話題のステージの中から、キーワードに沿ったイチ押し舞台、そして2本のおすすめをご紹介します。

【今月のキーワード】ハマる、クセになる、赤堀ワールド

田中哲司、大森南朋、赤堀雅秋の3人で5年以上前に結成した演劇ユニットが、約4年ぶりに復活。かねて親交を深めてきた彼らが、しがらみにとらわれず、俳優たちが真摯にものづくりができる場所を求めて再び一致団結した。キャスティングも俳優同士で声をかけあうスタイルで、タイトルも内容も決まっていない段階だったにもかかわらず、大森南朋からのメールで長澤まさみがヒロイン役を快諾。ほかにもでんでん、江口のりこ、石橋静河ら実力派キャストが集結した。作・演出を担当するのは赤堀雅秋。『神の子』というタイトルは“ヤクザだろうが、子供だろうが、警察官だろうが、老人だろうが、女子高生だろうが、みな等しく神の子である”という意味からつけたとのこと。赤堀作品と言えば、市井の人々の日常を緻密に切り取り、人間の強さと鈍感さ、そして愛らしさとユーモアを、実在感を得られる絶妙な温度で描き、観客を登場人物たちと同じ空間へと誘う人気劇作家。今回も詳しいストーリーはまだ謎に包まれているが、一度観たら、きっと赤堀作品の虜になることは間違いない。

近年、映画監督としても高い評価を受けている赤堀は、劇団「THE SHAMPOO HAT」で上演した舞台を原作にした『その夜の侍』で2012年に監督デビュー。妻をひき逃げされた男に堺雅人、加害者の男に山田孝之を据えて骨太な作品を生み出した。復讐することを生きがいにする男と、暴力を繰り返すクズ男の日常はどこまでも不快なのに、ふたりの男が交わるラストには、ほんのひとすじの希望を盛り込む……。赤堀ワールドの神髄、ここにあり!
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【今月のイチ押し☆ステージ】『コムレイドプロデュース 神の子』
ヒロインを演じる長澤まさみは過去2本、赤堀作品を観劇しており「すごく好きな空気感の漂う作品で、赤堀さんのつくるものが好きなんだろうなあと漠然と感じていた」と言う。ダイナミックで華やかな芝居を得意とする長澤が、赤堀作品×本多劇場でどんな演技を見せるのかに期待。◆12/15〜30 本多劇場(地方公演あり) ●プラグマックス&エンタテインメント ☎03・6276・8443
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『その夜の侍』
ひき逃げで妻を亡くした男(堺)と、その加害者(山田)との物語。Blu-ray&DVD発売中。
Blu-ray¥2500・DVD¥1900(発売・販売元:キングレコード)
ⓒ2012「その夜の侍」製作委員会

オススメステージは、『FORTUNE』と『KERA CROSS「グッドバイ」』。

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『FORTUNE』
イギリス演劇界を牽引するサイモン・スティーヴンスが、ゲーテの『ファウスト』を現代のロンドンを舞台に置き換えた大胆な新作を世界初上演。森田剛が悪魔と契約を結んで闇におちていく映画監督のフォーチュンを、吉岡里帆が素直なヒロインのマギーを演じる。◆1/13〜2/2 東京芸術劇場プレイハウス(地方公演あり) ●パルコステージ ☎03・3477・5858
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『KERA CROSS「グッドバイ」』
太宰治の未完の遺作『グッド・バイ』をベースに、ケラリーノ・サンドロヴィッチが2015年に新たに生み出した傑作ラブコメが、生瀬勝久の演出によって甦る。キャストには生瀬をはじめ、藤木直人、ソニン、真飛聖ら多彩な俳優陣が顔を揃える。◆1/11〜13 かめありリリオホール・2/4〜16 シアタークリエ(地方公演あり) ●東宝テレザーブ ☎03・3201・7777
原文/松山 梢