【中村倫也】激動の時代を生き抜く“ブレない自分”の築き方 | 映画『ハケンアニメ!』インタビュー
映画『ハケンアニメ!』出演、超人気俳優の中村倫也さんに直撃!
5月20日(金)から全国ロードショーの映画『ハケンアニメ!』が話題です。そこでここでは吉岡里帆さんとともにアニメーションの監督役に挑んだ俳優・中村倫也さんのインタビューをお届け!
映画・舞台・CMと活躍の場を着実に広げ、絶好調ともいえるキャリアを邁進している中村さん。超多忙な毎日をお過ごしのはずなのに、疲れをまったく感じさせずに颯爽とインタビュースタジオに現れ「ここ何年も風邪ひとつひいていないし、おかげさまで医者いらずの生活なんです、ワハハ!」と豪快に笑う彼に、日々の忙しさや、SNSなどのさまざまな評価に惑わされず、自分軸をしっかり持った強靭なマインドを築きながら困難な時代をサバイブする秘訣を聞いてみました。
映画・舞台・CMと活躍の場を着実に広げ、絶好調ともいえるキャリアを邁進している中村さん。超多忙な毎日をお過ごしのはずなのに、疲れをまったく感じさせずに颯爽とインタビュースタジオに現れ「ここ何年も風邪ひとつひいていないし、おかげさまで医者いらずの生活なんです、ワハハ!」と豪快に笑う彼に、日々の忙しさや、SNSなどのさまざまな評価に惑わされず、自分軸をしっかり持った強靭なマインドを築きながら困難な時代をサバイブする秘訣を聞いてみました。
『ハケンアニメ!』ってこんな映画
©️2022 映画『ハケンアニメ!』製作委員会
映画『ハケンアニメ!』は、直木賞作家・辻村深月さんの同タイトルの小説(マガジンハウス刊)が原作。アニメ作品のゴールデンタイムである毎週土曜・夕方枠で最も高い視聴率(≒覇権/ハケン)を獲得するため、アニメ業界で活躍するさまざまな人々の奮闘や葛藤が描かれます。
映画『ハケンアニメ!』は、直木賞作家・辻村深月さんの同タイトルの小説(マガジンハウス刊)が原作。アニメ作品のゴールデンタイムである毎週土曜・夕方枠で最も高い視聴率(≒覇権/ハケン)を獲得するため、アニメ業界で活躍するさまざまな人々の奮闘や葛藤が描かれます。
©️ 2022 映画『ハケンアニメ!』製作委員会
28歳の新人アニメ監督・斎藤 瞳役を吉岡里帆さん、そして瞳のライバルとなる超人気カリスマ天才アニメ監督・王子千晴役を中村さんが演じます。ほかに、瞳が監督を務めるアニメ『サウンドバック 奏の石』の総合チーフプロデューサー・行城理役に柄本佑さん、対峙する王子のアニメ『運命戦線リデルライト』のチーフプロデューサー・有科香屋子役に尾野真千子さん。ストーリーはこの2チームを中心に、泥くさく、しかし力強く刺激的に進行します。今この困難な時代を必死で生きようともがいている真っ最中のわれわれオーディエンスに、さまざまな気づきやヒントをくれる佳作です。
28歳の新人アニメ監督・斎藤 瞳役を吉岡里帆さん、そして瞳のライバルとなる超人気カリスマ天才アニメ監督・王子千晴役を中村さんが演じます。ほかに、瞳が監督を務めるアニメ『サウンドバック 奏の石』の総合チーフプロデューサー・行城理役に柄本佑さん、対峙する王子のアニメ『運命戦線リデルライト』のチーフプロデューサー・有科香屋子役に尾野真千子さん。ストーリーはこの2チームを中心に、泥くさく、しかし力強く刺激的に進行します。今この困難な時代を必死で生きようともがいている真っ最中のわれわれオーディエンスに、さまざまな気づきやヒントをくれる佳作です。
中村倫也と、超カリスマアニメクリエイター・王子千晴との共通点
—王子千晴役は、吉野耕平監督(映画『水曜日が消えた』でチームに参加して以来の盟友だそう)から「普段の中村さんに近い役なので」とダイレクトに指名されたそうですね。
中村「こんなカッコいい役を、普段の僕に近い、なんて言ってもらえて光栄です。本作の舞台であるアニメ業界は、僕らの業界にとっても“お隣さん”くらいの距離感。ゼロからイチへとクリエイティブなものを作り出すという点でも近かったですし、エッセイ(今年3月に上梓した『THE やんごとなき雑談』)の執筆経験も生かせたと思います。また、王子が持っている、仕事に対する信念や誇り・人と接する上での哲学みたいなものは自分に近いのではないかと感じました」
—役作りで最も大切にしたことは?
