過去の恋、未来の幸せ。映画『カミーユ、恋はふたたび』
特に恋愛において、目の前に悲しい現実を突きつけられた時、どうしてこんなことになってしまったんだろう? やり直せるものならやり直したい、時間を戻せるものなら戻して未来を変えたい、“あの時こうしていれば……”ということを、誰だって一度や二度、考えたことがあると思います。映画でも恋愛とタイムトラベルを絡めた作品、たとえば『天使のくれた時間』『バタフライ・エフェクト』『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』などで、運命は変えられるのか、愛情は変わらないのかが描かれてきました。
フランス映画『カミーユ、恋はふたたび』も恋愛と時間をテーマにした、主人公が人生を見つめ直す物語です。パリで暮らすカミーユ(ノエミ・ルヴォウスキー)。ある日、25年も連れ添った夫が20才の若い彼女を作り離婚を切り出してきます。失意のカミーユは昔の親友たちと会って、酔っぱらって、大はしゃぎをして気を失って──目が覚めると学生時代にタイムスリップしていた! ……のですが、この映画が面白いのは、タイムスリップした先の過去で、見た目は40才のままなのに周りからは16才に見えていること。彼女はもう一度青春を楽しみますが、当然そこには未来の夫、未来で自分に離婚を言い渡す夫とも出会うわけです。そして、新しい出会いもあり……。
せっかく過去に戻ったのだから悲しい未来は変えたい、でもそれまでの幸せな過去も失ってしまうとしたら人はどんな選択をするのでしょうか。問題にぶつかったときに、変えられるものは何なのかを考えること、変えられないものもあると受け入れること──過去への旅を経験したカミーユがくだす決断は、ものすごく大切なことを私たちに教えてくれます。
(文/新谷里映)
●10/31〜新宿シネマカリテほか
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