【新木優子】映画『キングダム 大将軍の帰還』インタビュー「私たちには“心の筋トレ”が足りていない」
大沢たかおさん絶賛! 秦国伝説の六大将軍「摎」役で『キングダム』初登場
7月12日(金)から全国ロードショー予定で、シリーズ最終章となる第4作・映画『キングダム 大将軍の帰還』。72巻まで刊行されている原作の単行本コミックの累計発行部数は1億部を突破(2023年11月時点)し、2019年以降シリーズ化された邦画実写作品で、第1作〜3作の累計興行収入が50億円を突破しているという、日本のエンタメ史に名を刻む超名作です。
そんな『キングダム』ワールドを、約8年間もの間にわたって牽引してきた山﨑賢人さん(「信」役)・吉沢亮さん(「嬴政(えいせい)」役)・大沢たかおさん(「王騎(おうき)」役)・清野菜名さん(「羌瘣(きょうかい)」役)・髙嶋政宏さん(「昌文君(しょうぶんくん)」役)ら超豪華キャスト陣に、本作で名を連ねたのが新木優子さん。秦国伝説の六大将軍のひとり「摎(きょう)」を熱演しています。『キングダム』チームへの参加が、30歳になってますます輝く優子さんのキャリアにどんな影響をもたらしたのか、じっくりお伺いしました。
感謝の気持ちいっぱいで歩いたレッドカーペット
ー新宿・歌舞伎町で開催されたワールドプレミアイベント、本当に素敵でした......! 大沢さんにエスコートされた優子さんが登場した時の観客の歓声も大きかったです。おふたりでレッドカーペットを歩かれた感想をお聞かせください。
「作中では結ばれることのなかったふたりが、時を超えて再会できたような、すごく素敵な組み合わせにしていただき、私自身とてもうれしかったですし、積年の想いが報われたように感じて歩きました。大沢さんがエスコートしてくださったのがとてもありがたかったです」
ー大沢さんとご一緒の車に乗ってレッドカーペットに登場されましたが、移動の車中ではどんなお話をされたのでしょうか?
「私が大好きなドーナツを差し入れしてくださったので、すごくうれしくて『おいしかったです! ありがとうございます』とお礼をお伝えしました。あっという間の移動時間でしたね」
ー「やっとお会いできた」と語られていた、『キングダム』チームのキャストのみなさまとのご対面はいかがでしたか?
「これが『キングダム』チームなんだ、と圧倒されました。私が演じた『摎』は、作中では過去のパートのキャラクターなので、時系列でいうところの“今”を生きているみなさんとお会いして、あらためて『豪華だな!』と思いました。すごい迫力でした」
ー先行上映や試写を観た方からは、どんな感想が優子さんに届きましたか?
「ファンの方から『ワールドプレミアで観て、すごく素敵だった』という感想をいただいたり、試写を観た関係者の方々が『作品全体を通してとにかくすごかった』といったコメントをいただいたりしていて、とてもありがたいです。なかでも、大沢さんが取材ですごく私のことに言及してくださっていることがとてもうれしいんです。『第1作の時から、王騎にとって、摎というのはとても大事な存在だったから、新木さんがそれを本当に素敵に演じてくれた』と取材でおっしゃっているんです」
お互いを想い合いピタリとはまった「王騎」と「摎」の共演シーン
ー原作『キングダム』は読まれていますか? 作品に対してどのような感想をお持ちでしょうか?
「私が最初に『キングダム』に触れたのは映画なんです。第1作を劇場で観て『すごくおもしろい……!」と感動して原作の漫画を読んで、さらに『摎』役が決まってからもう一度読み返しました。
ストーリー自体ももちろんですが、戦国時代の乱世を描いた作品なのに、男くささというよりも、情熱的なキャラクターたちや、繊細な人間関係の描写にすごく臨場感がある点を、特におもしろく感じます。老若男女問わず支持される理由がとてもよくわかります」
ー 「摎」は「王騎」の大切な人として鮮烈な印象を読者に刻みつけています。演じるにあたり、どのようなイメージで現場に臨まれたかを教えてください。
「女性でありながら六大将軍という地位を得ているのですから、すごく強くて、身体能力も高く、頭脳明晰で、あらゆることに長けていたのだろうと思います。そんな女性が『何のために戦っていたのか?』と考えて、やはり『王騎』のためかなと。彼の存在はとても大切だったと思うし、彼を想う純粋な気持ちが彼女を強くしていたと思うので、そこを意識しながら現場に臨みました」
ー「王騎」役の大沢さんは「『摎』とのシーンをずっと楽しみに、大切に思い描きながら8年間駆け抜けてきた」とおっしゃっていましたが、撮影時はどのようなやりとりがあったのでしょうか?
「実は作品についてじっくり話し合ったり、現場で『こうしてほしい』といった相談するようなやりとりは特になく、いざ(佐藤信介)監督の『(カメラ)回りました』という合図とともに、お互いに思うがまま自由に演じたように思います。『王騎』と『摎』、ふたりの関係性はすごく特別なものであるという認識が、私たちに最初から共通していたからでしょうか?