中村「もの作りに携わる人間の裏側をしっかり見せること。自分が経験したことがない仕事という点では“探る”作業が必要だったので、実際にアニメ製作に携わっている方に、絵コンテの描き方を教わったり、資料を見せていただいたりしました。あとは王子のカリスマ性をどう演技にのせていくか!?......はちょっと苦労したかもしれません」
—カリスマ性を表現するために尽力したシーンはありますか?
中村「瞳が王子と対談する会見の場面です。キャリアも性格も違うけれど、共に何かしらのすさまじい外圧を受けて舞台に立っている。まず瞳が先行して王子に宣戦布告しますが、追い詰められた彼女が王子に対峙するアクションにはすごく説得力と迫力があった。それを受けて、ついさっきまでケンケンとしていた王子に起こったリアクションっていうのも、自分で演じておいて言うのもなんですけれど、台本の字面をはるかに超えて格段におもしろいシーンに仕上がった自負があるんです。あの場での僕の役割は、劇場にいる観客の賛同を独占してカリスマ性を自分に結集させ、絶望させるくらいの圧倒的プレッシャーを瞳に与えることでした。『この場をどう支配してやろうか』というアンテナにだけフォーカスしていたのですが、こう演じよう、と特に決めずに撮影に臨んだのが非常によかったです。その後のふたりの戦いにつながる、物語ど真ん中の重要な局面。あれを演じ切ったということで表彰されたいくらい上出来でしたね」
中村「こんなカッコいい役を、普段の僕に近い、なんて言ってもらえて光栄です。本作の舞台であるアニメ業界は、僕らの業界にとっても“お隣さん”くらいの距離感。ゼロからイチへとクリエイティブなものを作り出すという点でも近かったですし、エッセイ(今年3月に上梓した『THE やんごとなき雑談』)の執筆経験も生かせたと思います。また、王子が持っている、仕事に対する信念や誇り・人と接する上での哲学みたいなものは自分に近いのではないかと感じました」
—役作りで最も大切にしたことは?
中村「もの作りに携わる人間の裏側をしっかり見せること。自分が経験したことがない仕事という点では“探る”作業が必要だったので、実際にアニメ製作に携わっている方に、絵コンテの描き方を教わったり、資料を見せていただいたりしました。あとは王子のカリスマ性をどう演技にのせていくか!?......はちょっと苦労したかもしれません」
—カリスマ性を表現するために尽力したシーンはありますか?
中村「瞳が王子と対談する会見の場面です。キャリアも性格も違うけれど、共に何かしらのすさまじい外圧を受けて舞台に立っている。まず瞳が先行して王子に宣戦布告しますが、追い詰められた彼女が王子に対峙するアクションにはすごく説得力と迫力があった。それを受けて、ついさっきまでケンケンとしていた王子に起こったリアクションっていうのも、自分で演じておいて言うのもなんですけれど、台本の字面をはるかに超えて格段におもしろいシーンに仕上がった自負があるんです。あの場での僕の役割は、劇場にいる観客の賛同を独占してカリスマ性を自分に結集させ、絶望させるくらいの圧倒的プレッシャーを瞳に与えることでした。『この場をどう支配してやろうか』というアンテナにだけフォーカスしていたのですが、こう演じよう、と特に決めずに撮影に臨んだのが非常によかったです。その後のふたりの戦いにつながる、物語ど真ん中の重要な局面。あれを演じ切ったということで表彰されたいくらい上出来でしたね」
SNSとどう向き合う!? 中村倫也にとって“いい作品”の評価基準とは
©️2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会
—劇中では、SNSでの評価をビジュアライズ化することで瞳VS王子の対決軸が表現され、その結果に振り回されて悶々とする瞳の姿が描かれ、現代の若者像にそのままリンクしています。中村さんご自身はSNSでの評価を気にされますか?
