奥菜恵さんインタビュー「あの頃の自分に“そんなに心配しなくて大丈夫"と伝えたい」
奥菜恵さん44歳「生きてきてよかったんだなって、心から思えるんです」
憧れの先輩に聞く、“私が選んだ今とこれから”
芸能界で多忙な日々が続いた10代、友達とテスト勉強をした一夜が大切な思い出
私が芸能界で活動するようになったのは、小学6年生の頃、スカウトされたのがきっかけでした。当時の私は人前に立つのが苦手で、授業中に先生から名前を呼ばれるだけで真っ赤になってしまうような極度の恥ずかしがり屋だったのですが。幼さゆえの怖いもの知らずの好奇心と、父からの「やるかやらないかは自分で決めなさい。ただ、やるのならば真面目に一生懸命に向き合わなければいけないよ」という言葉に背中を押され、知らない世界に飛び込んだような気がします。
デビューしたのはその翌年、13歳の頃。最初は戸惑いの連続でした。それこそ、教室で自分の意見を発表できなかったような女の子だったので、オーディションの自己紹介では顔を真っ赤に染めるばかり。でも、次第にお仕事を頂けるようになり、気づけば睡眠時間が足りないと感じるほど多忙な毎日に。あまりにも濃い時間を過ごしていたので、今振り返ってもスポンッと記憶が抜け落ちていて、思い出せないことがとても多いんです。
そんな10代の思い出として今も覚えているのが友達と期末テストの勉強をしたことです。当時は学業と仕事の両立に悩むことも多かったのですが、できるだけ学校には行くようにしていて。テストの前日に「徹夜で一夜漬けしよう」と我が家に泊まりにきてくれた友達と一緒にコンビニへ行き、そこで買ったお菓子を食べながら勉強した……その思い出だけはなぜかしっかり覚えているんですよ。あの頃はきっと「普通の女の子としての時間を楽しみたい」という気持ちが強かったんでしょうね。周りから芸能人として扱われるのもイヤで、普通の友達として接してくれる友達の存在に救われることもとても多かった。ちなみに、そんな学生時代の友達とはずっと親交が続いていて。今も私の仕事も人生も応援してくれる大切な仲間なんです。
自分の軸を探すために、「自分のやりたいこと」と向き合った20代
10代は多忙な毎日をとにかく必死に走り抜けました。そして、いつしか自分の軸が見えなくなっていることに気づいたんです。自分がどうしたいのか、何がしたいのかも、よくわからない。それをすごく「怖い」と感じる瞬間があって……。
20代はその軸を見つけるために自分自身と向き合うように。「まずは自分のやりたいことをやってみよう」と挑んだのが海外への語学留学やひとり旅でした。フランスでは仕事でお世話になったヘアメイクさんの家や、人づてに紹介してもらったフランス人ファミリーの家に滞在。今までずっと「行きたい」と思っていた美術館や教会をめぐったり。今も昔も大好きで、あの頃は毎日のように聴いていた、エディット・ピアフのお墓参りにまで行ったりして。計画して動く日もあれば、何も計画せずに当日にホテルを決めるような日も、すべてが新鮮な経験でした。
それは“今までできなかったことをやっただけ”の旅だったんですけど、その経験は「知らない土地でも、どこに行っても、意外と私は大丈夫なんだ」という小さな自信を届けてくれました。パスポートをなくしてしまったときも、カタコトの英語でなんとか日本大使館まで辿り着き、ちゃんと再発行してもらえましたからね(笑)。
30代は「自分のため」ではなく「誰かのため」に時間を使った10年でした
30歳で第一子を出産、32歳で第二子を出産。私の30代は“自分のため”ではなく“誰かのため”に時間を使った10年だったと思います。その“誰か”はまさに子供達であり、子供達と過ごす時間を一番に優先するという選択は私自身がしたこと。やっぱり、作品に入って家を開ける時間が長くなるほど子供と過ごす時間は少なくなるので。どんどん成長していく子供達の“今、この瞬間”を、子供達が抱えている思いや気持ちを、私は見過ごしたくなかったんです。
おかげで30代は家族との思い出がたくさん。我が家はいろんなことがあったので絆はとても強くて。反抗期に差し掛かっている子供とは、ぶつかることもありますが、なんやかんやで仲良しなんですよ(笑)。そんな家族との思い出のなかでも、毎年の“嬉しい思い出”として残っているのが、母の日や誕生日に子供達がくれる手紙です。そこには愛がいっぱい詰まっていて……“ママの子供に生まれてよかった、幸せだよ”なんて嬉しい言葉を書いてくれたりして……すいません、思い出すだけで目がウルウルしてきてしまうんですけど。そんな子供達からの愛あふれる言葉に触れるたびに、「厳しいことを言ってしまうことも、うるさく小言を並べてしまうこともあるけれど、私の愛はちゃんと子供達に伝わっているんだな」って、「ああ、私は生きてきてよかったんだな」って、心から思えるんです。
40代の今が一番「平和で穏やかで楽しい!」
