【広瀬すずインタビュー】こんな私が演じることで、何か感動が生まれるのかな?という感覚に陥った時期も経験しました
広瀬すずの“選び方”
純粋無垢な輝きを持ちながらも、落ち着いていてしんの強さを秘めたまっすぐなまなざし。多くの作品に出演し縦横無尽に役柄を演じるその素顔は、意外にも「周りに導かれる人生」と語る。そんな広瀬すずさんが、お仕事やプライベートで自ら選択してきたこととは?
ひろせ・すず●1998年6月19日生まれ、静岡県出身。2012年に雑誌『Seventeen』の専属モデルとして活動をスタートし女優デビュー。演技力が高い評価を受け数々の賞を受賞。主演を務める映画『水は海に向かって流れる』が2023年6月9日に公開予定
これまで選んできたこと、これから選びたいもの
新たな視点で選択をするようになった“今”だからこそ語れる、そこにたどり着くまでの道のりや葛藤、きっかけにフォーカス。
流れに身を任せながら柔軟に。演じる役との共通点をベースに感じた
——6月9日に公開を控えた映画『水は海に向かって流れる』にて、榊千紗役を務める主演の広瀬さん。感情を表に出さないクールな大人を演じるにあたり、難しいと感じたことは?
「榊さんはわりとわかりやすくて、今は離れて暮らしている母親への執着に徹底しているんです。頑なでありながらも、いい具合に頑張らないところもあって。そこは似ているなと感じる部分でもあります。ときには逃げるほうがラクですし必要だと思うのですが、その選択ができるところは榊さんと同じだなと感じました。私自身『これは絶対にこう』という意見がないタイプなので、榊さんも時と状況により柔軟に対応しながら平和に“普通”に過ごすことに重きをおいて、どこか達観しているところもあって。実はお話をいただいた時、なぜ私に? と、不思議な気持ちもあったのですが、根底にあるベースが似ているから榊さんの気持ちが理解でき、いい意味で考えすぎずに演じられる役柄だったと思います」
自分で選ぶことで“この瞬間を大切にしたい”と思うようになった
お芝居で感情の消費をし続けた結果心が無になってしまったことも
——“逃げ”も大事とのことですが、広瀬さんはどんな時に“逃げ”を選択しますか?
「最初から逃げるのではなく、その手前に『やってみよう』という意識もちょっとあるんです。やってみてできなかった時に逃げればいいかな、という選択で3割逃げを残す感じかな。いざ逃げる際は、『あれ? いないけどひょっとして逃げた?』くらいの存在感のなさで。そこは器用にできているかなと思います(笑)。そして、逃げと同じくらい重要だと思うのが、意志を持って取り組むこと。以前、流されるがままにお仕事をしていたことがあったんです。お芝居って常に感情を動かさないとならないのに、意志がないまま演じていると、だんだんと心がすり減っていき無になってしまって。動かない感情をお芝居のために無理やり動かし“こなす”だけになって、それがプライベートにも影響するようになってしまい。誰が何をしていても何も感じないくらいに。『こんな私が演じることで、何か感動が生まれるのかな?』という感覚に陥り『ヤバい』と感じた時期も経験しました」
誰かのために頑張るのは大事だけど自分のために頑張りすぎなくていい
自分に何もないと気がついたことが意志を持ち演じることへのきっかけに
——現在のようにお芝居を楽しめるようになったきっかけは?
「ある作品に出演した際、本当の意味での“力”を求められたんです。それまでは運で生きてきたように感じることも多かったので、初めて『私には何もない!』と実感。その瞬間は自分でも衝撃でした。それ以来、導かれるだけでなく自分の考えが必要だと考えるように。実際に意志を持って取り組むとすごく楽しくて『うわぁ!』って、体も心も勝手に動くんです。周りの人たちのために頑張ることはもちろん大事ですが、意志を持って選択をしながらも、頑張りすぎず肩の力を抜けばこんなにラクなんだ、と気がつきました。モア読者世代のみなさんも日々悩みながら、ときにはつらいこともあると思いますが、頑張りすぎずに頑張ってほしいなと思います」
撮影/柴田フミコ ヘア&メイク/奥平正芳 スタイリスト/Shohei Kashima(W) 取材・原文/道端舞子 ※MORE2023年7月号掲載