大沢さんは、現場でも気さくに話しかけてくださって、すごく優しくしていただきました。大沢さんの存在をきっかけに、すでにできあがっている『キングダム』チームの現場の空気というか、世界観の中にスッと入り込ませていただけたような気がします。本当に素敵な現場だったんです」
ー全体的に過酷な戦闘シーンが多い本作の中で、「摎」を見守るポジションの「昌文君」(髙嶋政宏さん)とのシーンは、愛情とユーモアにあふれていてとても温かな気持ちになれます。髙嶋さんと共演されたご感想もぜひ教えてください。
「髙嶋さんはムードメーカーで、現場に入られると空気がパッと明るくなる方なので、お話しするのがすごく楽しかったです。作品で描かれる『昌文君』のキャラクター像そのままのような、安心感のある空気を常にまとっていらしたのがすごく心強かったです。私の役が小娘だったというのもありますが、彼が『摎』を理解し、彼女の周囲を温かく包み込んでくれているから、周りの大人たちも彼女を理解し、将軍たらしめていたのだと思います」
難しくも楽しかった、馬たちとのコミュニケーション
ーコロナ禍での撮影は大変だったと思いますが、精神面・体力面でどのように乗り切りましたか?
「それが不思議なことに、私に関しては、つらいとか大変とか、まったく思わなかったんですよね……純粋に楽しみながら撮影に臨むことができて本当にありがたかったです。ロケ地が遠かったり、特殊な機材が多かったり、ひとりひとりの兵士の衣装ひとつひとつがすごく大きくて、管理や運搬が大変そうだったりしましたが、スタッフのみなさんのチームワークが本当に素晴らしく迅速で、すごいと思いました。大沢さんや(山﨑)賢人くんたちほかのみなさんは、戦場ロケや長いシーンに臨んだりして、それはそれは大変だったと思います」
ー劇中では、馬に乗って剣を振るうアクションシーンにも果敢に挑まれています。馬との演技はとても大変だと聞きますが、どのようにクリアしましたか?
「トップスピードで馬を走らせながら殺陣のお芝居をする、その指示を馬上から出すということがとても大変でした。馬って『この人間はちゃんと信頼できるか?』と常に観察しているんです。なので、馬に対して『私があなたを動かすんだよ』という意思表示をきちんとして、気迫というか意識を強く保っておかないと馬も応えてくれない……とはいえ、一度『つながれたかな?』と思うと、不思議なもので打ち解けて、少しずつ指示をを聞いてくれるようになった気がします」
ー馬たちとのコミュニケーションを経た演技も重要な見どころなのですね!
「現場で馬たちと一緒だったからこそ、癒された時間もありました。難しくもありましたが、とても楽しかったです。動物との撮影は好きですね」
『キングダム』出演を通じて学んだ“心の筋トレ”の大切さ
ー『キングダム』には、能力と個性を武器に、男性と同等に戦場で無双する女性キャラクターが多く登場します。優子さんご自身は「摎」がなぜ若年女性の身でありながら将軍に上り詰めることができたと思いますか?
「本当に戦いの才能があったからではないでしょうか? そして、天涯孤独の身で、自分の存在意義を自身の中に見出したい一心が、彼女を強くしたのだと思います。“城を100個とったら、王騎さまの妻になる”という目標と、自分とともに戦場で命をかけて戦ってくれる部下の兵士が大勢いることで、家族ができたような感覚を持ったり。戦闘中は無心でこそあれ、“自分はひとりじゃない”と思える瞬間がたくさんあって、そうした絆の積み重ねが彼女を突き動かしていたのだと思います」
ー「昌文君」に「(女なのだし)そろそろ剣を置いたらどうか」と諭されても、彼女は自分の意志で戦場に立ち続けますものね。
「『キングダム』は約2800年前のお話ですが、キャラクターがとても“今っぽい”と感じています。“女性だったら家庭を守るべき”という概念がひときわ強そうな時代ですし、秦国の城戸村で尾平(びへい/岡山天音さん)・ 尾到(びとう/三浦貴大さん)兄弟の帰りを待つ東美(とうび)役の桜井日奈子ちゃんや、友里(ゆうり)役の村上絵梨さんは、春秋戦国時代の女性像をすごく素敵に演じられています。しかし、性別や年齢にとらわれず、自分自身のやりたいことに正直に生き、徹底的に信念を貫いた女性たちもいて、そのうちのひとりが「摎」。ほかにも、「河了貂(かりょうてん)」(橋本環奈さん)・「羌瘣」(清野菜名さん)・「楊端和(ようたんわ)」(長澤まさみさん)ら、戦場に出る女性たちも自分自身の人生をたくましく生きています。どちらもとても魅力的です」
ー「摎」役を通じ、また『キングダム』チームに参加して、優子さんが新たに学ばれたこと・感じたこと・今後のキャリア形成に生かそうと思ったことなどがあればぜひシェアしてください。
「『キングダム』に登場するキャラクターは、『自分はこういうふうに生きていきたい! この人と一緒に生きていきたい!』という強い意志があるか、それを実現できる行動力や運があるかどうかが生死の分かれ目に直結する過酷な時代を生き抜いています。『将来どうしたいかわからない……』と漠然と思っている人はひとりもいないように思います。
彼らのように、目標に向かってまっすぐ突き進む信念が、現代の私たちには足りていないんじゃないかと思うんです。ふわっとしているからこそ、自由に振る舞えたり、思いもよらないところで自分の役割が見つかったりと、現代ならではのメリットもあると思います。でも、目標達成のためにコツコツ努力して継続したり、挫折してもまた立ち上がったりといった経験を普段から積んでおかないと、本当にやりたいことが見つかってもすぐに失敗したりあきらめたりしてしまって、すごくもったいない。
私は、『キングダム』の世界観を通じて、そうした“心の筋トレ”の大切さを学んだので、観てくださるみなさんにも気づいていただけたらと思います。みなさんの人生をより楽しく・自分らしく生きる大切なヒントになってくれるんじゃないでしょうか?
