婚式でよく聞く誓いの言葉を冠した長編小説。人生の苦楽をともにすることが結婚なのだと頭ではわかっているけれど、幸せの絶頂時に“病める時”を想像する人は、そう多くない。生まれて初めて結婚しようと思った人を失ってから、心が欠けたままの家具職人・壱晴。ゆがんだ実家に縛られ、初めての恋人にも触れてもらえず、心を抱えきれなくなっている桜子。そんな32歳同士が出会い、互いの心に触れていく道のりが描かれる。それはまるで壱晴が扱う木材のように、思わぬ形でたわんだり、ひびが入ったりしてしまう、むきだしの恋愛。しかし、作中の「傷があっても木は成長する」という言葉どおり、ふたりは一歩一歩、“病める時”に立ち向かう力を蓄えていく。それまで異なる人生を歩んできた人間同士が一緒になるということ、その尊さと温かさが優しく染みわたる。(集英社 ¥1600)
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