人生は何度でも輝く。映画『Dearダニー 君へのうた』
もしもあの時、違う選択をしていたらどんな未来が待っていただろう? 人生の途中でつまづいたり、挫折したりしたときに「もしも、あの時……」と別の未来について考えること、あると思います。名優アル・パチーノ主演の『Dearダニー 君へのうた』は、そんな“もしも”をヒントにした感動作。しかも、伝説のスーパースター、ジョン・レノンが何の面識もない新人ミュージシャンに宛てて書いた直筆の手紙が、40数年後に本人に届いた──という実話がもとになっています。
主人公ダニー(アル・パチーノ)はスター歌手として輝かしい経歴はあるものの、もう何年も新曲を書くことはなく、往年のヒット曲を歌う日々を送っていました。派手な暮らしを続けていても何も生みだせない自分にどこか空しさを感じていた彼のもとに、ある日、ジョン・レノンからの手紙が43年遅れで届きます。そこに綴られた言葉に心を動かされたダニー。もしも43年前にこの手紙を受け取っていたら……という想いはもちろん、ミュージシャンとして駆け出しだった頃の夢や情熱を思い出し、空虚な“今”から抜け出すために家族と愛と音楽と向きあう旅に出ることに……。
若者たちが将来に悩んだり恋に破れたりしながら頑張る青春映画から「やる気」や「勇気」といった刺激をもらうことは多いですが、何かに向かって頑張るのは若者だけじゃない。むしろ社会人になってからの方が夢と現実の違いに落ち込んだり、挫折を経験したり、頑張りたいけど頑張れない状況に直面するものです。この映画は、そんな社会に出た大人に向けたセカンドチャンスの物語。気づいたときがチャンスであって、人生に遅すぎることはないと背中を押してくれます。
(文/新谷里映)
●9/5〜角川シネマ有楽町ほか
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