カン・ハヌルさんインタビュー

昨年、韓国で公開され大ヒットを記録した、映画『ラブリセット 30日後、離婚します』が、ついに日本で3月29日に公開されます。本作は、30日後に離婚する夫婦が、同時に記憶喪失になり繰り広げるラブコメディーで、カン・ハヌルさんとチョン・ソミンさんが主演を務めます。

韓国のエンタメ界を、たしかな演技力でけん引しているカン・ハヌルさんは、ドラマ『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』や『ミセン-未生-』をはじめ、韓国の演技賞を総なめにした『椿の花咲く頃』で知られ、2024年下半期に配信予定の『イカゲーム』シーズン2への出演も決まっている、まさにトップ俳優。

カン・ハヌルさん

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インタビュー当日の、“美談製造機”エピソード

この記事のオンラインインタビューが実施された際には、“美談製造機”と呼ばれる彼の人柄の良さが炸裂! 取材開始直前には、画面に映し出されたインタビュアーやスタッフの名前をひとりひとり読み上げながら確認したり、勉強中だという日本語を交えながらスタッフと積極的にコミュニケーションを図ろうとしたり。終始笑顔で好奇心旺盛、オンラインの画面越しにもダイレクトに伝わってきたカン・ハヌルさんの魅力。彼が、ひとつひとつ丁寧に回答してくれたインタビューをお届けします。

俳優
カン・ハヌル

1990年2月21日生まれ。釜山広域市出身。舞台・ミュージカル俳優として2006年に『天上時計』でデビュー。2007年、『最強!うちのママ』でドラマ初出演を果たして以降、ドラマ『花ざかりの君たちへ』、『相続者たち』、『ミセンー未生―』、『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』などの話題作に多数出演。2019年、除隊後の復帰作『椿の花咲く頃』で、「百想芸術大賞」TV部門 男性最優秀演技賞をはじめ数々の賞を受賞し、実力派俳優としての地位を不動のものに。Netflixオリジナルドラマ『イカゲーム』の続編が待機中

カン・ハヌルさん主演映画『ラブリセット 30日後、離婚します』

「映画の3倍は面白かった」!? 笑いが絶えなかった撮影現場の裏側

――30日後に離婚する夫婦が同時に記憶喪失になるラブコメディー映画『ラブリセット 30日後、離婚します』。この作品への出演の決め手を教えてください。

カン・ハヌルさん(以下、ハヌル):僕は作品を選ぶ時、台本だけを見ています。座ったその場所で、最初から最後まで一気に読むことができるかどうかで出演を決めるのですが、この映画もそうやって出合いました。僕が演じたジョンヨルというキャラクターで決めたというよりは、脚本自体がすごく興味深い内容で、「この作品は撮影でいろいろなアイデアが加われば、もっと面白そう」と思えたんです。とにかく新鮮で、なかなか出合えない脚本だと感じました。

――カン・ハヌルさんが演じたのは、自称、知的でイケメンの弁護士ノ・ジョンヨル。ご自身と似ている部分はありますか。

ハヌル:僕とジョンヨルは似ている部分が、すごく多いと思います。たとえば、カッコ悪いところや、抜けているところがたくさんあるのですが、そこが似ているかなと。あと、きれい好きで、掃除が好きなところも一緒ですね。でも、ジョンヨルは弁護士ですごく頭がいい。そこは真逆です(笑)。

映画の劇中写真

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――ジョンヨルのパートナーで、破天荒なナラ役を演じたチョン・ソミンさんとは、映画『二十歳』以来の共演です。

ハヌル:僕にとっては、すごく気持ちのいい再会でした。『二十歳』の時は、お互いに若かったので、物事を知らなかった。あの時は自分たちの意志ではなく周りの指示で動いて受動的な芝居をしていたとしたら、今はふたりとも年齢を重ねていろんなことがわかってきて能動的になり、成長したなという気持ちになりました。

映画の劇中写真

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――実力派ぞろいの共演者や、ナム・デジュン監督との印象的なエピソードはありますか。

