気がつけば、映画のはなし。今月は『ヴィンセントが教えてくれたこと』

酒とギャンブルが生きがいの偏屈老人ヴィンセント（ビル・マーレイ）の隣に12歳のオリバー（ジェイデン・リーベラー）が母親と一緒に引っ越してきた。出会いは最悪だったがいつしかふたりの間には友情が生まれ……。● ９／4〜全国ロードショー

杏）今月は『ヴィンセントが教えてくれたこと』。この作品ね、最初に公開された時は全米でたった４館だったのに、クチコミで評判が広がって４週間後には２５００館になったんだって。 游）すごい！　でもわかるなぁ、それ。すごくおもしろかった。 杏）ね。すっごくいい映画。安心感を持って観られるのに飽きないし、感動しちゃう。ヴィンセントとオリバーが仲よくなっていく様子が心地よくて。 游）ふたりの感じ、可愛くてキュンキュンしたな♡　特に好きだったのは、同級生にいじめられたオリバーにヴィンセントがケンカのしかたを教えるシーン。 杏）ヴィンセントってけっこうなダメ親父なのに、周りにはいつも人がいるじゃない？　そんな彼の本当の優しさを、オリバーは出会った瞬間に見抜いちゃうんだよね。小さい頃のそういう出会いってうらやましい。 游）私も子どもの頃は、子ども扱いしないでいてくれる人が好きだったな。ぶっきらぼうな口調の親戚のおじさんとか（笑）。オリバーは学校で「自分の身近な〝聖人〟を探す」という課題を出されて、それが物語のラストへつながるわけだけど、杏は身近でヴィンセントみたいな人を探すとしたら誰かいる？ 杏）蜷川（幸雄）さんかなぁ。厳しくて、でもユーモアがあってシャイで。初めて会った15歳の頃、蜷川さんの言うことを理解しようと、追いつこうと必死だったこと、今でも覚えてる。オリバーも、ヴィンセントが対等に接してくれることがうれしかったのかもね。 游）そうだね。最後のスピーチのシーン、いちばん泣いたもん。 杏）大人になった今観ると、懐かしいようなほっとするような、そんな気持ちにならない？ 游）うん。ほっこりするよね♡

--------------------- MORE2015年10月号・さらに詳しい情報は雑誌MOREをチェック！ 取材・文／新谷里映 撮影／森脇裕介 イラスト／STOMACHACHE. ---------------------