40代を迎えた今は一番「平和で、穏やかで、楽しい」と感じています。若い頃は“自分の幸せ”を探し求めていた気がするけど、今の私の幸せは、私を母にしてくれた子供達であったり、こんな私を支えてくれる夫であったり……ああ、どうしよう、家族の話になるとまた目がウルウルしてしまう。今はそんな“大切な人たちの幸せ”が“私の幸せ”なんです。みんなの笑顔が、みんなの幸せが、自分の幸せに繋がるんだなってことをすごく感じるというか。例えばそれは、本当に日々のとても些細なこと。私の作ったご飯を食べて「美味しい!」とニコニコしてくれたり、それだけでもう「すごく幸せ」と思えるんですよ。
そんな今、自分の人生を振り返り思うのが「いろんなことがあるけれど、それがきっと人生なんだ」ということです。
モア読者と同世代だった20代後半、人生はまだまだわからないことだらけで、見えない未来に漠然とした不安も感じていました。だからこそ、自暴自棄になってしまったり、人との間に壁を作って殻のなかにこもってしまったり。でも同時に、人の優しさに触れることもできたし、人に感謝することを思い出させてくれるような出来事にもたくさん出会った……。
だからこそ、あの頃に自分に声をかけるなら「いろんなことがあるけれど、それが人生だよ」と、「だから、そんなに心配しなくても大丈夫だよ」と伝えてあげたい。
「人生は一度きり。だからこそ、楽しい方向へ進んだ方がいい」
今思うと、若い頃は「こうあるべきだ」や「こうじゃなきゃいけない」がとても多くて。それが自分を苦しめていたような気がします。でも、40代になった今はそこからも解放されたというか。「そうじゃなくてもいっか」「こういう考え方もあるよ」って、ガチガチに囚われていた思いや考えから自由になり、楽になったし、いろんなことをより楽しめるようになった気がします。
「人生は一度きり。だからこそ、楽しい方向へ進んだ方がいい」。これもまた、40代の私が感じていること。この先もきっといろんなことがあるだろうし、50代も60代もまだまだ沢山の“はじめて”や“思いもよらないこと”を経験すると思うのですが、どんなときも笑顔になれる自分でいたい。「楽しみをいっぱい見つけてやる!」の気持ちで前に進んでいけたらなって思っています。
あの頃の私へ、伝えたいこと
「もがいて、悩んで、見える景色がある」
20代後半は本当にいっぱい悩んだし、いっぱいもがいた気がします。でも、そんな時期があったからこそ、そんなステップを踏んで前に進んできたからこそ、見える景色もあると思うので。思い切り、もがいて。悩んでいいと思う。世間はよく「人生に無駄なことはひとつもない」と言いますが、あれは本当ですから!
Megumi’s 44years
13歳 フジテレビドラマ『パ★テ★オ』でデビュー
14歳 映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』で主演を務める
以降、数多くの人気ドラマや映画で活躍
24歳 結婚
28歳 映画『シャッター』でハリウッドデビュー
29歳 再婚、第一子出産
31歳 第二子出産
36歳 再々婚
43歳 プロデュースコスメ『ni-Nin』を発表
44歳 15年ぶりの写真集『Okina Megumi』を発売
おきなめぐみ⚫︎1979年8月6日生まれ。広島県出身。1992年、ドラマ『パ★テ★オ』でドラマデビュー。岩井俊二が手掛けたドラマ『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』で注目を集め、その後、次々と話題作に出演。最新作「キリエのうた」にも出演。6月からは劇団ナイロン100℃結成30周年記念公演第二弾『江戸時代の思い出』に出演。自らプロデュースした化粧品ブランド「ni-Nin(ニーニン)」も話題に。今年は15年ぶりの写真集「Okina Megumi」も出版。俳優としてはもちろん、新しいことに挑戦しながら活動の幅を広げている。
https://okinamegumi.info/
撮影/森脇裕介 ヘア&メイク/中村未幸 スタイリスト/平田雅子 取材・原文/石井美輪
Information
『奥菜恵写真集 Okina Megumi』¥3850/宝島社
https://www.amazon.co.jp/dp/4299049551
ナイロン 100℃結成 30 周年記念公演 第二弾
「ナイロン 100℃ 49th SESSION 「江戸時代の思い出」」
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
【東京公演】 2024年6月22日(土)〜7月21日(日) 下北沢 本多劇場
<チケット取扱> ●チケットぴあ https://w.pia.jp/t/nylon49/
セブン-イレブン店頭 ●ローソンチケット ttps://l-tike.com/nylon49/
ローソン・ミニストップ店頭 Loppi ●イープラス https://eplus.jp/nylon49/
【新潟公演】 7 月 27 日(土)・7 月 28 日(日)りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
【兵庫公演】 8 月 3 日(土)・8 月 4 日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【北九州公演】 8 月 10 日(土)・8 月 11 日(日)J:COM北九州芸術劇場 中劇場