ハヌル:ジョンヨルの友人役であるユン・ギョンホさんと一緒のシーンでは、笑い過ぎて撮影がストップになることもありました(笑)。僕たちが一緒のシーンになると、周りのみんなが笑う準備をするくらい! その雰囲気が良かったのか、監督も「なんでもやってください」と言って僕らに演技を任せてくれたのですが、やっぱり笑い過ぎてNGがたくさん出た記憶があります。撮影のキュー出しをしなくてはいけない監督が、それをせずに僕たちふたりに混ざって、3人で笑いながら遊んでいるといった感じでしたね(笑)。そんな監督はオープンマイドな方で、一緒に作業をしていてとても気楽だったので、また一緒に作品を作りたいです。

ナラの母役、チョ・ミンスさんについてひと言で表現するなら、“愛することになった”です。尊敬できる最高の方です。そしてジョンヨルの母役、キム・ソニョンさんをふた言で表現するなら、「とても学びたい相手」、「一生一緒にいたい俳優」ですね。

――撮影現場の雰囲気の良さが伝わってきます!

ハヌル:現場は、この映画の3倍くらい楽しい雰囲気でした(笑)。男3人でお酒を飲むシーンがあるのですが、そこはほぼアドリブで、踊ったり、お酒の瓶を持っていたずらをしたりしながら、すごく長い時間撮影したんです。でも、映画にはテンポを良くするために編集というものがあるため(笑)、本編では短いシーンになっていますが、そこはすごく楽しい撮影でした。

――一方で、撮影で大変だったことはありますか?

ハヌル:記憶を喪失していたジョンヨルの記憶が戻ってくるポイントの演技は難しかった。急変してしまうと、観客が感情移入するのが難しくなるので、その速度を合わせながら演じることが大変でした。

映画の劇中写真

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「結婚にポジティブなイメージを持ってくれたらうれしい」

――この映画のタイトルにもあるように、韓国の離婚法では、衝動的な離婚を防ぐために1ヶ月の熟慮期間が設けられています。日本人にとっては馴染みのないこの制度について、カン・ハヌルさんは何か思うことはありますか。

ハヌル:日本には、このような制度が存在しないんですね。小さい頃からドラマの中などでこの制度が当たり前のように描かれていたので、深く考えずに受け入れていました。離婚するためには1ヶ月くらい考える期間が必要なのだろう、と。ですから、日本にはこういった制度がないというのは新しい情報でした。最近、韓国の離婚率は40%と高くなっているのですが、日本はどうですか? いや、これはビールを飲みながら話すトークですね(笑)。

映画の劇中写真

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――“離婚”を軸に物語が展開する今作を通して、結婚観や人間関係など、何か考えさせられたことはありますか?

ハヌル:時間が経ってから思ったことですが、私もそろそろ結婚しなければいけない年齢になっているんだろうな、と。若い頃は、“結婚”という単語が書かれた脚本を読んでも、自分にはファンタジーで、どう演じればいいのか悩んだこともありました。でも、今は周りの友人でも結婚した人が増えたので、その意味を理解できる。そろそろ結婚が、僕にとっても遠い存在ではないなと思いました。

MORE読者のみなさんは、僕と同世代と聞きました。この作品には、夫婦喧嘩の場面がけっこうありますが、それが結婚のすべてではありません(笑)。ジョンヨルとナラは、再び幸せになります。映画の後半の幸せな場面を見ていただいて、結婚についてポジティブな考えを持っていただけたらうれしいです。

映画の劇中写真

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――そんな本作は、韓国にて観客動員数200万人超えのヒットを飛ばしました。どのような点がたくさんの人に受け入れられた理由だと思いますか?

