クズに囲まれた悪女スケーターに、愛の暴走が止まらない43歳独身女の物語。【オススメ☆CINEMA】
公開中&近日公開予定の話題作から、キーワードに沿った2本のイチ押しと、おすすめ映画をご紹介します。
【今月のキーワード】痛々しくカッコいい暴走をする女たち!
羽生結弦選手などの活躍により、日本でも圧倒的な人気を誇るフィギュアスケート。ところが今から24年前、アメリカにとんでもない悪女スケーターがいたことをご存じだろうか。“ナンシー・ケリガン襲撃事件”の容疑者、トーニャ・ハーディングだ。伊藤みどりに続く史上2人目のトリプルアクセル成功者ながら、1994年のリレハンメルオリンピック出場権を得るために、ライバルのケリガン選手襲撃を元夫などに命じたとして疑惑の目を向けられた。本作は、23歳にして世界中から憎まれるヒールになった彼女の、クレイジーすぎる半生に迫った傑作だ。低所得で学のない母からは常に暴言を浴びせられ(演じたアリソン・ジャネイはアカデミー助演女優賞を受賞!)、別れてはヨリを戻す腐れ縁の夫からは暴力を振るわれる日々。とにかくトーニャを取り巻く登場人物がポンコツすぎて、哀れみを通り越して笑ってしまうほど。クズに囲まれ、ボロボロに傷つきながらも、持ち前の負けん気で世界に立ち向かったトーニャの姿が、ラストには抜群にカッコよく見えてくるから不思議だ。
こういう痛々しい女の物語を描く時、演じる女優がいかに醜くなれるかも重要なポイント。トーニャ役のマーゴット・ロビーも素晴らしいが、『オー・ルーシー!』の寺島しのぶも負けてはいない。ジョシュ・ハートネット演じる英会話講師に恋をし、アメリカまで追いかけ、タトゥまで入れてしまう愛の暴走ぶりは観ていてつらいが、同時に神々しささえ感じてしまう。ぶざまでも笑われても、欲望に忠実に突き進む女は、誰よりもピュアで無敵なのだ!
【イチ押しシネマ1】『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』
貧しい家庭で育ったトーニャ・ハーディング(マーゴット・ロビー)は、幼い頃からスケートの才能を発揮し、2 度の五輪代表選手に選ばれる。ところが元夫の友人がトーニャのライバル選手を襲撃したことで、順調だったスケート人生は一変する。● 5 / 4 〜全国公開。 ©2017 AI Film Entertainment LLC. All Rights Reserved.
【イチ押しシネマ2】『オー・ルーシー!』
43歳独身の節子(寺島しのぶ)はある日、英会話教室で金髪のウイッグと“ルーシー”という名前を与えられる。すると眠っていた感情が呼び起こされ、講師のジョンに恋をしてしまう。● 4 /28〜ユーロスペースほかにて公開。 ©Oh Lucy,LLC
【まだまだあります、おすすめシネマ!】
--------------------- MORE2018年6月号・さらに詳しい情報は雑誌MOREをチェック! 文/松山 梢 ---------------------