雛形あきこさんインタビュー「“めちゃイケ”から仕事に取り組む姿勢を教わりました」【私が選んだ今とこれから】
雛形あきこさん46歳「あきらめるよりも、一歩踏み出すほうを選んでほしい」
14歳で芸能界デビューし、グラビアアイドルや俳優としてキャリアを重ねてきた雛形あきこさん。大人気バラエティ番組『めちゃ×2イケてるッ!』のメンバーとして活躍する姿を覚えているモア読者も多いはず! どんな時も真摯に歩んできた道のりについて教えてくれました。
普通の中学生が芸能界へ。突然広がった世界にワクワクした
私がこの世界に入ったのは、14歳の時。はじまりは、芸能の仕事をしたい友達が劇団に所属することになって、「私も一緒にやってみようかな」くらいの軽い気持ちでした。劇団に入ってわりとすぐにお昼のドラマのオーディションを受けたら、たまたま役のイメージと合って合格。演技のことは何もわからない状態だったんですけど、まわりの大人の方たちがやさしく教えてくれて、突然世界が広がっていく感じが楽しかったことを覚えています。
15歳で現在のサンズエンタテインメント(芸能事務所)の野田(義治)会長から「真剣にこの仕事をしていくなら一緒にやらないか?」と声をかけていただいて、グラビアの仕事も始めるように。写真集の撮影でいきなりハワイに連れて行ってもらって、「私でいいのかな?」と思いながらも、なんだか少しだけ認められた気がして、すごくうれしかったんですよね。その後もグラビアの仕事で何度も海外に行きながら、ドラマやバラエティ番組に出演。そんな忙しい日々の中で始まったのが、『めちゃ×2イケてるッ!』の前身番組『めちゃ×2モテたいッ!』だったんです。
“めちゃイケ”メンバーとは、今も番組で会うと安心できます
当時はたくさんのバラエティ番組に出させていただいていたので、実は最初の頃は“めちゃモテ”(『めちゃ×2モテたいッ!』)が特別という感覚はなかったんですよね。その後の“めちゃイケ”(『めちゃ×2イケてるッ!』)も含めて、23年も続くとも思っていなかった。ただ、ほかの番組ではグラビアアイドルとしてその場にいて、ちょっとおもしろいことが言えればOKとされていたけど、“めちゃモテ”だけは芸人だろうが俳優だろうがアイドルだろうがみんな同じ。個々に役割があってその場にいるんだからということで、全員が120%で頑張って、ゲストを盛り上げなきゃいけなかったんです。総監督の(片岡)飛鳥さんからは“めちゃモテ”のレギュラーメンバーについて「同じクラスにいても友達にならないメンバーを集めたから、キャラクターは全員ちがうはずだ」と言われて、「まだあんまり話したことないし本質はわからなくない?」と感じながらも(笑)、そう言われたらそのキャラクターに見えないといけない。それぞれが自分なりに番組での立ち位置を考えた時間だったと思います。
“めちゃモテ”が“めちゃイケ”にリニューアルされてからは、新しくメンバーが加入して、さらにコントやゲームといった企画も増えたので、たとえばゲームだったら「この人はこうやりがち」っていうキャラづけみたいなものが、より色濃くされていきました。最初に挑戦するのは切り込み番長の加藤(浩次)さんで、最後は岡村(隆史)さんが絶対にクリアしなくてはいけなくなっていて、私に課されていたのは“まわりが思う以上に自分に負荷をかけてしまうキャラ”。まわってくる順番が後半のほうだと、「もうやれることが残っていないんじゃないか」、「何もハプニングが起こらなかったらどうしよう」って、毎回プレッシャーを感じていました。
当時、飛鳥さんからもうひとつ言われていたのは、「変な馴れ合いは必要ない」ということ。だから、“めちゃイケ”は最終回まで公式の打ち上げや飲み会がいっさいなかったんです。『FNS 27時間テレビ』や年越しの生放送といった、どんな大きなイベントをまかされても、収録が終わったら即解散(笑)。だからといって、メンバー同士の関係がドライだったかというと、そんなことは全然なくて。“めちゃイケ”の収録は毎週火曜と水曜にあったんですけど、20年以上週2日ペースで会っていたら、たしかに打ち上げがなくても大丈夫なんですよね(笑)。番組で誰かひとりがゲームに挑戦している最中はほかのみんなが協力して盛り上げるっていう絶大な信頼感があったので、今でもいろいろな番組で“めちゃイケ”メンバーと共演すると、どこか安心できる自分がいるんです。
出産を経て、この仕事が本当にやりたいことだと気づけた20代
目の前の仕事と必死に向き合いながら充実した時間を過ごしているうちに、気がつけば20歳に。ふとまわりを見ると、地元の友達は将来について考えていたり、なかには結婚している人もいたり……。知らない間にみんなが大人になった感じがして、今思えば私だけプライベートがまったくないことに急に不安を覚えた時期だったのかもしれません。仕事をしている自分以外に、もうひとりの自分が欲しくて、ちょうどそのタイミングで出会えた方と1度目の結婚をしました。
