ウワサの原作を実写化した傑作ドラマ【映画ライター松山 梢さんのAmazon Prime Videoガイド・2】
Amazonプライムビデオには小説や自叙伝を映画化したドラマが盛りだくさん。実話ものや有名小説はもちろん、ちょっと変わったアブノーマルな世界を描く問題作を扱った、攻めの作品まで、そのジャンルも幅広い! お気に入りがきっと見つかるはずです。
舞台はハリウッド。プロデューサーの栄光と挫折を描く『ラスト・タイクーン』
映画化もされている『華麗なるギャッツビー』で知られるF・スコット・フィッツジェラルドの未完の遺作を、友人でもあった作家のエドマンド・ウィルソンが編集して完成させた『ラスト・タイクーン』。大恐慌やナチス政権の影響が色濃くなっていく1930年代のハリウッドを舞台に、天才映画プロデューサーであるモンロー・スターの栄光と挫折を描いたドラマです。とにかく、映画製作並みにお金をかけたであろう、美術や映像の美しさにうっとり。ドラマ『ホワイトカラー』のマット・ボマーや『白雪姫と鏡の女王』、『あと1センチの恋』などで知られるリリー・コリンズら美男美女たちが、クラシカルな衣装に身を包み、1930年代のハリウッドのゴージャスな雰囲気を蘇らせる、まさに眼福ドラマです。
70年代、働く女性の実話をドラマ化!『グッド・ガールズ!NY女子のキャリア革命』
情報誌で働きながらも原稿を書くことを認められず、調査員として男性記者のサポート業務に甘んじていた女性たちを主人公にしたお仕事ドラマ。1970年にニューズウィーク誌で働く女性46人が、男女平等を求めて闘った実話が題材に。後に映画監督や脚本家として大活躍した故ノーラ・エフロン(『めぐり逢えたら』、『ユー・ガット・メール』、『ジュリー&ジュリア』など)も登場人物の一人として描かれるなど、これが実話だと思うと胸がアツくなる! ちなみにノーラ役を演じたのは、ハリウッドが誇る名優メリル・ストリープの次女のグレイス・ガマー。聡明さが際立ってます!
ケヴィン・ベーコン主演のコメディ『アイ・ラブ・ディック』
原作は、“前世紀に書かれた中で最も重要な男と女の本”(エミリー・グールド/ガーディアン紙)とも評される、クリス・クラウスによるカルト小説。舞台となるのは、テキサス州マーファにある、文化人たちのコミュニティ。夫のシルヴェールと共にマーファを訪れた映画監督のクリスは、大学教授のディックと出会い、強烈に惹かれていきます。ディックに対するエロティックな妄想がスパークすることで、クリスの夫婦関係もコミュニティも徐々に破綻していくのですが、とにかくクリスの変態的な妄想を体現するディック役のケヴィン・ベーコンの色気がすごい。いつの間にかカルト的な物語にずぶずぶと溺れていき、枯れた渋い中年イケメンの破壊力にアラサー女子もノックアウトさせられること間違いなしです。
オーケストラを身近に感じるようになる⁉『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』
オーボエ奏者のブレア・ディンダルが、2005年に発表したスキャンダラスな自伝的小説「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル〜セックス、ドラッグ、クラシック〜」を基にした音楽ドラマ。主人公の若くカリスマ的な指揮者のロドリゴは、実在の著名な指揮者グスターボ・ドゥダメルをモデルにしていて、演じたガエル・ガルシア・ベルナルがゴールデン・グローブ賞を受賞するなど高い評価を受けています。原作は暴露本的な内容であることから、ニューヨーク交響楽団に所属する音楽家たちの人間関係を赤裸々なに描いているのですが、何と言っても見どころは見事な演奏シーン。実際に出演者が楽器を演奏して臨むほどの本気度です。シーズン4では日本を舞台にしたエピソードも登場し、加瀬亮やマシ・オカ、原田美枝子らが特別出演しているので、こちらもチェック!
まつやまこずえ●映画誌『ROADSHOW』の編集を経て、フリーライターに。現在は映画や演劇に関する記事を中心に、スポーツや美容、ライフスタイルに関する記事まで幅広く執筆。
取材・文/松山 梢