【松下洸平が語るキャリアについて】「思いどおりにならないことも、挫折も多かった」 インタビュー前編
舞台、映画、ドラマのみならず、シンガーソングライターとしても活躍する松下洸平さん。多彩な活動をする彼の作品を一挙に楽しめる、その名も「WOWOW松下洸平祭り」が放送・配信されます。「これを見れば、僕のほとんどがわかってもらえると思う」と語る松下さんに、ラインナップの見どころと、唯一無二の道筋をたどってきたキャリアについてお聞きしました。
「WOWOW松下洸平祭り」が開催
──11月に放送される「WOWOW松下洸平祭り」ですが、ご自身の名前を冠した祭りが開催されることについて、どう思われましたか?
いやもう、本当に光栄なことだなと思いました。WOWOWは昔から家族で見る機会が多かったんです。特にグラミー賞とかアカデミー賞とか、地上波では放送されない生中継を毎年見ていました。ドラマに出演させていただいたこともあったので、WOWOWが特集を組んでくれることはうれしかったし、僕にとってすごく特別なことでした。
──2023年の夏に出演された舞台こまつ座『闇に咲く花』や、2022年11月より9都市で開催されたライブツアー「KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2022 〜POINT TO POINT〜」など、多彩な活動を楽しめる内容です。
舞台『闇に咲く花』に関しては、僕の中でも新しい記憶として残っています。こまつ座は、いわゆるエンターテイメント色の強い作品とは少し異なり、コアなファンの方がいらっしゃる作品が多いので、WOWOWがより多くの視聴者の方々に向けて作品を届けてくれることはすごくうれしいし、キャストのみんなも喜んでいました。
ライブツアーに関しては去年12月の映像なので、ちょっと恥ずかしい気持ちがします。初めてフルアルバムをリリースしたタイミングでのツアーだったので、総評としてはすごく楽しいツアーだったんですけど、たくさんの課題が残ったツアーでもありました。ミュージシャンとしてのスキルも認知度もまだまだ発展途上ですが、一人でも多くの人に歌が届いたらいいなと思っています。
──2021年に放送されたWOWOWオリジナルドラマ「向こうの果て」(全8話)も放送されます。松本まりかさん演じる主人公に殺害される幼なじみを演じられましたね。
映画『ミッドナイトスワン』の内田英治監督と初めてご一緒した作品で、とても難しい役でした。役と自分が一緒になって、プライベートの自分までちょっと落ち込んじゃうことがありました。
僕、基本的にそういうことはあまりないんですけど、撮影中の自分は、ちょっと目つきが悪かったかも(笑)。気持ちが上がらない時期もありました。それくらい本気だったんだと思います。松本まりかさんの役への向き合う姿勢に影響されて、僕もスイッチが入りましたね。だいぶ引っ張ってもらいました。あの時だからこそできた表情がドラマの中にたくさん詰まっているので、ぜひ見ていただきたいです。
──そして2021年に公開された映画『燃えよ剣』も放送されます。松下さんは新撰組最強の剣士の一人、斎藤一を演じました。
僕がまだ今のようにテレビに出させてもらう前にオーディションで決まった作品で、素晴らしい出会いがたくさんあった現場でした。岡田准一さんと鈴木亮平さんと初めてご一緒させていただきましたが、「あの二人みたいになりたい」と、僕の中でギアがまた一段上がった瞬間でもあったんですよね。今でも交流が続いていて、何かで悩んだり、つまずいたときにはお二人に相談するようにしています。
1ヶ月くらい京都で撮影をしましたが、とにかく過酷な現場でしたし、原田眞人監督との出会いも含めて、すべてが強烈で楽しかったです。
思いどおりにならないことも、挫折もあった
──「WOWOW松下洸平祭り」のラインナップを見ても、松下さんがいかに多彩な活躍をされているかがわかります。他の誰にも真似できない唯一無二のキャリアの築き方ですが、先を見越して計画を練ってたどり着いた現在地なのでしょうか?
とても行き当たりばったりの人生だったと思います。漠然と「こうなりたい」という目標は常にあったんです。でもそこに向かっていけたのは、自分自身の計画性によるものではなくて、誰かが「こういう作品があるから一緒にやろう」と言って引っ張ってくれたことが、数珠つなぎのようになって夢を叶えていけたイメージです。
目標を持ち続けることはとても大切ですし、それがないと頑張れないのは事実です。でも「何歳までにこうなろう」と目標を立てたところで、思いどおりにならないことのほうが多かったし、挫折も多かったから。
──挫折は、どの時点で?
20代後半は思うようにいかないことも多くて、結構悩みました。今思えば誰のせいでもなく、自分のスキル不足であったり、経験不足でしかなかったんです。誰かのせいにできないからこそ、もがいていた時期はありました。
──そこから抜け出せたのは?
やっぱり誰かが声をかけてくれたからですよね。それこそこまつ座の舞台であったり、「こんないい役をもらっていいんだろうか」と思うチャンスをいただくようになりました。「自分には向いていないかもな」と落ち込みそうになると、誰かが僕の手をとって「やろうよ」と言ってくれた。そうやって命をつないできたような感じがします。
Profile
まつした・こうへい●1987年3月6日生まれ、東京都出身。2008年より、自作曲に合わせて絵を描きながら歌を歌うパフォーマンスを開始、同年11月「STAND UP!」で洸平名義でCDデビュー。2009年よりミュージカル「GLORY DAYS」出演をきっかけに、俳優として活動を開始。2018年に舞台『母と暮らせば』、『スリル・ミー』の演技で第26回読売演劇大賞杉村春子賞・優秀男優賞受賞。第73回文化庁芸術祭 演劇部門新人賞受賞。2019年NHK連続テレビ小説『スカーレット』に出演。2021年8月『つよがり』で2度目のCDデビュー。2023年12月13日リリースの2nd アルバム『R&ME』を引っさげ、2024年1月より東京ガーデンシアター2daysを含む自身最大規模の全国ツアーが決定。主な出演作は映画『燃えよ剣』、『ミステリと言う勿れ』、ドラマ『向こうの果て』、『やんごとなき一族』、『アトムの童』、『合理的にあり得ない〜探偵・上水流涼子の解明〜』、『最高の教師1年後、私は生徒に■された』、『いちばん好きな花』など。
「WOWOW松下洸平祭り」
2023年8月より上演されたこまつ座『闇に咲く花』や、2022年11月にリリースした自身初のフルアルバム「POINT TO POINT」を引っさげて9都市で開催したライブツアー「KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2022 ~POINT TO POINT~」を独占放送・配信。さらに出演作として、松本まりか主演・内田英治監督によるWOWOWオリジナルドラマ「向こうの果て」、岡田准一主演・原田眞人監督による映画『燃えよ剣(2021)』がラインナップされている。11月25日午後7時より各作品を一挙放送・配信
撮影/峠 雄三 ヘア&メイク/KUBOKI(aosora) スタイリスト/丸本達彦(UNFORM) 取材・文/松山梢 衣装協力/SCYE HEUGN