今の20代に向けた、素敵な人生の先輩から言葉のエール

恋愛や結婚、仕事、将来への不安……etc. たくさんの悩みや葛藤を抱え、揺れながら生きる20代。同じように雌伏の時を経て、30代、40代で光り輝く先輩に、人生の歩み方のヒントをうかがいました。今回は脚本家の吉田恵里香さんにインタビュー。

『TSUTAYA』の“旧作5本1000円”が私の価値観をつくってくれた

脚本家の吉田恵里香
脚本家
吉田恵里香さん

1987年生まれ、神奈川県出身。脚本家・小説家として活躍。2022年にドラマ『恋せぬふたり』で第40回向田邦子賞を受賞。NHK連続テレビ小説『虎に翼』が話題に。4歳男児の母

20代前半のインプットが今の作品作りに生きている

「幼い頃から物語を作る人になりたいと思っていた」という吉田さん。大学在学中に現在の事務所に所属し脚本家としてのスタートを切りますが、20代半ばまでヒット作とは無縁な状態。執筆以外の時間と自由になるわずかなお金をつぎ込んで没頭したのが、過去の映像作品を観て自分を満たすことでした。

「当時はサブスクがまだなかったので、レンタルビデオ店で旧作を片っ端から借り、毎日のように観ていました。すると、海外の作品は当たり前のようにさまざまな人種やセクシャリティの人が出てくる。後から調べたら、それは多様性への配慮で、作品を作るうえで義務づけられているからだとわかったのですが、それがとても興味深いなと。その時に自分の中で芽生えた価値観が、後に『光が当たらない人を取り上げる』という作品のテーマにつながっていったように思います」

叶えたい夢があるなら口に出したほうがいい

脚本家人生が大きく動いていくのは、27歳の時に公開された映画『ヒロイン失格』を手がけてから。30代に入ると、LGBTQを題材にしたドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』や、日本初の女性裁判官を主人公に憲法第14条をテーマにしたNHK連続テレビ小説『虎に翼』などの話題作を次々と担当。

「『朝ドラを書きたい』というのは、この仕事を始めてから周りの人にずっと言ってきた目標。同様に、小説やシナリオ集を出すという願いも叶った。夢は口に出しておくものだなと思いましたね」

吉田さんが仕事をする際にポリシーとしているのは、嘘をつかないこと。

「名前を出して仕事をする以上、すべての選択の責任を自分が負うことになる。だから、偉い人に何か言われても、違うと思ったら一度は自分の思いを伝えるようにしています。その時に心に決めているのが、第一声で相手を批判しないということ。敵認定されてしまうと、うまく本意が伝わらないことがあるので」

人や社会を多面的に描くことに定評がある吉田さんの作品。そのベースにあるのは、20代のさまざまな経験だと言います。

「恋愛でものすごく傷ついたり、落ち込んだり、子どもが欲しいと焦ったり……実際に自分で経験してきたから、そういう気持ちがわかるというのは大きいですね。両祖母の近くで暮らし、認知症になったりと老いていく姿をそばで見た経験からも、人を描くうえで大きく影響を受けていると思います。もし今20代に戻れるなら、まだ元気でお酒もガバガバ飲めた両親と旅行をしたい。あの頃は『30代でやればいいじゃん』と思っていたことも、時間がたつとやり直せないこともあるんだなと。20代のみなさんには、今やりたいことが5つあるならひとつでもすぐに経験してほしい、そう思います」

My turning point

18歳(2005) 
日本大学芸術学部文芸学科入学 
20歳(2007) 
大学在学中に事務所に所属
23歳(2011)
NHK Eテレ『シャキーン!』レギュラー構成
テレビアニメ『TIGER&BUNNY』共同脚本を担当
26歳(2013)
ドラマ『恋するイヴ』脚本を担当 
27歳(2015)
映画『ヒロイン失格』脚本を担当
32歳(2020)
結婚
33歳(2020)
ドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』脚本を担当
34歳(2022)
ドラマ『恋せぬふたり』脚本を担当、今作で向田邦子賞を受賞
34歳(2021)
長男を出産
36歳(2024)
NHK連続テレビ小説『虎に翼』脚本を担当

My Twenties

脚本家・吉田恵里香さんの若い頃の写真

(左)お金がなくて、あまり旅行にも行けなかった大学時代。せめて卒業時はと、みんなで韓国へ。22歳の時(右)20代後半、仕事も増え、よく飲みに行っていた頃

吉田恵里香さんが迷える20代に明解アドバイス!

Q. やりがいを感じる仕事を見つけるには?

教職に携わり5年目になります。収入は安定していますが、長時間労働や苦手な内容が多く、転職を考えています。自分が心から納得し、やりがいを感じる仕事を見つけるにはどうすればいいでしょうか。(27歳・教員)

吉田さん
吉田さん

興味を持って調べられることを深掘りしてみて
教職の方が置かれている環境って、めちゃくちゃハード。教員の資格を持っているのなら、ほかの仕事を試してまた元いた場所に戻ることもできるはず。思いきってまったく違う職種に転職してみてもいいのかなと思います。やりたい仕事が思い浮かばないのなら、たとえば学校までの通勤時間を使って、スマホで手あたり次第いろいろなことを調べてみるのも手。自分が少しでも楽しいと感じるジャンルをまずは見つけて、それを深掘りしてみるといいと思います。

Q. 結婚相手に求めるところ、妥協すべきところは?

結婚に憧れがあるのですが、今の彼と結婚して幸せになる未来が想像できません。理由は、相手の給料や、相手の実家、趣味への理解ができないことなど。結婚相手には何を求め、どこまで妥協すべきでしょうか。(25歳・販売)

吉田さん
吉田さん

相手に求めるものを数を絞って決めよう
完璧な人はいないから、こうであってほしいという3つくらいにポイントを絞って。私の場合は、子どもを持てる、仕事に理解がある、家族仲がいいの3点。それが身長や収入であってもいいと思います。ただ、向こうの親が気になるなら、少し慎重になったほうがいいかも。

最後に、20代への3つのアドバイス

・20代で没頭できる何かに出会う
・夢を口に出す
・後回しせず今を大切に

Text&Edit : Mizuho Kurita