【俳優・木南晴夏】“求められない自分”に悩んだ時期も。思いつめた20代を振り返る
今の20代に向けた、素敵な人生の先輩から言葉のエール
恋愛や結婚、仕事、将来への不安……etc. たくさんの悩みや葛藤を抱え、揺れながら生きる20代。同じように雌伏の時を経て、30代、40代で光り輝く先輩に、人生の歩み方のヒントをうかがいました。今回は俳優の木南晴夏さんにインタビュー。
恋愛さえ「仕事のため」だった20代。あの“がむしゃら”な時間が今の私を生きやすくしてくれた
必要とされないことに悩んだ“ヒロインの友達”時代
今や話題の作品には必ずと言っていいほど名を連ね、主役としても脇役としても、その個性的な演技で強烈な印象を残す木南晴夏さん。特にここ数年の活躍ぶりには目を見張るものがありますが、「20代の頃は、〝求められない自分〟に悩んだ時期もあった」と話します。
「16歳の時にアイドルのオーディションに合格し、上京。お芝居をしたいと思っていましたが、まずはこの世界に入ることが目標だったので、アイドル活動もグラビアも〝いい経験〟と楽しみました。でも、どこかで『これは自分が本当にやりたいことではない』という気持ちがあったんでしょうね。今思い返すと、仕事をなめていたのかもしれないなと思います」
20代を目前に「やはり役者に」との思いを新たにしてからは、映像作品のオーディションに数多く挑戦するように。そこで人生初の壁にぶつかります。
「ヒロイン役を受けても、選ばれない。主役に落ちた結果、〝その友達役〟で拾ってもらえるということが数年続きました。友達役を演じるのって、すごく楽しいんです。でも、周りが主役を経てステップアップしていくのを横目に、自分は足踏みしたまま。『私は必要とされていないんじゃないか』、そう思うことが、何度もありました」
そこから抜け出すきっかけとなったのが、「原作キャラクターそのまま」と話題になった映画『20世紀少年』の小泉響子、そしてドラマ『勇者ヨシヒコ』のムラサキという役との出合いでした。
仕事の悩みは仕事でしか晴らすことができない
「その2作を境にやっと仕事が安定。さらに、のちの自分に通じるコミカルなイメージを印象づけられたのが、大きな収穫でした」
順調に俳優として歩み始めた20代半ばでしたが、今度は出演した映画の撮影時に、大きなスランプが訪れます。
「納得のいくお芝居ができず、自分が作品を邪魔しているように感じて。ほかの誰かがやったほうが絶対いい作品になる――そんな考えにとらわれ、『もう俳優をやめたほうがいいんじゃないか』とまで思い詰めました。けれど1年後の公開までの間にまた違う作品と出合い、小さな手応えを積み重ねることで、そこから解き放たれて。仕事の悩みは仕事でしか晴らせないんだなと、つくづく実感しました」
自信に満ちあふれていた10代に比べ、後ろ向きになる時間も増えたという20代。
「周りからは〝大木のように揺るがない〟と思われていましたが、心の中はいつも嵐のよう。思うような芝居ができず落ち込み、仕事が減ってはまた落ち込んで……なぜあんなに焦っていたんだろう?と思うくらい余裕がなかった。せっかく憧れの職業に就けたのだから、役者として成功したい! そんな思いもあったと思います。だから、仕事以外の時間も芝居への投資としてダンスや語学を習ったり。恋愛すら〝演技の糧〟と考えていたほどです。でも、今から思えば、20代でしかできないような恋を、夢中で楽しめばよかったかも。唯一の心残りです(笑)」
「どんな選択も正解」今はそう考えられるように
肩の力が抜けて、生きるのがふっとラクになったのは、30代に入ってから。
「昔は、結婚や出産はキャリアの支障になるのかもと思っていたんです。でも、次々と結婚していく周囲の友人を見て、『誰かのために生きるって素敵!』と考えが変わって。〝家族〟という休む理由ができた今は、子どもと遊べる休日が楽しみですし、ボーッとする時間も持てるように。すごく生きやすくなりました」
そんな穏やかな今があるのは、仕事にすべてを捧げた20代があったからこそ。
