人生の最期について、考える。映画『ハッピーエンドの選び方』
今回ピックアップした『ハッピーエンドの選び方』は、世界三大映画祭のひとつ「ヴェネチア国際映画祭」で観客賞を受賞したイスラエル映画です。
人は人生においてどんな仕事に就くのかどんな人と結婚するのか、日々においてどんな洋服を買うのか何を食べるのか──選択の連続の毎日を生きています。ですが死期が迫ったとき、自分で“いつ死ぬのか”を決めることは(多くの国で)できないのが現状。この映画は、自分らしい最期を選ぶ自由について問いかけています。
物語の中心にいるのは発明が趣味のヨヘスケル(ゼーブ・リバシュ)。長年連れ添った妻レバーナ(レバーナ・フィンケルシュタイン)と一緒に老人ホームで暮らしていますが、ある日、延命治療に苦しむ友人を助けたい一心で秘密の発明品を作ってしまいます。それは自分でスイッチを押して苦しまずに最期を迎える装置でした。本当に使うべきなのかどうなのか──みんなで話し合う姿はとてもコミカルで面白く、でも根底にあるのは「尊厳死と安楽死の違いは何か?」という大きなテーマです。
人生を謳歌中の20〜30代にとって人生の最期を考えるのはまだ早くても、愛する人たちとの別れは必ずやってきます。この映画は祖父母や両親とどう向きあって生きていくのかはもちろん、自分はどんな人生を送りたいのかも考えさせてくれます。また、こんなおじいちゃんおばあちゃんになりたい! という理想の夫婦像も描かれている、とても愛に満ちた映画です。
(文/新谷里映)
●11/28〜シネスイッチ銀座ほか
ⓒ2014 PIE FILMS/2-TEAM PRODUCTIONS/PALLAS FILM/TWENTY TWENTY VISION.