終点は、新しい始発点。映画『起終点駅 ターミナル』
一日が始まって終わり、終わってまた始まるように、人生にも始まりと終わりがあって、その繰り返しのなかで人は生きている──『起終点駅 ターミナル』は、主人公の完治(佐藤浩市)の人生を通して、さまざまな始まりと終わりについて考えさせられる映画です。
舞台は北海道の釧路。将来を約束された優秀な弁護士でありながらも今は国選弁護人としてひとり静かに暮らす完治。自分のせいで愛する女性、冴子(尾野真千子)が命を絶ったのだと、ずっと自身を裁くかのような生活を送っている男です。そんな彼のもとに、弁護を担当した若い女性、敦子(本田翼)が訪ねてきます。最初は「個人の依頼は受けない」と断るものの、彼女の何かが完治の心を動かしていく……。この物語は、悲しい過去によって時が止まったままの男が孤独に生きていた女と出会うことで、ふたたび未来に向けて歩き出すお話。
若者が「観たい!」と飛びつくようなジャンルの映画ではないかもしれませんが、社会人として働き、恋を経験し、人生って楽しいだけじゃない……ということを知っている大人だからこそ感じとれるものもある。この映画はまさに大人のための日本映画。登場人物たちが交わすセリフは決して多くはありませんが、だからこそ、完治を演じる佐藤浩市さんの“表現力がすごい!”と感じるはずですし、静かだけれどその奥には熱いものが流れている。観終わったあとに「いい日本映画を観た」と思える。この映画の余韻は、きっと一生忘れられない余韻になるはずです。
(文/新谷里映)
●11/7〜全国ロードショー
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