中村「気にしないですね。僕にとってはまず、現場が楽しいか、そうしてみんなで作り上げたものが作品としておもしろいかどうか、この2軸が“いい作品”である基軸です。そのうえで、口コミでの評価や、視聴率・興行収入など商業的数字の結果が伴ってくれればうれしいですけれど。出演者サイドとして僕も責任を負ってはいますが、いい作品かどうかの判断基準は自分たちで持つべきだと考えています。なので個人的にはエゴサーチもしないですし、自分に対する評価は気にしないスタンス。エゴサして悩んでいる人を見ると『気にしなくていいのになー』って思っちゃいます。特にSNSで評価している人なんて『お前、俺としゃべったことないだろ?』って感じますね。気にしたってしかたない」
—劇中では、SNSでの評価をビジュアライズ化することで瞳VS王子の対決軸が表現され、その結果に振り回されて悶々とする瞳の姿が描かれ、現代の若者像にそのままリンクしています。中村さんご自身はSNSでの評価を気にされますか?
中村「気にしないですね。僕にとってはまず、現場が楽しいか、そうしてみんなで作り上げたものが作品としておもしろいかどうか、この2軸が“いい作品”である基軸です。そのうえで、口コミでの評価や、視聴率・興行収入など商業的数字の結果が伴ってくれればうれしいですけれど。出演者サイドとして僕も責任を負ってはいますが、いい作品かどうかの判断基準は自分たちで持つべきだと考えています。なので個人的にはエゴサーチもしないですし、自分に対する評価は気にしないスタンス。エゴサして悩んでいる人を見ると『気にしなくていいのになー』って思っちゃいます。特にSNSで評価している人なんて『お前、俺としゃべったことないだろ?』って感じますね。気にしたってしかたない」
©️2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会
—なぜそんなに自分軸をしっかりとお持ちなのですか?
中村「演劇をやっていた経験が大きいです。若手の頃、毎回観に来てくれるお客さんがいろんなことを言って帰っていきました。100人いたら100通りの感想がありますから、すべてにいちいち反応して自分がブレてたら芝居なんかできっこない。それよりも、みんなで稽古して作って、本番でブラッシュアップしていくものをちゃんと信じることが大切です。『ダメならダメで晒せ』って思うし、それが何遍も稽古してきた結果なんだから。こぎれいに評価を得ようなんて思っていないです」
—その考え方に基づくと、中村さんにとって『ハケンアニメ!』はどのような作品ですか?
中村「よかったですよ。現場も楽しかったし、出来上がったものもおもしろいし。その2点がそろってさえいれば、たとえ誰からどんなに酷評されたとしても『俺はおもしろいと思うけどね』と胸を張って堂々と言えますから」
—なぜそんなに自分軸をしっかりとお持ちなのですか?
中村「演劇をやっていた経験が大きいです。若手の頃、毎回観に来てくれるお客さんがいろんなことを言って帰っていきました。100人いたら100通りの感想がありますから、すべてにいちいち反応して自分がブレてたら芝居なんかできっこない。それよりも、みんなで稽古して作って、本番でブラッシュアップしていくものをちゃんと信じることが大切です。『ダメならダメで晒せ』って思うし、それが何遍も稽古してきた結果なんだから。こぎれいに評価を得ようなんて思っていないです」
—その考え方に基づくと、中村さんにとって『ハケンアニメ!』はどのような作品ですか?
中村「よかったですよ。現場も楽しかったし、出来上がったものもおもしろいし。その2点がそろってさえいれば、たとえ誰からどんなに酷評されたとしても『俺はおもしろいと思うけどね』と胸を張って堂々と言えますから」
ブレない自分を築くための、中村倫也流思考メソッド
—中村さんのブレないメンタルに、感動すら覚えています。
中村「最近こそ安定してきましたが、20代の頃はひどいものでしたよ、腐っていながら自意識は強いし。当時の僕を知っている方から見ると、今の僕の状況は笑っちゃうくらい順調なのではないかとすら思います。仕事が増えたら増えたで、自分が気がつかないうちに激流みたいなものに巻き込まれて知らないところに流されていった感覚もありましたし、自律神経の乱れによる健康問題も経験しました。だからこそ、今は慣れたり成長したりしていろんなバランスがとれるようになって、プライベートも仕事もちょうどいい感じになっているのではないかと思います。ずっとこんな感じで続けばいいのにな.......と願っていますが」
—今、中村さんご自身が王子的な立場になって、20代の自分にアドバイスするとしたら?
