多部未華子、今月は『あしたの朝子』を読了!
昭和の人はたくましい! すがすがしく明るい女の物語
平成元年生まれの私にとって、昭和は“歴史”。それだけにこの時代を力強く生きた女性の物語は初めて知ることだらけ。新鮮な気持ちで読みました! 昭和20年代後半の千葉県。ヒロインの朝子は声楽家への夢破れ、片想いも実らず、地元で悶悶としていました。そんな中で彼女が新たな希望を見出したのは、なんと声優の仕事。朝子は両親が決めたお見合いを無視し、東京へと旅立ちます――。 「女は24歳で嫁いき遅れ」、「男の浮気は見逃される」など、物語に出てくる昭和の恋愛・結婚観は、今と違いすぎて驚きもいっぱい。朝子がいやがった「お見合い」にも、私は憧れが。親公認の相手と覚悟を決めて会うという、制約の多い環境にロマンを感じて……。実際は逃げたくなるのかもしれませんが(笑)。 朝子の結婚生活も読み応えがありました。夫の父親と同居し、家業を盛り立て、子供を育てる。マイペースな私には、こなせそうにありませんが、にぎやかな毎日がうらやましい。朝子が母親だと頼もしいでしょうね。どんな事件も軽快に受け止め、迷わない姿にすがすがしさを覚えました。そして着物や食べ物の描写から、古きよき昭和の空気感を想像する楽しさも。読後感も爽やかで気持ちよく、やっぱり読書はいいなと思えた一冊です。
『あしたの朝子』山口恵以子
--------------------- MORE2015年12月号・さらに詳しい情報は雑誌MOREをチェック! 取材・文/石井絵里 撮影/露木聡子 ヘア&メイク/赤松絵利(esper.) スタイリスト/轟木節子 ---------------------