「あのがむしゃらな時間は、確かに必要だったと思います。自分のためだけに10年生きたからこそ、結婚してみようかなという気になれたし、人と違うことをやろうとしてヒロインに落ちまくった経験が、結果的に今の自分の演技スタイルを私に与えてくれました」
人生で選択を迫られた時、木南さんはこんな話を思い出すのだとか。
「脳科学者の茂木健一郎先生がおっしゃるには、『2つの道があった時、どちらを選んでも最終的に脳が感じる幸せ度は一緒』なのだそう。やってもやらなくても後悔はあるし、どれも正解だと。だから、今迷うことの多い20代を過ごしている方は、あまり自分の選択について悩まないでほしい。仕事のピークは今だけじゃなく、意外と30代でも訪れます! そう考えれば、20代で結婚、出産を経験するのもいい。自分の気持ちに素直に、進む道を選んでほしいなと思います」
My turning point
16歳(2001)
オーディションでグランプリ受賞、上京
17歳(2002)
アイドルユニットLiccaとして活動スタート
18歳(2004)
ドラマ『桜咲くまで』で俳優デビュー
23歳(2008)
映画『20世紀少年』小泉響子役でブレイク
25歳(2011)
ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズ出演
26歳(2012)
ドラマ『家族八景 Nanase,Telepathy Girl ’s Ballad 』で初主演
27歳(2013)
ドラマ『リアル脱出ゲームTV』出演
28歳(2014)
映画『闇金ウシジマくん Part2 』出演
29歳(2014)
舞台『奇跡の人』出演
My Twenties
(左)ドラマ『リアル脱出ゲームTV』がエミー賞にノミネートされたお祝いを。28歳の頃 (中)29歳で公開された映画『エイプリルフールズ』。旧知の石川淳一監督との再会もあり、緊張の連続でした (右)「もう二度と舞台はやりたくない」と思うほど追い込まれた『奇跡の人』(29歳)。ですが今も舞台に立ち続けています
木南晴夏さんが迷える20代に明解アドバイス!
Q. 好きな仕事と将来の生活、 どちらを優先すればいい?
学生の頃から憧れていたイベントMCの仕事をしていますが、金銭面を考えるとこの仕事を続けていていいのか不安になります。転職を考えるには早めのほうがいいと思うのですが、好きな仕事と将来の生活、どちらを優先すればいいですか?(25歳・司会業)
ほかの仕事をする自分が想像できるなら転職もアリ
私の場合は役者以外を考えたことがなかったので、どんなに生活がキツキツでも耐えられたし、その状況を前向きに捉えられました。でも、違う仕事も選択肢として考えられるなら、その時点でどちらを選んでもいいと思います。転職してもしなくても、後悔は同じくらいあるはず。合わないと思ったら戻ってもいい、それくらいの気持ちで転職してみては?
Q.「何が好きなのか、何がしたいのか」を明確にするには?
仕事や恋愛に関して、「自分は何が好きなのか、何がしたいのか」は、どうすると明確になりますか?(29歳 ・ 医療関係)
やめてもいいからまずは挑戦を!
好きを知るのって難しい。私も仕事に関しては「これがしたい」がはっきりしていたけれど、恋愛は大人になるほどわからないことが増えました。ただ、なんでもトライしてみないと始まらない。やってみて合わなかったらやめればいいくらいの気持ちで、いろんなことを試してみて。
最後に、20代への3つのアドバイス
・がむしゃらな時間はムダじゃない
・今しかできない恋を楽しんで
・あまり自分の選択に迷わない
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Photo : Fumiko Shibata Hair&Make-up : Harumi Kambe Stylilst : Ayako Nakai Text&Edit : Mizuho Kurita