中村「何もないです。自分の答えが正解か不正解かもわからないし、答えのない世界で生きているから、下手なことは言えないと慎重になっちゃいます。僕はわりといろんな先輩に話を聞いてきたほうだと思います。今は年下の後輩が現場に増えて、悩みを相談してくれたりしますが、難しいですよね......言葉って。彼らは直接的な部下でもないし、僕は指導する立場でもない。よかれと思って言ったことが相手にとって邪魔になったりする。でも、誰にとっても一生懸命生きることが大事なんじゃないかと思うんです。自分なんて不確かだし、外から見た自分は違うし、自分がやりたいことと人から望まれている自分も違うし、なるようにしかなんない、自分次第! ......と思います」
中村「最近こそ安定してきましたが、20代の頃はひどいものでしたよ、腐っていながら自意識は強いし。当時の僕を知っている方から見ると、今の僕の状況は笑っちゃうくらい順調なのではないかとすら思います。仕事が増えたら増えたで、自分が気がつかないうちに激流みたいなものに巻き込まれて知らないところに流されていった感覚もありましたし、自律神経の乱れによる健康問題も経験しました。だからこそ、今は慣れたり成長したりしていろんなバランスがとれるようになって、プライベートも仕事もちょうどいい感じになっているのではないかと思います。ずっとこんな感じで続けばいいのにな.......と願っていますが」
—今、中村さんご自身が王子的な立場になって、20代の自分にアドバイスするとしたら?
中村「何もないです。自分の答えが正解か不正解かもわからないし、答えのない世界で生きているから、下手なことは言えないと慎重になっちゃいます。僕はわりといろんな先輩に話を聞いてきたほうだと思います。今は年下の後輩が現場に増えて、悩みを相談してくれたりしますが、難しいですよね......言葉って。彼らは直接的な部下でもないし、僕は指導する立場でもない。よかれと思って言ったことが相手にとって邪魔になったりする。でも、誰にとっても一生懸命生きることが大事なんじゃないかと思うんです。自分なんて不確かだし、外から見た自分は違うし、自分がやりたいことと人から望まれている自分も違うし、なるようにしかなんない、自分次第! ......と思います」
5月20日(金)公開! 映画『ハケンアニメ!』新予告ムービー
PROFILE
なかむら・ともや●1986年12月24日生まれ、東京都出身。2005年に俳優デビュー。映画『水曜日が消えた』『ウェディング・ハイ』、ドラマ『珈琲いかがでしょう』など多数の作品に出演。初のエッセイ集『THE やんごとなき雑談』(KADOKAWA刊)のほか、雑誌『ダ・ヴィンチ』にて料理連載「中村倫也のやんごとなき雑炊」を展開中。『仮面ライダー BLACK SUN』(2022年秋配信)、ミュージカル『ルードヴィヒ 〜Beethoven The Piano〜』(2022年10月・11月上演予定)などへの出演を控えている。
5月20日(金)全国ロードショー! 映画『ハケンアニメ!』
出演/吉岡里帆、中村倫也、工藤阿須加、小野花梨、高野麻里佳、六角精児、柄本 佑、尾野真千子 ほか
原作/辻村深月『ハケンアニメ!』(マガジンハウス刊)
監督/吉野耕平 脚本/政池洋佑 音楽/池頼広 主題歌/ジェニーハイ 「エクレール」(unBORDE/WARNER MUSIC JAPAN) 制作プロダクション/東映東京撮影所 配給/東映
原作/辻村深月『ハケンアニメ!』(マガジンハウス刊)
監督/吉野耕平 脚本/政池洋佑 音楽/池頼広 主題歌/ジェニーハイ 「エクレール」(unBORDE/WARNER MUSIC JAPAN) 制作プロダクション/東映東京撮影所 配給/東映
関連URL
撮影/伊藤奈穂美 取材・文/沖島麻美