今の20代に向けた、素敵な人生の先輩から言葉のエール

恋愛や結婚、仕事、将来への不安……etc. たくさんの悩みや葛藤を抱え、揺れながら生きる20代。同じように雌伏の時を経て、30代、40代で光り輝く先輩に、人生の歩み方のヒントをうかがいました。今回はプロデューサーの佐久間宣行さんにインタビュー。

「自分の武器」を把握すればやりたいことに近づける

佐久間宣行
プロデューサー
佐久間宣行さん

1975年生まれ、福島県出身。大学を卒業後、テレビ東京に入社。プロデューサーとして多数のヒット作を手がけ、2021年独立。近著に『その悩み、佐久間さんに聞いてみよう』(ダイヤモンド社)など

周囲にどう思われようと常にやりたいことを貫いた

佐久間さんがテレビ局へ進むことを決めたのは、22歳の就職活動中のこと。

「キー局の面接官から『面白いものをたくさん知っていて、それを言葉で説明するのがうまい。番組を作るのに向いてるんじゃない?』と言われて。その気になって飛び込んだものの、当時のテレビ局は“マッチョイズムの権化”みたいな場所で、自分には合わないと感じました。ただ、そのままやめるのも違うなと思ったので『3年後に退社する』と期限を決め、それまでは頑張ることを決意」

そこで貫いたのが、周りに染まらず自分の目的に最短距離で進むということ。

「自分がいやだと思うものに関わるのは一切やめて、あいた時間でお笑いの企画書を書きまくりました。飲みの席にもつきあわなかったから、正直よく思わない先輩もいたと思います。でも、自分は3年の間に企画を通すほうが大事だった。結果、25歳の時に『ナミダメ』で初めてプロデューサーを経験。その頃におぎやはぎや劇団ひとりと出会い、後の『ゴッドタン』につながっていきました」

20代後半でやりたい仕事を次々に手がけ、ヒットさせていった佐久間さん。それができた一因は、「自分らしさをわかっていたから」だと分析します。

「ADの頃から、自分は時間の決定権が自身にないとストレスで死んじゃうとわかっていた。だから、自分でハンドリングができる深夜枠が向いていたし、うまくいったんだと思います。それと、『お笑いがやりたい』とアピールし続け、〝そのジャンルに詳しい人〟だと周りにキャラづけられたのも、やりたい仕事に携われた理由のひとつだと思います」

20代の悩みやつまずきは失敗ではなく自分を知るチャンス

やりたいことに邁進し続ける佐久間さんいわく、20代のうちにやっておくべきことは「自分の武器」を見つけること。

「『武器』とは、自分のやりたいこと、やりたくなくてもほめられること、やりたくもほめられもしないけれど苦労せずにできることの3つ。それに加えて、自分が絶対に耐えられないことも知っておいたほうがいい。そうすれば、自分を生かしやすくなるし、どの方向へ進むかも判断しやすくなると思います」

自分を知るのに有効と佐久間さんが提案してくれたのは、ずばり「日記」。

「僕は毎日日記を書き、読み返しては仮説を立て、検証することで、自分を分析していました。悩んだりつまずいたりするのも、〝失敗〟ではなく、『自分という乗り物をどう乗りこなすか』を把握する作業のひとつ。その時にきちんと向きあっておくと、自分のコントロールのしかたがわかって、あとで役立つと思います。悩みに一喜一憂せず、自分の感情を俯瞰で見てみることをおすすめします」

My turning point

18歳(1994)
早稲田大学入学、広告研究会に入る
22歳(1998)
就活中に「番組作りに向いている」と評価を受ける
23歳(1999)
テレビ東京入社、ドラマADに
25歳(2001)
『ナミダメ』でプロデューサーデビュー
27歳(2002)
結婚
29歳(2005)
『ゴッドタン』スタート
30歳(2006)
長女誕生
33歳(2009)
『ピラメキーノ』を手がける
39歳(2015)
ラジオパーソナリティーに
45歳(2021)
テレビ東京を退社、フリーランスとなる

My Twenties

若い頃の佐久間宣行

(左)入社3年目に最年少で企画が通り、初めてプロデューサーになった番組『ナミダメ』のキャストとの一枚 (右)「自分らしさ」を知り、やりたい仕事のために邁進した20代

佐久間宣行さんが迷える20代に明解アドバイス!

Q. 好きな仕事と将来の生活、 どちらを優先すればいい?

学生の頃から憧れていたイベントMCの仕事をしていますが、金銭面を考えるとこの仕事を続けていていいのか不安になります。転職を考えるには早めのほうがいいと思うのですが、好きな仕事と将来の生活、どちらを優先すればいいですか?(25歳・司会業)

佐久間さん
佐久間さん

今まで培ってきた知見を生かせる仕事を目指して
まずは今の仕事のどこが楽しいのかを把握すると同時に、今の仕事の知見を生かせる仕事とは何かを考えてみて。楽しい部分は、もっといい企業の広報をやるなどで満たされる可能性もある。満たされないんだったら、今の武器を生かして報酬のいい企業の案件を目指してもいい。転職を考える前に、今までやってきたことを生かせる方法を考えるのが大事だと思います。

Q. やりがいを感じる仕事を見つけるには?

教職に携わり5年目になります。収入は安定していますが、長時間労働や苦手な内容が多く、転職を考えています。自分が心から納得し、やりがいを感じる仕事を見つけるにはどうすればいいでしょうか。(27歳・教員)

佐久間さん
佐久間さん

一元的に考えずに現状の中で面白いことを探そう
安定した収入を得られる今の仕事の中で面白い部分を見つけられるなら、それがいちばん。それでも転職したいなら、その仕事の中でいやだと思うことをやらないと決め、できた時間でやりたいことを見つけてみては? 感情のままに突っ走って転職し、収入が下がったうえに、人間関係も悪かったらそこで終わりです。安定した場所にいる時に、その職場の環境を利用して自分の武器を磨き、それを使って成長産業に行くのが、「成功する転職」のコツです。

最後に、20代への3つのアドバイス

・期限を決めて頑張ってみる
・自分の「武器」を見つける
・自分がいやなことには関わらない

Text&Edit : Mizuho Kurita