気がつけば、映画のはなし。今月は『キャロル』
『キャロル』
『太陽がいっぱい』で知られる人気作家パトリシア・ハイスミスのベストセラー小説の映画化。1952年のニューヨーク。自分に正直に生きようとしたキャロルとテレーズ、ふたりの女性の運命の出会いと恋愛を美しく描く。● 2/11〜全国ロードショー
相手の世界に飛び込む強さがうらやましい!(杏)
女性同士の物語だけどすごくリアルな恋愛映画(游)
杏)この連載も、今回が最終回。 游)杏といろいろなことを語れるこの時間が毎月の楽しみだったから、寂しくなるね……。 杏)うん。で、最後の作品はふたり揃って即決した『キャロル』。気が合ったね(笑)。ね、あのラストさ、ハッピーエンド? バッドエンド? どっちだと思った? 監督はハッピーエンドだって言ってるんだけど……。 游)私はちょっと、悪いほうに考えちゃったな……。 杏)私も。ケイト・ブランシェット演じるキャロルとルーニー・マーラ演じるテレーズ。女性同士のラブストーリーなんだけど、終始、なんていうか……不穏な空気で、サスペンスみたい。 游)出会いのシーンからドキドキだよね。百貨店の客と店員として、たった一瞬、視線が合うだけで惹かれあっちゃう。 杏)〝魅惑的〟ってこういうことなんだなって思ったんだけど、キャロルはふっと動くだけで周りにすごい影響を与えてしまう人。テレーズがどんどんのめり込んでいくの、すごくわかるんだけど、でも大変な人を好きになったなぁって(苦笑)。 游)キャロルのような人に出会って好きになっても、私はテレーズみたいに飛び込めないかも。 杏)私も。だからさ、テレーズは強いよね。自分の生活をなげうってでも未知なる世界に飛び込むって、なかなかできない。 游)うん。ひと目惚れして惹かれあって、でもオールオッケーなわけじゃなくて障害や問題があって……。そう考えると、〝同性愛〟ってことじゃなくて、すごくリアルな恋愛映画だよね。 杏)たしかに。「いいな、こういう恋って♡」じゃなくて「大変そうだな」って思っちゃったところに自分の年を感じる(笑)。 游)ちょっと! 最終回なのにそんな締め方?(笑)。
--------------------- MORE2016年3月号・さらに詳しい情報は雑誌MOREをチェック! 取材・文/新谷里映 撮影/森脇裕介 イラスト/STOMACHACHE. ---------------------