今までと、これからと。終わらせたくない、ロングロングインタビュー

大好きだからモデルとしてもっともっと成長するために──。7月27日に33歳を迎えたばかりの栞里が、ついに旅立つ時がきた。MOREで過ごした11年間分の軌跡と、これから始まる人生に想いをはせる。

赤いワンピースを着た佐藤栞里

服・小物/すべてスタイリスト私物

ラストシューティングの地は、沖縄・恩納村。エメラルドブルーの海をバックに撮影を予定していた。しかし、天候はくもり。そんなあいにくの空模様を感じさせない、栞里の笑い声がビーチに響きわたる。「今日の海、ちょっと濁ってるけどそれもいい味!(笑)」。そう言いながら、子どものように海で遊ぶ彼女のおかげで、私たちの心は晴れていった。持ち前の優しさと、明るさ。どんな状況も楽しもうとするアティチュード。それは11年前からまったく変わらない。

赤いワンピースを着て笑う佐藤栞里

憧れのモデルが勢ぞろい。MOREでの挑戦を決意

栞里とMOREが出会ったのは2012年春。『non-no』の専属モデルを自らの意思で卒業し、編集部に顔見せにきてくれたのが始まりだった。あまたある雑誌の中で、なぜMOREだったのか。

「『non-no』の専属モデルをやめる決心をした時に、ありとあらゆる雑誌を何冊も買い込んで、とにかく読み込んだの。当時のMOREは、竹下玲奈ちゃん、田中美保ちゃん、比留川游ちゃんと、憧れの先輩がたくさん出ていて。私もここの一員になりたいと思ったから、マネージャーさんに顔見せにいきたいとお願いしたんだ」

赤いワンピースを着て海に入る佐藤栞里

初登場は、2012年9月号のファッション企画だった。

「正直、毎日必死だったから、この時期のことはあんまり記憶がなくて(笑)。専属モデルじゃないから、今日の撮影でダメだったら、次の撮影に呼んでもらえないんだろうなっていう不安と闘ってた。『non-no』の甘い感じから、MOREらしいナチュラルな感じに変えるために、とにかく鏡の前でポージングの練習をしたり、洋服の見せ方を研究したりしていたなあ。そういえば、撮影で使われそうなカフェを見つけて、イメトレをすることもあった! カメラ係のとっつぃー(栞里のお父さん)と一緒に(爆笑)。『ここに立つとしたら、こんなポーズがいいかも』、『このドアノブ使えそうじゃん!』とか、どんな場所でもカメラの前でとっさにポージングができるように妄想ロケハン(笑)。実際に、その場所で撮影することもあって。これをしておくことが、ちょっとでも自信を持って撮影に臨むためのお守りになっていた気がする」

赤いワンピースを着て海に入る佐藤栞里

カメラの前に、“自信”を持って立つ。そのために、深夜におよぶ反省会を毎月開催。ポージングや表情のつくり方を1カットずつ試行錯誤する日々が始まる。

「出ている雑誌が発売されると、マネージャーさんと事務所に集合。1カットずつ表情やポージングをチェックする反省会を3年くらい続けてたな。もう、ページをめくるたびにドッキドキ(笑)。自分でもイマイチなカットはわかるんだけど、ひとりではどこをどう直せばいいかわからない。そんな時は、先輩のポージングを真似するところから始めて、自分の体のバランスになじむまで1ミリずつ角度を探ってみたり。そこで気づいたことを次の撮影で試してみて、編集さんから『しーちゃん可愛いね!』と言ってもらえたら、その言葉を自信に変えて、また次の撮影を頑張る。それの繰り返し」

赤いワンピースを着た佐藤栞里

正直、カメラの前に立つ時、自信なんてなかった。だから、ポージングや表情のつくり方を必死で練習した

モデルとしての表現力をがむしゃらに磨き続けた時期から、一歩前に進めたと感じられたのが、2014年頃だったという。

「アウターの企画が最初だったかな。自然体でラフにポージングしてもいいんだって思えるようになって。“このメイク、可愛いな”って感じたり、“カメラの前でこう動いたらいいかも”と考えたりする余裕が生まれて、撮影をすっごく楽しむことができた。それまでは、“この表情で、このポーズで大丈夫かな?”って心配のほうが強かったから。そうそう、この頃からダブルピースみたいな、おちゃめなポージングも誌面で使ってもらえるようになって。素の佐藤栞里に近い状態で、カメラの前にいられるようになったなと。完成したページを見て、4年に1回しかほめない(笑)マネージャーさんも『可愛い!』と言ってくれて、その言葉がとっても自信になったし、MOREでの自分のあり方をつかむきっかけになったと思う」

時間をかけてつかんだ、MOREでのあり方。それは……。

「この時、一緒にMOREに出ていた(佐藤)ありさは、誰もが憧れるモデルさん。私もそんなモデルさんになりたかったけれど、なかなか自分の個性というものがわからなくて。そんな時に編集さんから、『カジュアルでボーイッシュなファッションの人がいるのも読者の選択肢が広がっていいね』って声をかけてもらえて。もしかしたら私にも、“私だからできること”があるのかもしれないって」

撮影/東 京祐 ヘア&メイク/川添カユミ(ilumini.) スタイリスト/石上美津江 取材・原文/海渡理恵 ※MORE2023年9・10月合併号掲載