ー30歳の節目に『キングダム』に出演したことは、優子さんの俳優人生にも大きなインパクトをもたらしているのですね。
「この作品への出演を通して、また30歳になってから、『年齢って人生のレイヤーだな』とつくづく感じるようになりました。さまざまな刺激を受けて、多くの人のいろいろな思いや価値観に触れたり、学んだりして吸収してきた人生経験が積み重なって、今の自分を形成しています。それをふまえたうえで、自分が今後どういう選択をし、歩んでいくのかがとても大切になると思っています」
ー俳優さんがこんなに熱量を持って参加される作品、本当にすばらしいですね。優子さんと同世代のMORE読者のみなさんに、ぜひメッセージをお願いいたします。
「アクションはもちろん、すべての面において映画『キングダム』4部作の集大成となっている作品です。先日のワールドプレミアでもみなさんがおっしゃっていましたが、いきなりクライマックスから始まるんです。『映画の最初からこんな感情になること、ある!?』と、心が揺さぶられるようなストーリーがたくさんたくさん詰まっていて、本当に見応えがあり、映画館でこそ観るべき作品だと思います。ぜひ大きなスクリーンで、映像の迫力や音のすばらしさやダイナミズムを感じ、楽しんでいただけたらうれしいです」
PROFILE
あらき・ゆうこ● 1993年生まれ。東京都出身。スカウトをきっかけに2008年デビュー。2015年に「ゼクシィ」8代目CMガールに選ばれ、 注目を集める。ファッション誌「non-no」の専属モデルを8年間務め、2020年よりディオールのジャパンアンバサダーに就任。ドラマ『モトカレマニア』(2019年)、『連続ドラマW セイレーンの懺悔』(2020年)で主演を務めたほか、映画『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』(2022年)、ドラマ『ガリレオ禁断の魔術』(2022年)、『六本木クラス』(年)、『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』(2024年)など話題作に多数出演。
優子さんが演じた「摎」ってどんなキャラクター?
本作では、秦国と、対峙する隣国・趙(ちょう)による国の存亡をかけた総力戦“馬陽の戦い”のクライマックスが描かれます。
秦国の総大将として戦地に舞い戻った大将軍「王騎」と、自らを“武神”と呼ぶ趙軍の総大将「龐煖(ほうけん)」(吉川晃司さん)」が凄絶な一騎討ちを繰り広げるのですが、その因縁に関係しているのが、優子さん演じる「摎」。16歳の女性でありながら秦国六大将軍の地位まで上り詰め、苛烈な戦いぶりで天下にその名を轟かせていた「摎」。劇中では、「昌文君」が「嬴政」に対し、「王騎」の知られざる過去を語る回想シーンに登場します。
映画『キングダム 大将軍の帰還』
2024年7月12日(金)全国ロードショー!
キャスト/山﨑賢人
吉沢 亮 橋本環奈 清野菜名
山田裕貴 岡山天音 三浦貴大 新木優子
吉川晃司
髙嶋政宏 要 潤 加藤雅也 高橋光臣 平山祐介
山本耕史 草刈正雄 長澤まさみ
玉木 宏 佐藤浩市 小栗 旬
大沢たかお
原作/原泰久『キングダム』(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載)
監督/佐藤信介
脚本/黒岩勉、原泰久
音楽/やまだ豊
©︎ 原泰久/集英社 ©️ 2024 映画『キングダム』製作委員会
映画『キングダム 大将軍の帰還』ー あらすじ ー|7月12日(金)公開/東宝MOVIEチャンネル
撮影/齊藤晴香 ヘア&メイク/中山友恵 スタイリスト/髙野夏季(HITOME) 取材・文/沖島麻美