ともさかりえさんインタビュー「大事なのは自分軸で考えること」【In her 40s】
憧れの先輩に聞く、“私が選んだ今とこれから” VOL.1
40代の輝く先輩に人生のストーリーを聞く連載がスタート。第1回目を飾るのは俳優のともさかりえさん。華やかなキャリアの裏側には、12歳から活躍してきたからこその苦悩が。
2023年MORE7月号掲載企画から、インタビュー記事をお届けします。
ともさかりえさん 43歳「私らしいペースで自由に。そう思えるようになって楽しみが増えました」
「自分で自分の人生を満たすことができる」という自分への信頼を持つことが、幸せにつながると思う
大きなプレッシャーを抱えて、心身ともに疲弊していた10代
父がヘア&メイクの仕事していたご縁で、今の事務所の社長に声をかけていただいて、この世界に入ったのが12歳の時。それまではごく普通の小学生で、テレビに出るなんて考えたこともなかったので、初めの頃は本当に習いごとに行くみたいな感覚でした。
そんな私が俳優の仕事をおもしろいと感じるようになったきっかけは、中学2年生の時に出演した『素晴らしきかな人生』という連続ドラマでした。浅野温子さんの娘役だったんですが、先輩の役者さんたちが素人だった私に、丁寧に、真摯に向きあってくださって。子どもだからといって容赦はしない、だけど突き放しもしないで私を育てることにエネルギーを注いでくださったんです。あの時の経験があったから私はお芝居が好きになれたし、次も頑張ってみたいと思えるようになった。私の役者人生を決定づけた作品だったと思っています。
ただ、高校生になって、出演ドラマ『金田一少年の事件簿』が大ヒットしたことで状況が一変しました。思いがけず自分の名前が世間に広く知れわたって、抱えるものの大きさが自分の許容範囲を超えてしまったんです。いろいろな経験をさせていただいて楽しいと思う一方、大勢の人を巻き込んでいることの恐ろしさを子どもながらに認識して、すごいプレッシャーを感じるようになってしまって。
体も疲れきっていました。雑誌の撮影なんかでも昔の写真はフィルムだったので、フィルムチェンジがありますよね。その30秒くらいの間に眠ってしまったことも。心身ともに疲弊しきっていましたね。でも、当時は努力と根性の時代だから(笑)、限界を感じながらも無我夢中で自分を追い込んでいって、そのうちごはんも食べられなくなって、ついにダウン。結局、しばらく入院することになりました。
当時を振り返って思うのは、仕事柄しかたないとはいえ、若い頃は他人の評価が最優先で、人からどう見られるかということをすごく気にしていたということです。それで人の意見に振り回されていたところがありました。
でも、大事なのは自分軸で考えることなんですよね。もちろん人からのアドバイスを聞く耳はいつも持っていたいけれど、「私は私でいいんだ」って思えるかどうか。私自身、心からそう思えるようになったのが30代半ば。今は自分のペースで楽しみながら仕事ができるようになりました。
息子を出産して、仕事復帰したばかりの25歳の頃
結婚と出産を経験した20代~30代。振り返ると、相手に求めすぎていた
結婚は23歳、31歳、そして昨年3回目の結婚をしました。自分でも3回も結婚すると思わなかった(笑)。だから結婚に関する私のアドバイスは1ミリも役に立たないんじゃないかな(笑)。
ただ、ひとつ言えることがあるとしたら、1回目、2回目の結婚は相手に求めることがすごく大きかったし、結婚すれば幸せになれるんじゃないかという幻想を抱いていた気がします。
相手に多くを求めて、期待どおりでないとイライラしたり、不安になったりして。相手に依存しがちで精神的に自立してないところがあったんですね。
でも、幸せって相手がくれるものじゃないんですよね。「自分で自分の人生を満たすことができる」っていう自分への信頼がないと、幸せにはなれないんだと気づきました。今のだんなさんと出会ったのは、ひとりでも人生豊かに生きていけるって思っていた時期でした。やっと私も精神的に自立できたかと思うので、人生の豊かさをシェアしながら共に生きていきたいです。
自分のペースを見つけた今。息子にも「失敗を恐れないで」と伝えたいけど
最初の夫との間に息子がいて、その子がもう19歳になりました。今となっては笑い話ですが、産後3カ月で現場に復帰した時は、母乳で育てていたので泣きながらトイレにこもって搾乳したりして(笑)。キャリアと子育てのバランスに苦労はしたけれど、仕事をやめるという選択肢はなかったですね。仕事の時間は自分自身と向きあえる大切な時間だし、逆に息子ができて、「この子のために頑張ろう」って働く意味が明確になりました。
息子は私が育てたように育ったなという感じです。すごく真面目だから、もっと自由に生きてほしくて、「好きなことしなよ」、「失敗したっていいじゃん」と言うと、「ママはよかれと思ってアドバイスしてくれてるかもしれないけど、僕の考えは違うから」って。私が親として全然完璧じゃなかった分、息子がしっかり者に育ったのかも(笑)。
いろいろあったけれど、息子とだんなさんと、一緒においしくごはんが食べられている40代の今、あらためて充実した時を過ごしています。
あの頃の私へ、伝えたいこと
人の評価や意見に振り回されないで!
人の評価は気にせず、「私は私なんだ」ということに自信を持ってほしい。でも、そういう時期を通して、みんな、大人になっていくのかな。おばさんになると、不思議と人の目とか全然気にならなくなるんですよね(笑)。
Rie’s 43years
12歳 CM出演をきっかけに芸能界デビュー
13歳 ドラマ『素晴らしきかな人生』で注目を集める
15歳 ドラマ『金田一少年の事件簿』の美雪役で全国的に有名に
16歳 歌手デビュー。『エスカレーション』が25万枚のヒット
さかともえり名義で『好きになったらキリンレモン』などの曲をリリース
『友子の場合』で映画初主演
17歳 ドラマ『FiVE』で連続ドラマ初主演
23歳 結婚
25歳 第一子を自宅で出産
出産後もテレビや舞台で活躍
31歳 再婚
41歳 アパレルブランド『MY WEAKNESS』をスタート
43歳 再々婚
ドラマ『忍者に結婚は難しい』や舞台『しびれ雲』に出演
1979年生まれ。92年、俳優としてデビューした後、映画、ドラマ、舞台と幅広く活躍。2021年には、自身のアパレルブランド『MY WEAKNESS』を立ち上げ話題に。現在、連続ドラマ『それってパクリじゃないですか?』に出演中
撮影/森脇裕介 ヘア&メイク/伴 まどか スタイリスト/石井あすか 取材・原文/佐藤裕美 ※MORE2023年7月号掲載