ハヌル:難解な映画が好きな人もいると思いますが、この1〜2年、韓国は経済的にいい状況ではなくて、難しい時期だからこそ、多くの観客が笑って楽しめる軽快な映画を求めていたような気がします。そんなタイミングに公開されたのが、この映画だったということかなと。たくさんの人に観ていただけたのは、運が良かったんです。

僕、日本のコメディ映画が好きなんです、『ウォーターボーイズ』とか。そういった作品のように、日本のみなさんにとってこの映画が、気楽に笑いながら楽しめる一本になったらいいなと思っています。

1日1日がいい勉強。日々の中で起こることを十分に感じることが芝居のルーツ

――ジョンヨルからにじみ出ていたチャーミングさやユーモアには、カン・ハヌルさんと通じるものを感じました。お芝居をする上で大切にしていることは何ですか。  

ハヌル:僕は、1日1日がいい勉強だと考えているんです。だから、芝居や発声の練習をしたりすることが、僕の演技に役立つというよりは、1日24時間の間に起こるいろんなことを、自分の体で十分に感じることが、いちばんいい演技の勉強だと思っています。1日1日を忠実に、勉強だと捉えると、いろんなことを面白がれるし、お芝居に還元できることを発見できるんです。それが、僕の芝居のルーツかなと。 
 
――では最近も何か発見したことがありますか? 

ハヌル:とてもささいなことですが、僕は掃除好きなので、昨日も家で掃除機を「強」にしてかけていたんです。そうしたら、掃除機のローラー部分に、カーペットの長い毛足がからまって止まってしまって。その時に、「なんでも強すぎると止まってしまうんだな」と気づきました。普段、僕自身も何かをするときに力みすぎるのではなく、たまには力を抜いて臨む。何ごとも力加減の調整が必要なんだと学びましたね。 

カン・ハヌルさん

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日本への旅行もカルチャーも大好き。お気に入りの作品も紹介!

――日本についての印象や来日の時の面白いエピソードがあればお聞かせください。

ハヌル:僕は正直、日本旅行がいちばん好きです。韓国から近いので気楽に行くことができる。この前、日本旅行で感じたことをスマホにメモしておいたんです。それは、日本の道路について考えたこと。よく整備された場所に僕がたまたま行っただけかもしれないですが、どこの路地に行っても、すごく細い隙間まできれいだなという印象を受けました。また、ある朝、店の前をほうきで掃除しているおじいさんを見かけて、遠くから少し見守りました。そのおじいさんのささやかな行為に、僕は聖なる感じを受けたんです。そういうこともあって、日本は小さなことにも真面目に、気持ちを込めて取り組むという印象を持っています。

カン・ハヌルさん

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――カン・ハヌルさんは、映画鑑賞や読書がお好きだというのも有名ですが、感化された作品や、最近印象に残った作品はありますか?

ハヌル:X JAPANから始まり、アニメや村上春樹さんの本など、近い国だからかもしれないけれど、日本の文化は子供の時から大好きで、すごく影響を受けています。今、日本のメディアのインタビューを受けているからではなくて、最近、本当に良いと感じた作品のひとつが、Netflixドラマ『First Love 初恋』。もともと宇多田ヒカルさんの『First Love』という曲が好きというのもあるし、ゆったりとしたテンポの映像が僕のスタイルで、すごく良かったです。あと、映画『世界から猫が消えたなら』と、映画『THE FIRST SLAM DUNK』も最高でした。スラムダンクは、DVDも買いました!

映画『ラブリセット 30日後、離婚します』

映画メインビジュアル

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【あらすじ】
自称知的なイケメン弁護士だがどんくさいジョンヨルと、名家出身のお嬢さまでバリキャリな映画プロデューサーだが破天荒なナラ。 映画のような大恋愛をして結婚するもお互いの価値観の違いに耐え切れなくなり、二人は遂に離婚を決意する。裁判所の調停で熟慮期間を経た30日後に離婚することが決まるが、その帰り道に交通事故に遭い同時に記憶喪失に! 愛した記憶も憎しみ合った記憶も全てがキレイに消え去った二人は、家族や友人を巻き込み、記憶を取り戻そうとするが……。果たしてこの夫婦、一体どうなる? 

映画『ラブリセット 30日後、離婚します』60秒予告 | 2024年3月29日 (金) 公開

【詳細情報】
2024年3月29日(金) 全国ロードショー

提供:楽天 配給:松竹

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監督:ナム・デジュン

主演:カン・ハヌル、チョン・ソミン

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