そして、22歳の時に娘を出産。予定日の4カ月前からお休みに入ったんですけど、それまではまったく変わらないペースで仕事をしていたので、いざ産休期間に突入したら毎日何をすればいいかわからなくなってしまったんですよね。テレビをつければ一緒に番組に出ていた人たちが活躍していて、勝手に置いていかれたような気持ちにもなってしまって……。でも、仕事から1度離れた時間があったからこそ、復帰した時にこの仕事が本当にやりたいことだったんだって再確認することができた。「やりたい」や「楽しい」よりも必死さが上回っていた出産前に比べて、ひとつひとつの仕事をより大切に思えるようになりました。
今の20代のみなさんを見ていると、仕事と、それ以外のやりたいことを上手に両立させている方が多くて、すごいなと思います。ひと昔前は、出産すると決めたら、仕事はあきらめなければいけない時代でしたからね。でも時代も変わって選択肢が多くなってきているぶん、自分が選びたいものを選べていない人もいるかもしれない。その理由のひとつに、産休中の私が感じたような「まわりから遅れをとってしまいそう」という気持ちがあったとしたら、その遅れはあとからでも十分取り返せると思います。だから、あきらめるよりも、一歩踏み出すほうを選んでほしい。チャレンジすることは経験になるし、何よりもその人の魅力につながるはずです。
柔軟な考え方を持っている夫には、すごく感謝しています
現在の夫(俳優の天野浩成さん)と結婚したのは、35歳の時。出会いはドラマでの共演だったんですけど、第一印象は「子どもみたいで、ちょっと変わった人だな」でした(笑)。クランクアップしてから家がすごく近所だということがわかって、時間がある時にランチをするということを繰り返していくうちに、自然と仲よくなっていったんです。
私たち夫婦は、ちょっとした「これはちがうんじゃないか」ということも、ため込まずになんでも話すようにしています。私はトイレの便座を絶対に下げてほしいんですけど、そういったことも全部(笑)。「今日の仕事現場はここだよ」という話もするので、道路状況を調べて「今日は○○通りが混んでいるから、こっちの道を通ったほうがいいよ」って教えてくれたり、私が飛行機で海外に向かっている時はフライト情報をチェックして「ママは今ここらへんにいるよ」って飛行位置を送ってくれたり。私は空の上にいるから、見られないんですけどね(笑)。ふたりでバラエティ番組に出演すると、夫のそういうところがクローズアップされがちなんですけど、私が甘えている部分もたくさんあるんです。結婚してどちらの姓を選ぶかという話になった時も、「僕のほうが契約しているものが少なくて名義変更の手続きがラクだから」という理由で、夫が雛形姓に。今でも奥さんが旦那さんの名字を名乗るケースのほうが圧倒的に多いと思うけど、本来ならば、ふたりのことだから、そうやってふたりが話し合って納得できればどちらでもいいんですよね。柔軟な考え方を持っている夫には、すごく感謝しています。
今年の3月に娘が大学を卒業。「これでもう私たち親にできることはなくなったんだな」という、少しさみしい気持ちになりました。娘が大学生だった時も、文化祭に遊びに行くくらいしかしていなかったんですけどね(笑)。そして、ここからはもう1回自分たち夫婦のことを考えようということで、今年からふたりで会社を始めることに。プライベートの時間も大切にしながら、それぞれがやりたいと考えているお芝居の仕事と丁寧に向き合っていきたいと思っています。
あの頃の私へ、伝えたいこと
「20代で経験できたことは、全部がよかったこと」
私は、20代で結婚したことも出産したことも、すべてがよかったと思っています。やりたいことをやらずに後悔するのは、絶対にイヤだから。もし失敗しても、体力も時間もある20代ならやり直せるので、モア読者のみなさんにも自信を持ってやりたいことをやってほしいです!
Akiko's 46years
14歳 TBSドラマ『おべんきょう』で俳優デビュー
15歳 グラビア活動を開始
17歳 フジテレビ『めちゃ²モテたいッ!』の放送スタート。その後の『めちゃ²イケてるッ!』も合わせて23年間レギュラー出演し、お茶の間の人気者に。
18歳 テレビ朝日ドラマ『闇のパープルアイ』でドラマ初主演
20歳 結婚
22歳 出産
35歳 再婚
ひながた・あきこ●1978年1月27日生まれ、東京都出身。14歳から芸能活動を始め、グラビアアイドルとして人気を博す。以降、ドラマ、バラエティ、映画、舞台、CMなどで幅広く活躍。現在もさまざまな役を演じられる俳優として、数多くのドラマや舞台、映画に出演中。オフィシャルサイト■https://hina-inc.com/
撮影/原楓 ヘア&メイク/金子友美 スタイリスト/藤井エヴィ 取材・文/吉川由希子